10月24日(土)、「まちづくり」「まちおこし」に関する企画や運営といった仕事に日々従事している“その道のプロ”をお招きし、月1回のペースで開催する自主ゼミ(大学の授業外で学生たちが自主的に行うゼミ活動)の第5回目を開催しました。今回も観光学部から学生と教員各1名が参加しました。
恒例の集合写真
第5回目の“その道のプロ”は、建築事務所からキャリアをスタートさせ、その後、コミュニティ型シェアキッチンの企画・運営や、町工場とクリエイターの掛け橋として日本の地方産業を世界に発信するデザインプロデューサーとして歩み始めている宮地洋さんです。最近では、プレイスマネージャーとして、「日本橋クリエイティブ拠点」、「大田区梅屋敷KOCA」に参画するなど東京を中心に活動をされています。 今回は、こうした宮地さんの多彩なキャリアとプロジェクトの数々をご紹介いただいたスピード感あふれる刺激的な自主ゼミとなりました。 とくに、その中でも印象的だったのは、「まちづくりをしていく上では、「まちのコンテンツをどう活かすか」ということと「継続するための事業化が重要」」という話だったと学生の皆さんは口を揃えて言っていました。「自分たちが地域連携型の授業を履修し関わっているプロジェクトを、どのように実現化し継続的に運用していくのか?」ということと重ねてお話を聞いていたからかもしれません。 また、「30歳の若さで独立され活躍されている姿に驚いた」ようです。自分たちの10年後の未来を想像して重ね合わせるほど刺激を受けたようです。そのこともあり、「宮地さんのようになるためには卒業までに何をやっておけばいいのでしょうか?」などの質問が飛び交うなど、学生の皆さんが多くのエネルギーとパワーをいただいた刺激的な自主ゼミとなりました。
環境社会学部3年 蜂谷主さん
今回の宮地洋さん(以下、宮地さん)のお話の中で、私が最も興味を持ったトピックは、食のクリエイターが挑戦できる場にしたい、という想いから創られた社員食堂ラボでした。 宮地さんは「食がコミュニティの核になる」という思考のもと、この社員食堂ラボを仲間たちと始めたと話してくれました。最初は、社員食堂を持たない中小企業とくにデザイナーなどのクリエイターを対象として、キッチンを外部の人たちに開放していったようです。私は、こうした企画が面白いと思い話に惹きこまれました。
なぜかというと、私は現在、ゼミの研究において「社会的な孤独を感じる人を減らしたい」という想いから、サードプレイスについての研究を行なっています。また、その研究のための調査をもとにして、「共通点を持つ人同士が集まって悩みを打ち明けたり、同じ地域に住む人がまちづくりに関わる話し合いをしたりする目的交流型のサードプレイス」を企画したいと考えています。今はまだ漠然としていますが、将来は運営もしたいと考えています。
ただ、「そのためには、どうしたら外部の人を集められるのか?」ということが課題でした。しかし、今回、宮地さんの講演の中で「自主的にプロジェクトを繰り返し行なっていくことで協力してくれる人が出てくる」、また「必要としてくれる人が出てくる」という話には勇気づけられました。そのためにも、これから研究を進めていく過程で、「ターゲットを絞り「どのようなことをしたいのか」ということを明確にするとともに、プロジェクトを自分ごととして考えること」がその第一歩になるのかなと思いました。
「楽しみをみんなで共有しよう」というコンセプトの社員食堂Lab
観光学部3年 丸山ケン太さん
今回は、建築家でありプレイスマネージャーとして活躍されている宮地洋さんのまちづくりに関する講義を聞かせていただきました。 とくに、私は日本橋で携わっていらっしゃるプロジェクト「日本橋歴史アーカイブス」のお話に非常に関心を持ちました。なぜなら、商店街を活性化させるために、日本橋くされ市というイベントを企画・運営し、そこから地域への認知を広げていきながらまちづくりへとつなげ、歴史や文化といった「既にあるものを新しい価値として創りなおすことで、地域の活性化につなげていく」とい考え方は、観光振興においても非常に参考になるモデルだと思ったからです。 今回は、古いビルやマンションを個々人が共有して利用できるキッチンスタジオに改修する話も取り上げられましたが、それも同様の考え方だったかと思います。アーティストのアトリエとして単純にきれいに箱を提供するだけではなく、「人が寄りそえる場所づくり」という異なる視点からのコンセプトを組み合わせるだけでも、新しいものができるということを学びました。物そのものではなく、そうした考え方こそがデザインなのだなと改めて教えてもらえました。
日本橋アーカイブス展示風景(プレゼンで使用している写真:高木俊幸写真事務所)
環境社会学部3年 梅井舜さん
今回の宮地さんのお話にあがった「梅森プラットフォーム」というプロジェクトの内容が印象に残りました。とくに、普段、私たちが高架下で目にする駐車場とは異なり、町工場やカフェ、パン屋さんなどを作ったことに興味を惹かれました。高架下という電車の音も大きく、建物が建てられているイメージがまったくない場所に、今までにない活用の仕方を導入しており、思考の柔軟さというものを見習わなくてはいけないと思ったからです。さらに、このプロジェクトは、高架下を活用するだけでなく、最終的にまちづくりに繋げていくというものだったからかもしれません。 ちなみに、私は、現在、ゼミの研究活動で「バス(公共交通機関)を活用したまちづくり」という視点で研究を行っています。そのため、「バスをもっと地域の人たちに使ってもらうにはどうしたらいいのか?」ということを考える機会があるのですが、私は「何かを改善しよう」と考えても残念ながらありきたりなことしか思いつかないことが多いのです...。しかし、梅森プラットフォームのような固定概念にとらわれない感覚というものに、「どうしたらこのような発想ができるのか?」と興味を持っています。また、今回の自主ゼミの後で、この活動について調べてみて、このようなプロジェクトが世間から注目を浴びている事実を知りました。だからというわけではありませんが、こうしたお話を聞いて、ゼミ研究や今後のまちづくりに関わる活動を行うにあたっては、頭を柔軟にして多彩な考え方ができるよう日頃の生活から意識していかないといけないのだなと思いました。
梅屋敷の高架下を利用した大田区梅屋敷KOCA