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一旅一見(3)イギリス南西部に見る自然と景観保全

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(3)イギリス南西部に見る自然と景観保全

 

ローマ浴場博物館に入ると古代ローマ公衆浴場跡がある


 ロンドンから約200キロのイギリス南西部に位置するバース市。昔から富裕層の保養地として知られており、イギリスで唯一、街全体がユネスコ世界遺産に登録されている人口約9万人の都市です。英語の風呂-バス (Bath) の語源になったといわれるこの街は、約2000年前にローマ人が建設したローマ浴場 (Roman Bath) が今でも大切に保存されています。なんと現在でも46℃の温泉が、一日117万リットルも湧き出ているというから驚きです。ローマ浴場博物館 (Roman Bath Museum) では、当時のローマ人が湯治目的をはじめ、床暖房システム開発に至るまで、いかに温泉を熟知してこの場所を作ったのかがプロジェクションマッピングなどの新しい技術を用いて紹介されています。ローマ浴場前に立つと、この場所を中心に街全体がバース周辺で取れる石灰岩 (Lime Stone) で統一されており、年間を通して世界中の人々を魅了する理由がよく分かります。また、18世紀中期に建築されたロイヤルクレセント (The Royal Crescent) やサーカス (The Circus) などの高級集合住宅や、約1200年もの間キリスト教徒への祈りの場として機能し続けてきたバース寺院 (Bath Abbey)も、この街の歴史・文化を知るうえで見逃せません。

 このバース市から70キロほど北へ行くと、特別美観地域に指定されている田舎町のコッツウォルズがあります。ここは、19世紀を代表する英国の偉大な芸術家でデザイナーでもあったウィリアム・モリス (William Morris) 氏が、「イギリスで最も美しい村」と評した場所として知られており、一部の貴重な建物は、現在でも英国ボランティア団体のナショナルトラスト (National Trust) によって大切に保護されています。思わず溜息が出てしまうほど建物と自然が見事に融合した景色に、景観保全の重要性を再認識させられました。一方で、観光客を楽しませる小物、雑貨、ローカルフードを扱う商店が軒を連ねるエリアもあり、自然・景観・ビジネスがバランスよく混ざり合っているといった印象です。

 イギリスの人たちは、休日にのどかな場所を訪れ自然の中で暮らすことを、もっとも贅沢だと考えています。バースとコッツウォルズに、改めて景観保全への意識の高さと、日本の休日の過ごし方を考えさせられる一時となりました。

(観光学部教員 石谷)



ローマ浴場 (Roman Bath)入り口。

神殿のペディメントに掘られているのはローマ神話に登場するゴルゴンの頭。ミネルバ女神の力を表しているとされる。


プロジェクションマッピングで浮かび上がるのは古代ローマ時代の形。 


ローマ浴場博物館内地下。現在でも温泉が湧き続けている。


 高級集合住宅、The Circus


バース寺院(Bath Abbey)


バース寺院の中。天井はバース周辺で採れた石が使われており、石の花が咲いているようで美しい。


コッツウォルズ。自然と建物が見事に融合している。


連なる家々はナショナルトラストに登録され、大切に保護されている。


高台から見るバーフォード(Burford)。ギャラリーや地元品を扱う商店が並ぶ。