北斎の弟子 昇亭北寿 水田美術館

 昇亭北寿は、風景画が浮世絵の一つのジャンルとして確立する前の享和~文政期(1801~30)に、風景を専門的に描いたユニークな絵師です。師である北斎の洋風風景画を引き継ぎ、透視図法、陰影法を使用し、地平線が低く湧き立つ雲が印象的な作品を残しました。伝統的な江戸名所のほかに、いち早く房総の銚子と九十九里を描いた点も注目されます。
 風景を主題にした浮世絵は、18世紀後半に、西洋の遠近法を導入し奥行を強調した「浮絵」の流行とともに描かれる機会が増えます。「浮絵上手」と評された北寿ですが、従来の作為的な風景から一歩踏み出し、光と大気の動きをとり入れたより自然な景観描写を目指しました。つゆ草や本藍による青の色調のほか、雲と霞を重ねるぼかしの表現も、ベロ藍が使用された天保期(1830~44)以降の風景画とは異なる北寿作品の魅力です。
 このたびの展覧会は、紹介される機会の少ない北寿の錦絵作品を一堂に集め、初摺・後摺の違いや画風変遷を探る初めての試みです。おなじみの北斎・広重作品とはひと味違う、新たな風景版画との出会いをお楽しみください。

関連企画

◎講演会

11月12日[土] 午後1時20分~2時50分
「浮世絵風景画史における昇亭北寿」
大久保純一氏(国立歴史民俗博物館教授)
図書館3階プレゼンテーションホールにて
*聴講無料/要予約

◎ギャラリートーク(当館学芸員による展示解説)

11月19日[土]、26日[土] 午後1時30分~


関連企画

開館時間=午前10時~午後4時
休館日=日曜日、月曜日、祝日(大学祭期間の11月6日、7日は開館)
入館料=300円、高校生以下無料


チラシ制作:メディア学部クロスメディアコース3年 高野幹
Webデザイン:メディア学部クロスメディアコース1年 柳下藍

《新板浮絵両国橋夕景色之図》

《新板浮絵両国橋夕景色之図》
大判錦絵、 寛政(1789~1801)末~享和(1801~04)頃、
太田記念美術館蔵

《下総銚子浦鰹釣舟之図》

《下総銚子浦鰹釣舟之図》
大判錦絵、文化1~6年(1804~09)頃、
城西国際大学水田美術館蔵

《東都品川宿高輪大木戸》

《東都品川宿高輪大木戸》
大判錦絵、文化1~6年(1804~09)頃、
日本浮世絵博物館蔵

チラシ

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