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環境の学び

シリーズ『環境とビジネス(No.2)』

CSRランキングと企業の評価

 

環境社会学部客員教授 福田順子 

 環境とビジネスとは対立する概念だと思っている人は多いようです。半世紀以上前の公害問題は企業が原因であったことは確かです。その反省も踏まえて現在、産業や企業は、環境負荷を減らし、社会にプラスになることに本気で取組んでいます。
 学部の学びでも、社会・生活・経済と環境との関係を新しい視点でとらえ、将来の就職や仕事に役立つよう、産業・企業と環境の関係を勉強します。環境を重視した経営の時代になりましたので、環境とビジネスとの関係を学ぶことで、プラスαのビジネスセンスが身につき、事業展開において実践力につながるという強みを発揮できます。卒業生は、コンビニエンスストア、運輸、外食・中食、エネルギー関係、環境保全等、環境を重視した経営や環境を守る事業を展開している企業で活躍しています。
 本シリーズでは、環境を生かした経営や社会貢献の実態を紹介し、未来社会を考えるヒントを提供します。

 

 前回(第1回)は、CSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会貢献)の歴史・必要性・経営との両立といった内容で紹介しました。今回は、企業のどのような活動が、どのような企業の評価に結び付くのかについて考えてみます。
 学部の学びでは、CSRについては、「環境ビジネス」や「キャリア形成」の企業研究などの研究テーマですし、就職活動で企業を選択する際の基準となります。また、消費者として考えると、商品やサービスを選択する際の判断材料となりますので、学生時代からCSRの知識を得ておくと、役に立つことは多いと思います。

◆ CSRランキング~「週刊東洋経済」のCSRランキング
 CSRに熱心な企業を、どのような方法で順位をつけるのでしょうか。ランキングづけを行なっている組織や団体は多いのですが、今回は週刊『東洋経済』の「最新版!CSRランキングトップ700社」と「CSR企業総覧」を中心に紹介します。
 「週刊 東洋経済」のCSRランキングは、2005年にスタートし、2017年で12回目の調査となります。対象は、上場企業(証券取引所で売買できる株式を発行できる企業)と主要未上場企業で、アンケートを送って戻ってきた回答をもとに分析します。2017年は1,408社のデータが集まりましたが、ランキングは未公表ですので、今回は2016年のデータやランキング(1,325社)についてまとめました。

CSR企業総覧の表紙
週刊東洋経済「CSR企業総覧」

 調査項目(「CSR企業総覧2016」の掲載情報)は、次の9項目です。
 1.会社基本データ 
 2.CSR&財務評価・格付け 
 3.CSR全般 
 4.ガバナンス・法令順守・内部統制 
 5.雇用・人材活用 
 6.消費者・取引先対応
 7.社会貢献 
 8.企業と政治の関わり 
 9.環境 
 各項目とも、さらに細かい内容提供の指示があり、それに沿って自分の会社の情報をすべて提示しなければなりません(2017年度については項目が少し違います。)。 例えば、9.環境では、■組織と情報開示、■パフォーマンス(*1)、■管理体制、■環境リスクマネジメント、■環境関連法令、■その他の環境関連指標・取り組み、■地球環境保全への取組み、■2014年度の環境目標・実績、といった内容について、詳細かつ正確な情報提供が求められます。

*1 実績を数字で示すこと。環境保全にどのくらい投資し、どのくらいのコストがかかったか、環境負荷量がどのくらいになったか(増減)、環境保全対策の経済効果はどのくらいあったのか、など。

 提供された情報をもとに、評価者は、「人材活用(40項目)」「環境(26項目)」「社会性(27項目)」「財務(15項目)」「企業統治(37項目)」という5つの視点、145項目で評価を行ないます。評価は、「AAA AA A B C」の5段階評価です。
 CSR項目(人材活用、環境、企業統治+社会性)は各100点満点、財務は300点満点で、財務が全体の50%を占めています。この配分については、CSRに力を入れても財務内容が悪いと企業は存続が危うくなる、という理由だと推測されます。財務の評価は、成長性、収益性、安全性、規模、の4つの分野で行なわれています。

◆ CSR企業総合ランキング
 2016年度(2015年度調査)の結果では、突出した企業があることがわかります。ランキング上位3位までの企業の、過去10年間の総合評価をみると(表1)、この2年間、連続でトップをとったのは富士フィルムホールディングス*2で、600点満点の573.6点でした。同社は、第6回もトップ、第7回・8回は2位と、常に上位をキープしています。

*2 ホールディングスとは持株株式のことで、実際の事業を行なう会社を子会社にもち、それらの子会社の株式を保有する会社。グループ全体の戦略策定を行い、間接業務を引き受ける会社。

表1 CSR企業ランキング上位3社の10年間の推移(2007~16)CSRランキング表

 2016年度のランキングから、評価項目別に詳しくみると、内容がもう少しはっきりします(表2)。

表2 CSR企業ランキング2016年上位5社(得点内訳)
CSRランキング項目別

 トップ10では、8社が製造業(メーカー)で、非製造業については、情報・通信企業2社のみがランクインしています。
 全体に、幅広く活動する大企業が高得点になりやすい、環境分野に強い自動車・電機など製造業が高得点になる傾向がある、非製造業、中堅企業は得点が低い、といった傾向があることを、『東洋経済』では分析しています。確かに上位企業については「企業総覧」や「各種レポート」から、幅広い活動を豊富な人材やスキルを活用して行っていることが読み取れます。ただし、この点数が企業の実力を表しているというわけではありませんので、中堅企業やサービス業などについても内容をしっかり調べる必要があります。

◆ 環境部門ランキング
 環境に絞ってランキングをみてみましょう。評価項目は26項目です。
 環境部門の上位19社(上位20社とすると同点が多く20以上になるので13位19社)は、表3に示したとおりです。
 総合順位ではトップ10に入らなかった企業、100位以下の企業が何社か登場します。これらの企業は、「環境」以外の「人材活用」「社会性」「財務」「企業統治」で点数を取れなかったということになりますが、すべてに高い点数を取ることはなかなか難しいことがわかります。

表3 環境部門ランキング
環境部門ランキング

 第1位(総合11位)の日産自動車は、国内の販売会社でISO14001認証(環境に関する国際標準)を取得し、「日産グリーンショップ制度」を導入するなど、販売部門も含めて環境マネジメントに力を入れています。CO2排出量削減についても、2016年度までに世界の販売台数1台当たりで2005年度の20%削減という目標を作って取組んでいます。(「日産サステナビリティレポート2016」より)
 同じく1位のダイキンは、2020年度には、グループ全体の温室効果ガスを2005年度比で75%削減することを目標にしています。ダイキングループでは、2015年度までに1/3(67%)削減の目標を立て、ダイキンアメリカ社でフロン類の代替・回収を進め、2015年度の温室効果ガス排出量は126万t-CO2(2005年度比70%削減)と目標を達成しました。環境ソリューションビジネスなどにも積極的です(ダイキン工業「サステテナビリティレポート2016」より)。

日産CSR表紙
日産自動車「サステナビリティレポート2016」
ダイキンCSR表紙
ダイキン工業「サステナビリティレポート2016」

 環境分野で注目したい企業は、トヨタ車体です。未上場企業ですが、トヨタグループの一員ですので、「CSRレポート(環境・社会報告書)」で、環境基本方針を明確に示し、具体的な行動指針まで記しています。
 環境基本方針は、「豊かな21世紀社会への貢献」「環境技術の追求」「自主的な取り組み」「社会との連携・協力」の四つで、それに沿った行動指針として、①環境負荷の少ない製品の開発・提供、②排出物を出さない生産活動の追求、③社会の一員として、環境行動に関わる対外との連携・協力と情報発信、④連結経営に対応した環境マネジメントの推進、の四つを挙げています。
 さらに、1993年度から「環境取組みプラン」を作って、本格的に環境活動に取組み、5年ごとに見直しをしています。第6次プラン(2020年度)は、第5次プランを引き継いで、①低炭素社会の構築、②循環型社会の構築、③環境保全と自然共生社会の構築、の三つの重点テーマを発表しています(トヨタ車体 「2016CSRレポート」より)。  

図1 トヨタ車体の環境取組みプラン(第1次~第6次)
トヨタ環境取り組みプランの図

出所:トヨタ車体ホームページ「環境への取組み」

 未上場企業や中小企業のCSRや環境対応は、これからのテーマですが、上場企業・大企業の手法を参考に、中小企業らしい、地域企業らしいCSRや環境対応を考えると、個性ある企業になるはずです。規模の大小に関わらず、あらゆる企業がCSRについて考え、環境問題に対応し環境経営を目指すことが持続可能な社会づくりには不可欠です。

◆ CSRの意味
 CSRランキング以外にも、民間企業が立ち上げたサイト「CSR JAPAN」では、読者の投稿をもとに各社のCSRレポートを紹介しています。テーマ別にCSRレポート検索ができますし、アクセス回数で週間ランキングをつける、といった情報提供をしています。今回のCSRランキングを参考にして、実際のレポートを見るのに適しているといえます。

 最後に、企業がCSRに力を入れる理由を整理します。
 ひとつには、営利以外に、社会的存在として企業が評価されるための情報として。二つ目は、財務データだけではわからない企業の質の充実を見るのに投資家にとっての有用な資料として。三つ目は、消費者が商品やサービスを選択する場合の目安として。四つ目は、学生や教員の就職活動の判断材料として。五つ目は、企業が自分の会社を客観的・相対的に見る材料として。これらの理由で、時代とともにCSRが重視されるようになっています。
 とくに、最近のように環境問題への企業の対応や人材が重視されるようになると、CSRの中で環境・人材項目は大切なチェック項目となるでしょう。
 自分の将来イメージとも重ね合わせて、企業のCSRレポートを眺めてみませんか。