カラーメゾチントの生みの親として知られる国際的な銅版画家、浜口陽三(1909〜2000)は、銚子で代々醤油醸造業を営む家の三男として、和歌山県に生まれ、幼年期を銚子で過した千葉県ゆかりの作家です。

浜口は、東京美術学校彫刻科を中退し、フランス留学を経験しながら長い模索時代を経て、40代で過去の銅版画技法となっていたメゾチントに出会います。試行錯誤の末、メゾチントによる独自の芸術表現にたどりついた浜口は、1957年にサンパウロ・ビエンナーレで版画大賞を受賞し、突如として世界の舞台に躍り出ると、続いて数々の国際展で受賞を重ね、20世紀を代表する銅版画家としての地位を確立しました。

浜口の選んだメゾチントは、銅板全面に微細な溝を刻んで素地を作り、後から対象を削り磨いて出現させる技法です。黒から白への無限の階調を持つ「黒の技法」と呼ばれるメゾチントに、さらに色彩を加えた浜口の創意は革新的でした。さくらんぼやてんとう虫といった身近なモチーフが、気の遠くなるような手仕事によって、研ぎ澄まされた空間に浮かび上がります。縦横に交差する線がつむぎだす柔らかい黒と、色を帯びた光の粒が次第に形を結んでいく繊細で深々とした味わいは、時代を超えて人々の心に響くでしょう。

このたびの展覧会では、浜口陽三生誕100年を記念し、ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションの全面にわたるご協力のもと、初期から晩年までの代表作を年代順に回顧します。流行にとらわれず、日常のありふれた静物を題材に、詩情豊かで精神性の高い作品を作り続けた浜口の軌跡をお楽しみ下さい。

主な作品
「14のさくらんぼ」 「スペイン風油入れ」 「パリの屋根」

関連イベント
三木哲夫氏   ◎ 講演会
2009年9月12日[土]13:30〜15:00
演題:「浜口陽三を語る 人と作品」
講師:三木哲夫氏(国立新美術館特任研究員)
会場:図書館棟3階プレゼンテーションホールにて
講師プロフィール:
1947年 神戸市に生まれる。
1970年 甲南大学文学部社会学科卒業。
1976年 和歌山県立近代美術館学芸員、のちに学芸課長を務める。
1998年 国立国際美術館学芸課長。
2004年 国立新美術館設立準備室副室長、副館長を経て現在にいたる。
■主著
『近代日本版画の諸相』共著、中央公論美術出版、1998年
『浜口陽三全版画作品集』編著、中央公論美術出版、2000年
『パリと私 浜口陽三著述集』編著、玲風書房、2002年

◎ギャラリートーク(当館学芸員による展示解説)
9月19日[土]午後2時〜

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