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2021年度秋季入学式告辞に代えて/For the President's Notification at the 2021 Fall Matriculation Ceremony
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ダイバーシティ&インクルージョンの一層の推進に向けて

Toward Further Promotion of “Diversity & Inclusion”

学長 杉林堅次

 2021年度秋季入学生の皆さん、ご入学まことにおめでとうございます。新型コロナウイルス感染症、特にデルタ株による感染症の蔓延により、この度の式典は中止とさせていただきました。入学生の母国日本の感染状況により、来日さえままならない入学生もいると聞いています。感染拡大が一段落すれば、秋の大学祭 や来年4月の入学式と合わせて何らかの式典を用意したいと考えています。教職員一同、その日を楽しみにしています。
 さて、入学式には毎回「学長告辞」を披露していますが、今回はそれが叶いません。そこで、城西国際大学(JIU)が考えている「ダイバーシティ&インクルージョンの一層の推進に向けて」をここに掲載することにしました。激動の時代にJIUに入学された皆さんがこれから学修をスタートさせるにあたり、少しでもお役に立てれば幸いです。

 わが国ではこれまで、一度就職した企業や組織には定年まで勤続し、プライベートよりも仕事を優先するのが当然、と考える風潮がありました。しかし、近年になって、とみに若年層では組織に対する忠誠心が希薄になり転職への抵抗がなくなって、早期離職をする人が増えるようになりました。また、仕事と同様にプライベートも大切にし、ワーク・ライフ・バランスを重視する傾向も高まってきました。その一方で、いわゆるバブル経済がはじけた1990年代初頭以降、多くの日本企業は新しい市場や低コストの労働力を求めて海外に進出したり、海外資本と提携したりするなど、グローバル化を推し進めてきました。
 こうした生活者の考え方や企業の経営戦略の変化と並行して、わが国では少子高齢化が進み、労働人口が減少してきました。その結果、いままでの男性中心で終身雇用・定年制を基本とするメンバーシップ型雇用方針を転換して、欧米を中心に普及しているジョブ型人事制度を採用するなど、企業は人材の確保に今まで以上に力を入れるようになってきたと感じています。女性の積極雇用と活躍の場の拡大、定年の延長や再雇用による高齢者の経験と能力の活用、さらに、外国人の積極採用などの動きはその典型です。卒業後も日本に残って仕事をする留学生も増えました。
 国際連合(United Nations)は2015年に、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)」を193の加盟国の全会一致で採択しました。このSDGsは17のゴール(目標)と169のターゲット(達成基準)から成り立っています。ここで説明するのもはばかれるくらい、よく知られるようになりましたが、先進国も途上国も普遍的に取り組むべき世界共通の物差しであり、貧困の撲滅や気候変動等の幅広い課題を解決し、2030年までに持続可能な社会を実現するための重要な指針とされています。また、その基本コンセプトとして、「誰ひとり取り残さない:No one will be left behind.」を掲げています。私は、このようなSDGsの考え方のなかで、「ダイバーシティ&インクルージョン」の重要性が脚光を浴びつつあるのではないかと考えています。
 「ダイバーシティ:Diversity」とは「多様性」のことで、さまざまな属性が想定されます。「多様性を受け入れる」というと、「女性にも男性同様の職責や待遇を与える」「外国人と共生する 」といったわかりやすいことに注目しがちですが、もっとそれぞれの個性や差異にも配慮して、区別や差別をすることなく認めて受容することが重要だと思います。一方、「インクルージョン:Inclusion」は「包括、受容」と訳されますが、教育分野では以前から「インクルーシブ教育:Inclusive education」という言葉が使われていました。「インクルーシブ教育」は、障害がある子供も支援学級ではなく通常クラスに属して、障害の有無に関わらずそれぞれが能力を伸ばせる教育を目指そう、という考え方であったと聞きます。このように、「ダイバーシティ」と「インクルージョン」は非常に似ていて区別をつけにくい概念ですが、「ダイバーシティ&インクルージョン」とは、人々の多様性(=ダイバーシティ)を認め合い、受け入れて活かすこと(=インクルージョン)」といわれます。私たちが生きているこの世界には、ジェンダー(男女差、LGBTQなど)、年齢(ジェネレーション)、国籍、人種、民族、健常者と障害者、宗教、言語など多くの属性が存在します。 特に、マジョリティに属する方々のマイノリティに対する理解が重要です。たとえば、仕事と育児や介護との両立、さらには職場での仕事とテレワーク(在宅勤務)の併用といったワーク・ライフ・バランスの重視も必要とされています。 それぞれの属性や事情に配慮したうえで、組織の一員として受け入れることが重要でしょう。

 さて、大学教育の現場でも、大変革が進行しています。その原因の1つは大学生がZ世代(Generation Z)になったことです。Z世代とは、概ね1990年代中盤から2000年代終盤までに生まれた人たちです。生まれた時からデジタル機器やインターネットが当たり前のように存在し、Webを日常風景として眺め、また、パソコンよりもスマートフォンを日常的に使いこなし、生活の一部としています。 インターネット検索等で物事を簡単に調べることができることから、「望めば何でもすぐに知ることができる」と思っている世代です。そのため、Z世代への大学教育では単に知識だけでなく、「議論すること」「考えること」を重要視すべきだという方向に変わってきました。
 変革が起こっているもう1つの原因は、学校教育法の改正により、 大学は学長のリーダーシップの下で、戦略的にマネジメントできるガバナンス体制を構築することが不可欠だというように変わってきたことです。学長のリーダーシップといえば、トップダウンだと考える方がおられるかもしれませんが、学生はもちろんですが、教員や職員の納得を得られない限り大学は発展しません。また、もちろん今までのように、学部長や研究科長にも一定の責任があります。このような環境変化のなかで私は、 「リーダーはまず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」という考えのもとに生まれた「サーバントリーダーシップ:Servant Leadership」を取り入れた組織運営がよいのではないかと考えています。JIUではサーバントリーダーを積極的に育成し、教員と職員の連携を今まで以上に進めていきたいと考えています。 
 もちろん、先ほどから記述してきた「ダイバーシティ&インクルージョン」の必要性も原因の1つです。世界は多様化し、自らの属性に捕らわれた考え方では人は生きていけなくなったということです。
 こうした大学大変革期にあって、私は、大学教育の考え方や方法論を1つに決めつけないほうがよいと考えています。いろいろな手段や手法を用いて教育するのがよいのではないでしょうか。
新入生の皆さんもこれから受けることになる、JIUの利点を生かした新しい教育について、以下にお示しします。

  1. JIUのグローバル化のさらなる進展が必須だと考えています。提携校などと協働して、新しい知識や知恵を探す力をつける教育をしていきます。JIUが国内外に有している多くの提携大学との連携をますます強固にするとともに、「アフターコロナ」には留学の促進や留学生の受け入れもコロナ禍以前より活発にします。
  2. JIUは総合大学ですので、教員はもちろん学生の学部間交流を今まで以上に増やしていきたいと考えています。これは単科大学では望めない利点です。例えば、地域に貢献する医療職・福祉職を育成する薬学部、看護学部、福祉総合学部と、国際交流が活発な国際人文学部が連携すれば、国内にいる外国人などとの連携が進みます 。また、薬学部、看護学部、福祉総合学部が経営情報学部、メディア学部、観光学部と連携すれば、地域の活性化につながるイベントに発展する可能性もあります。また、こうした学部間交流を通して、キャンパス外での教育も進むことが期待されます。
  3. いまは、近い将来さえ予測するのが困難なVUCA時代(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)にあるといわれています。このような時代では、学生は文系や理系だけにこだわることなく文理融合して学修する必要があります。とくに、リベラルアーツについては、どの学部学科の学生であってもしっかり学んでもらいたいと考えています。JIUでは2022年度から「全学部共通基盤科目」というリベラルアーツ科目群を立ち上げます。デジタル化が進み、多くのものがAIに代替されるなかでは、いままで以上に、未知の課題に対する解を導き出すための「想像力:Imagination」と「創造力:Creativity」が必要です。2でも示した総合大学としてのメリットを生かしたいと考えています。
  4. JIUの観光学部は2022年4月には東金キャンパスに移転します。この後、JIUは東京紀尾井町(東京都千代田区)と千葉東金(千葉県東金市)の2つにキャンパスを集約して教育を行うことになります。紀尾井町は国会図書館にも近く、まさしく日本の政治経済の中心にあります。日本の変化を間近に感じながら、勉強することができます。一方、東金は首都圏の東にあり、高齢化や地域社会の衰退など、わが国が抱える多くの問題を身近に感じることができる土地です。地域の活性化を地元の人々と連携して進めることができれば、日本全体、ひいては世界の高齢化などに対応する方法論が見つけられるかもしれません。さらに、紀尾井町と東金の学生がそれぞれのキャンパスで得た学びを共有し合えるようにすれば、教育効果はますます高くなるのではないでしょうか。これは都心だけに位置する大学や地方大学では得られない長所となります。
  5. コロナ禍によって、JIUでもオンライン教育という手段を得ました。これからの授業形態は、オンラインと対面の両方を駆使すべきだと考えています。特に単に知識を付与する場合など、オンラインの方が学生も何度も見直すことができるので有効です。しかし、より深い知識レベルに至るには、教員や学生との対話(ディスカッション)が大変有用でしょう。先にも述べたように、大学は本来、「議論する場」であるからです。もちろん、対話を中心とした教育は少人数で実施すべきですので、もしかすると、従来からあった大学の大教室の多くは不要になるのかもしれません。私たちは、アフターコロナとなっても、せっかく手に入れたオンライン教育という手段も必要に応じて使っていきたいと考えています。JIUにはオンライン映像作成技術に長けたメディア学部があるという長所も生かしたいと考えています。
  6. 授業形態についても、講義、演習、見学、実習などさまざまなやり方を取り入れ、工夫する必要があります。学問分野にもよりますが、教室やキャンパスから出て学習することも大変重要です。学外実習やインターンシップも充実させたいと考えています。実習施設や地域との連携は、これからの大学のあり方にも大きく影響するのではないでしょうか。
 

 「ダイバーシティ&インクルージョン」については、ジェンダー、健常者と障害者、また、世代の枠を超えて議論する必要があります。もちろん、その前に、地球上でたびたび戦争や紛争の原因となっている他の国、人種、民族、宗教に対する不寛容や、エネルギー資源や貧困の偏在を克服する必要があります。JIUはさまざまな国から多くの留学生を受け入れています。本学の学歌にも「キャンパスは 地球そのもの 学び合う人のるつぼだ」とあります。ぜひ力を合わせて、「キャンパスは世界のモデル」「国々の 境を越えて」はばたいてほしいと考えています。

 いまこそ「ダイバーシティ&インクルージョン」の一層の推進に向けて、進まねばなりません。JIUは、世界の「ダイバーシティ」をよく理解して、「インクルージョン」に向け努力したいと考えています。もちろん急速に発展している科学技術の力も借りなければいけないのでしょうが、私は「ダイバーシティ」な世界で共生し、周りの人々に配慮しながら、みんなで「インクルージョン」していくことが重要だと考えています。
 さあ、新学期がはじまります。みんなで一緒に学んでいきましょう。

2021年9月17日 記