環境社会学部の講義「ハーブ園芸」(担当:川口健夫教授)では、ハーブおよび薬用植物の特徴と利用方法を実践的に学んでいます。また、ハーブの生理作用と活性成分の関係について、薬理学的観点からも理解を深めていきます。
ハーブの形状、見分け方、原産地、栽培方法などについては、城西国際大学付属薬草園(千葉県夷隅郡大多喜町)や千葉市の都市緑化植物園などで、実物のハーブ類に学生自らが接して学びます。
ハーブに由来する医薬品は、身近に数多く存在します。解熱鎮痛薬の「アスピリン(アセチルサリチル酸)」は、人類初の合成医薬品で、永遠の新薬とまで言われていますが、その基本構造は、ヤナギ(柳)の抽出成分に由来します。マラリアの特効薬「キニーネ」は南米原産のキナの木から得られ17世紀には広く使用されるようになりましたが、化学的な全合成に成功したのは20世紀も半ば以降のことです。しかも現在でも、商業規模で合成品を供給することはできません。
昔、白血病は不治の病と言われ、白血病を発病した子供の5人中4人は、白血病が原因で死亡していました。この白血病治療の進展にも、身近なハーブが貢献しています。園芸品種がホームセンターなどで広く販売されているニチニチソウの仲間から、画期的な成分「ビンカアルカロイド」が発見され、白血病治療に用いられるようになり、現在では白血病の子供5人中4人は完治が期待できる状況になっています。「ビンカアルカロイド」自体は、実験室で少量の化学合成には成功しているものの、医薬品としての供給は植物(ハーブ)の力を得なければ成り立ちません。
科学の世界における化学合成分野の発展は、19世紀後半以降急速に進み、重化学工業をはじめとして人類の幸福に大きく貢献してきました。一方で、精密で複雑な化合物の合成技術に関しては、未だに植物(ハーブ)の足元にも及びません。
強い生理作用を有するハーブ類の使用には、正確な知識と正しい使用方法が求められます。春の山菜として貴重なニリンソウと間違えてトリカブトの若芽を食し、死亡する例は毎年報告されます。また最近では、イヌサフラン(痛風薬の原料)をギョウジャニンニク(山菜)と間違えて食し、複数の死者が出ています。この講義では、植物(ハーブ)をよく「観る」(見る「look」ではなく、観る「watch」)することを大切にしています。
受講生は、ハーブの実物写真を撮るだけでなく、細部を観察してスケッチを描くことで、対象を良く観る習慣と技術を養います。実物を描いたスケッチや、ハーブに関する調査結果は、受講生全員の前での発表を通じて、「プレゼンテーション力」を高めていきます。
以下に、学生たちの表例を紹介します。
スペアミント(Mentha spicata) | |
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科属名 | シソ科ハッカ属 |
原産地 | ヨーロッパ |
学名 | Mentha spicata |
チェリーセージ(Salvia sclarea) | |
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科属名 | シソ科サルビア属 |
原産地 | アメリカ南部 |
学名 | Salvia sclarea (サルビアスクラレア) |
別名 | サルビア・ミクロフィラ |
薬効 | 抗菌、抗ウイルス、防腐、収れん、制汗、内分泌調整 |
草丈 | 50~100cm |
開花期 | 4~11月 |
花径 | 2cm |
チェリーセージ(Cherry Sage)は、春から秋の長期間咲き続け、丸く唇形をした赤い(チェリーレッドの)小花を咲かせるシソ科サルビア属の半耐寒性宿根草であり、ハーブです。 葉は緑色で小さく、卵形をしており、独特の香りがあります。 枝は、細く赤茶色をしています。 観賞用の他、ポプリ等に利用されます。 秋に赤い花を付けて食用になるパイナップル・セージ(Pineapple Sage)と似ています。
ナルコユリ(Polygonatum sibircum) | |
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科属名 | キジカクシ科アマドコロ属 |
原産地 | 中国 |
学名 | Polygonatum sibircum |
一般名 | ナルコユリ |
効用 | 滋養強壮 |
成分 | リシン |
アマドコロ(Polygonatum odoratum) | |
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科属名 | キジカクシ科アマドコロ属 |
原産地 | 中国 |
学名 | Polygonatum odoratum |
一般名 | アマドコロ(甘野老) |
効用 | 強壮・打撲傷 |
成分 | オドロタン・フルクタン |