私たちが暮らしている日本は、四季折々の豊かな自然と風土に恵まれています。その生活の中で育まれた季節の移ろいへの鋭敏な感覚は、歌枕として知られる土地と季節や時間が結びついた名所絵や、十二ヶ月の風物を描いた月次絵などの絵画を生み出してきました。そして江戸時代に花開いた浮世絵にも、年中行事や庶民に親しみ深い季節の風物が描かれました。
このたびの展覧会では、季節の情感が表された作品を展示します。なかでも《賀茂競馬図屏風》は、五月の年中行事を描きつつ、人物の風俗をより身近にとらえた賑やかな作品です。その他、虫の音を聞きながら読書する女性や、九月の「重陽の節句」で菊酒を嗜む美人を描いた作品に加え、特別出品として東金市所蔵の指定有形文化財・朝岡興禎《春秋田園風俗図屏風》を展示します。この機会に季節ごとの様々な暮らしの風情をお楽しみください。
鈴木春信《六玉川 高野の玉川》
中判錦絵、明和 4 年(1767)頃
宮川⻑春《江戶風俗図巻》部分、絹本着色、二巻、享保(1716〜36)
月岡芳年《風俗三十二相 うれしさう》
大判錦絵、明治 21 年(1888)
《賀茂競馬図屏風》の鑑賞