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環境の学び

シリーズ環境経済を学ぶ(No.5)

新しい“癒し”のマーケティング
~ビザール(珍奇な)プランツの人気~

 

環境社会学部教授 福田 順子

 経済と密接に関係するのが“市場”です。市場には2種類あって、1つは、証券などを取引する株式市場、もう一つは、ある製品を売買する市場です。「環境経済を学ぶ」シリーズの第5回は、後者の市場の話です。これからもしかしたら大きく成長する製品についての情報を紹介します。

 

◆ちょっと変わった“癒し”
 環境社会学部の学びの一つに環境創造の分野があります。とくに、人間の環境を創造するのに、“癒し”は大切なキーワードになります。学生は、癒しの学びでは、主に“アロマテラピー”の科目を学んでいます。ここで取り上げるのは、多くの人たちが好むアロマテラピーとは少し色合いの違う「奇妙な」癒しグッズの話です。
 「奇妙な」もしくは「珍奇な」という言葉は英語のbizarre(ビザール)の訳語です。言葉からもわかるように、万人が好むのでなく少し変わった人、他人とは違った好みを持つ人向けのグッズで、最近、認知されるようになったのが「ピザール・プランツ」です。
 ビザール・プランツは、「多肉植物」(サボテン類)の一種ですが、その形がかなりビザールです。写真を見れば“納得!”でしょう。多肉植物は水やりの回数も少なく、手入れも簡単ですし、多種類を寄せ植えすると可愛らしく人気の高い植物です。ところが同じ多肉でありながらビザール・プランツは、その異様な形状が特徴で、お世辞にも可愛らしいとはいえません。認知度も低く、希少性では食虫植物に勝るとも劣らない多肉植物です。
 ツィッターやフェースブックに写真が掲載されると、評価者ゼロのものもあれば10万人以上が“いいね”とつぶやく種類もあり、マニアック極まりない植物です。好きな人にとっては、今風(いまふう)にいえば「キモかわ(気持ち悪いけど可愛い)」的魅力が捨てがたく、「自分の手元で育ててみたい」「自然の神秘をこの眼で確かめたい」という欲望が癒しにつながっているようです。

 

代表的なビザール・プランツ

2枚ともアリストロキア・サルバドレンシス(左はダースベイダー、右は猿に似ている)

タルホーン

バキボディウム・グラキリス

リトーブス(2枚の葉がお尻のような)

ディオスコレア・エレファンティペス(鼈甲竜)

 

◆なぜ市場性があるのか
 一鉢数百円のものもありますが、中には何万円もする高額な「ビザール・プランツ」もありますから、愛好家が1万人になれば、1億円市場も夢ではありません。加えて愛好家の多くは、何種類~何十種類もの「ビザール・プランツ」をコレクションしますので、マニアが増えれば市場規模は倍々ゲームで大きくなるでしょう。
 植物の画像を共有するサイト「グリーンスナップ」には、昨年秋ころから何千枚もの投稿があったそうです。その多くは男性ですが、女性も次第に増えていますので、今後のビザール・プランツ市場は膨らんでいきそうです。食虫植物を好きな人同様、かなりマニアックな人たちが市場を支えることになります。
 何故、この珍奇な植物が人気を呼ぶようになったのでしょう。現在の社会はすでにモノで溢れていて便利さとか安さだけでは人間の心は動きません。先に、「キモかわ」という表現を使いましたが、自分しか知らない、自分だけが好きなマイ・ブームとしての「ビザール・プランツ」は、新しい「カッコよさ」や「自分らしさ」を表現し、現代人の癒しを提供する格好のグッズなのです。楽天市場で検索すると、ビザール・プランツはほぼすべて「売切れ」です。

 低迷する経済社会の中で、モノの売上げは落ちて、サービスの時代といわれます。ビザール・プランツは、モノでありながら希少性という情報や不思議な癒しという価値や満足感という魅力をプラスした新しい製品です。
 まだ知られていない、しかし、知られたら確実にヒットする、そんな製品を見つけることは“市場開拓”であり、それこそがマーケティングの真髄です。すでに世間に知られた製品の売上げを上げるのでなく、これから知られる製品を見つける考え方がマーケティングです。(例えば、未開の地に靴のセールスマンが2人、派遣されました。そこに暮らす人たちは裸足で歩いていました。それを見て、1人は市場がないと判断し帰国しました。しかしもう1人は市場があると判断し、靴のメリットを説明して回りました。結果は明白です。裸足だから売れると判断することがマーケティングなのです。)
 ビザール・プランツは、新しいマニアックな市場を創造する種や芽になると思います。