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緑・自然コア

緑とアロマの癒し効果を科学する !

 

 都市の緑化によるヒートアイランド緩和効果としては、日射の遮蔽や植物からの蒸散作用により、地表面の温度を低減することにより、建物の空調による負荷を軽減し、大気温度の上昇に寄与する顕熱の負荷を低減させることが挙げられます。一方、都市の緑化はこのような温熱負荷の軽減の他、野生生物の生育・生息の場や、良好な都市景観の形成、降雨の一時貯留による洪水リスクの軽減、避難地・避難路等の都市の防災性の向上、身近な自然との触れ合いの場の形成、植物との触れ合いによる精神的な癒しとリラックス等の多様な機能と効果を有しています。
 環境社会学部の鈴木研究室では、都市の緑化がもたらす様々な効果の中で都市の緑の精神的な癒し効果に着目し、室内空間から戸外の緑化空間を眺めた場合とアロマ(香り)を付加した場合の精神的な癒しの効果について、脳波を計測し、α波の出現状態を計測することにより、癒し効果を定量的に評価するための研究を進めています。今回は、学生たちが学部の「プロジェクト研究c」で取り組んだ研究の中から、検証の一部を報告します。

1. 計測方法
 脳波の計測は、東金キャンパスの実習施設「彩のガーデン」を対象として、脳波を室内で計測し、室内側からガーデンを眺め、さらにはアロマ(香り)を付加することにより、脳波のうちのα波の出現状態がどのように変化するのかを検証しました。本学の東金キャンパス(千葉県東金市)内の「彩のガーデン」を対象に、2015年6月17日に教室の室内側で計測を行いました。脳波の計測には、ヒューテック社製の脳波計測計「ブレイン・プロ・ライトFM-828T」(写真1参照)を使用し、センサー部を頭頂部2か所に設置して、脳波を測定しました。
 使用した脳波計測計で検出できる脳波は、θ波(4.0-6.0Hz)、α1波(6.5-8.5Hz)、α2波(9.0-11.0Hz)、α3波(11.5-13.5Hz)、β波(14.0-30.0Hz)の5種類です。α波は、計測後に3種類の脳波を平均して算出しました。
 脳波はその周波数によって分けられ、以下のような状況下でより多く出現することが分かっています(注1)。

 θ波: 主に入眠初期に見られる波。  
 α波: 覚醒、安静、閉眼状態において見られるに波である。また、このα波は、一般的に後頭部でより多く出現する。
 β波: α波とともに覚醒時により多く見られる波であり、開眼、痛み、緊張、興奮などの状態で多く出現する。

(注1) 芝崎浩 (1998) 脳の電気生理学的診断法,伊藤正夫・桑原武夫編, 最新脳の科学Ⅱ, 同文書院,425,427

 

 以上の脳波の特徴を踏まえて、以下の三つケースを対象に、ケースAからケースCの順に、椅子に座ったまま、それぞれ1分間脳波の計測を行い、各脳波の出現状況を1秒間隔で記録しました。各ケースの間はそのままの姿勢にて各ケースの計測準備等で数分間のインターバルを持った。

〈ケースA〉: ブラインドを閉じ、被験者がガーデンを見ない場合
〈ケースB〉: 被験者が室内側から透明のガラス窓を介してガーデンを眺めた場合
〈ケースC〉: 被験者が香り(アロマ:ラベンダー)を嗅ぎながらガーデンを眺めた場合

 測定対象は、学部の学生3名(男子2名、女子1名)です。各ケースの計測の様子は、写真2に示します。

 

写真1 脳波計測計ブレイン・プロ・ライトFM-828Tと設置状況

 

ケースA
ケースB

 

ケースC

 
写真2 各ケースの計測の時の状況

 

2. 計測の結果
 下の図は、被験者の脳波の計測状況を各ケース毎に比較してまとめたものです。3人の被験者のうち2人は、香り(アロマ:ラベンダー)をかぎながら、ガーデンを眺めた場合に最もα値が高い数値を示し、1人はガーデンが最も高い数値を示しました。このうち、アロマとガーデンの組み合わせがα波の数値が最も数値を示し、リラックス状態が確認されたのは、いずれも女性の場合であり、ガーデンで最もα波が高くなったのは、男性でした。
 今回は計測数も少なく、一般的な傾向を結論づけることは困難と考えられますが、ガーデンを眺めた状態またはアロマをかぎながらガーデンを眺めた状態のいずれかでα波が相対的に高い数値を示したことは、室内から緑のある景観を眺めることで、精神的な安らぎを感じる傾向が高まることが示唆されました。
 今後、サンプル数を増やしながら、年齢層や性差によるリラックスの程度についての癒し効果を定量評価するために、さらにデータの蓄積を図ることが必要と考えられます。

 

被験者1 (男性・22才)

 

被験者2 (女性・22才)

 

被験者3 (女性・22才) 


図 被験者別の脳波の計測結果