私のコレクションは、一見、混沌としたものに見えるかもしれません。着物姿の女性が描かれた近代的な街の風景、かつての日本の植民地の風景などがあり、忘れられた過去からのポストカードのようです。コレクションのほとんどは1918年から1941年の間に制作された作品で、私が授業で教えている時代と重なることは偶然ではありません。日本の都市には車や地下鉄、コンクリートのビルが描かれ、一方植民地に取材したものには牧歌的な風景、歴史的建造物、民族衣装をまとった人々が見られます。
江戸時代に発達した木版画は、芸術ではなく、ニュースメディアの先駆けであり、情報交換の手段でした。戦間期の版画は、この報道的な性格から、想像以上に国際的であったかつての日本帝国を今に伝えています。なかでも、日本の版画界で活躍したフランス人画家ポール・ジャクレーの作品や、植民地を訪れた多くの画家の一人・平塚運一によるモノクロームの朝鮮風景などは見どころです。店を巡り木版画を収集することは、歴史教科書から抜けているページを埋めることなのです。
2018年 アンドリュー・ホルバート
川瀬巴水
《東京二十景 新大橋》
1926年、38.6×25.9㎝
小泉癸巳男
《昭和大東京百図絵
第三景 三井と三越》
1929年、39.4×30.1㎝
ポール・ジャクレー
《世界風俗版画集
パリの婦人》
1934年、49.0×37.1㎝