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2018年秋季学位授与式における学部卒業生に向けてのメッセージ

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卒業生のみなさん、多くの労苦の結果としてここに学位を取得されたことに、学部教職員一同を代表して、心よりお慶び申し上げます。みなさんがこれから、学業、就職と、母国やまたこの日本にあって、この世に派遣されていく現場では、本日、学長、理事長がお話された通り、産業構造が大きく変わり、社会も働き方も大きく変わるばかりでなく、地球環境問題はじめ国境を越えて解決に取り組まなければならないことに、わたしたちひとりひとりだれもが直面することになるでしょう。そこで、環境社会学を学ばれたみなさんには、私からは次のことを共にこれからもともに分かち合う人生の課題としてお伝えしたいと思います。一つは、日々当たり前と思っているものの考え方をゆるがす努力です。もう一つは、実際に、ものごとの境界を越え出て、自分自身変わっていくことです。100年前といえば第1次世界大戦の終わりでした。このころみなさんが学んできた環境社会学にとっても重要なメッセージがありました。産業革命以来経済活動が拡大進展していく中で人間は世界戦争に直面しました。この第1次世界大戦の問題を深刻に受け止め、『戦争のポリティカル・エコノミー』という書物を表したアーサー・セシル・ピグーという経済学者がいました。みなさんのおひとりがこの書についてレポートを書いてくださったことは今も強い印象を以て覚えています。ご存知のとおり、その後の「市場の失敗」という考えにもつながる「外部不経済」という考えを提出した環境社会学においては重要な学者です。ピグーは、最大の外部不経済ともいうべき戦争がいかに市場経済から逸脱しているかその病を論じました。この同時期に、第2次世界大戦後の福祉国家の理論的基盤を築いたジョン・メイナード・ケインズも、1924年オクスフォードで、26年にはベルリンで「レッセ・フェールの終焉」という講演を行いました。レッセ・フェールとは、一人一人が自分の頭の上のハエを追いかけているだけで、世の中全体はよくなるのだという考えです。ケインズは、そこで、17世紀からの英国思想を再検討したうえで、一度も証明されていないのに、乳飲み子にミルクを飲ませるように何度も何度も幼い時から聞かされてきただけの話だと告発します。わたしたちは毎日自分の考えている考えの枠組みがどういうものか自分からはなかなか考えることができません。うまくいっていればなおのことです。これは思考の罠と言ってもよいものです。環境社会学部の学びで私はこの問題に何度もふれてきました。その後のケインズ思想の行く末を考えると1970年に福祉国家は崩壊するとともに、その時代はもっとも公害を生み出してきた時代だったわけですから皮肉なことではあります。しかし、みなさんぜひ自らの思考の罠というものを覚えて、ぜひこれからの不透明な時代を乗り越えて行ってください。そのために、二番目に申し上げたいことは、ものごとの境界を身をもって超えて行きましょうということです。これは頭ではなく実践の問題です。実はすでにみなさんは単に学部の学びということではなく、この城西国際大学においてさまざまな国から来た学生や先生と交流する中で果たしているのです。ふりかえって、それまでの自分がこの異文化のるつぼのなかでどれだけ自分自身が脱皮できたか思い出してみていただければ幸いです。現在、世界全体で、ナショナリズムや分断や憎しみが増長していく中で、すでにみなさんは一度は身をもって経験した、境界を越え出ていくという糧を、ぜひこれから送り出されていく困難な場で発揮してください。困難なことは美しいとも言われます。最後に、どんな困難があっても希望を捨てずに、常に笑みをもって生きて行きましょう。城西国際大学はみなさまの母校(alma mater)です。いつでも帰ってきてください。本日はご卒業まことにおめでとうございました。

環境社会学部学部長代行

瀧 章次

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卒業生との記念写真