教員インタビュー 中川正臣(韓国語)
――研究テーマについて教えてください。
主に韓国語教育を含めた言語教育について研究しています。具体的には、教室という殻を破り、学習者が自分を取り巻く社会とつながる言語教育について研究しています。
――どのような関心から、その研究をしようと思われたのですか。
教室完結型の授業というのは、いったいなぜそれを学ぶかがわからないんですね。私自身も子供の頃や学生時代に、教室や教科書で学んだことはほとんど記憶にありません。人間は実際に経験し、「自分のもの」として考えられないと、学びは起きないと思うんです。
――他にも、関心をお持ちのことはありますか。
従来の平均的な学生のための教育ではなく、障がいやLGBT、様々な母語を持つ学生など、多様な背景を持つ学生が混在する場の学びについても関心を持っています。最近、手話でアイスコーヒーが飲みたいって言えるようになったんですよ。
――国際人文学部の授業ではどの科目を担当されていますか。
「韓国語コミュニケーション」、「日韓比較文化」、「日韓翻訳技法」などの授業を担当しています。授業は可能な限り活動をプロジェクト化し、人や社会に役立つことを目標に進めています。
――例えばどのようなプロジェクトをしているのですか。
「日韓翻訳技法Ⅰ」という半期の授業では、前半は翻訳の基礎について、実際に翻訳をしながら学び、後半は、韓国で出版された絵本の翻訳をグループで行いました。まず作者の経歴を翻訳したり、YouTubeにアップされている作者に対するインタビューを見ながら、作者がなぜこの絵本を作りたいと思ったのか、学生たちはその背景について理解した上で、グループ活動に入りました。
授業で韓国語の絵本の翻訳に取り組む
――学生の反応はどうでしたか。
やはり擬態語、擬声語などの翻訳や絵本を読む読者(子供や読み聞かせをする大人)目線での翻訳は苦戦していました。でも、グループには日本語、韓国語、中国語を母語とする学生がいるので、お互い協力しあいながら一つひとつ問題を解決していました。
――その絵本翻訳の成果物はどこかで公開されるのですか。
はい、オープンキャンパスの日に、国際文化学科の説明会場で公開しています。それから学期終了後、大学図書館の絵本と一緒に展示される予定です。韓国語がわからない学生や地域の方や子供たちに少しでも役に立てればと思います。
――国際文化学科のアピールポイントを教えてください。
先ほども言いましたが、私は経験を通じてしか学びは起きないと考えています。様々な背景を持つ学生が集まる国際文化学科では、多様な「言語」、「文化」、「社会」について経験しながら学べます。
ただ、経験は「単にやってみること」ではありません。問題意識を持ち、解決のために遂行し、その結果を振り返るという、終わりのないサイクルと言えるかもしれません。国際文化学科では、この一連のサイクルが学生の経験値につながるように、クリティカルな思考を持つことに力を入れています。私は韓国語コースの教員ですが、韓国語という言語やその背景にある文化だけではなく、このクリティカルな思考が社会で生かされると思っています。
――最後に学生の教育についての抱負を、ひとことお願いします。
国際人文学部は、授業は勿論、留学や研修、アドバイザー制度、メンター制度などを通じていろいろな学生、先生、スタッフと「つながる」ことができます。人と「つながる」ということは自分にも社会にも大きな力になります。だからこそ、そのつながりを大事にし、今度は人と人を「つなげる」役割を担ってもらいたいと思います。私も「つながる」と「つなげる」を大事にしながら日々学んでいます。一緒に学んでいきましょう!
略歴
東京都生まれ。ソウル大学大学院国語教育科韓国語教育専攻博士課程修了(博士:教育学)。警視庁、(韓国)梨花女子大学言語教育院、(韓国)弘益大学教養科、(韓国)培材大学外国語としての韓国語学科、目白大学客員研究員を経て、城西国際大学国際人文学部国際文化学科に着任。専門は言語教育学、韓国語教育学など。教育研究業績:https://researchmap.jp/555---/ 趣味はキャンプ。