客足が戻った京都 「オーバーツーリズム」も復活?

  • シリーズ・新型コロナ時代の観光事情
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京都駅前の三尾方面バス乗り場の行列(11月14日)

 GoToトラベルキャンペーンが定着し、観光地に客足が戻ってきた晩秋の京都。11月14日の土曜日、京都の紅葉を愛でる観光客の動向について現地で調査を行った佐滝教授のリポートです。

 新横浜を7時に出発する「のぞみ」は、普通車の指定席もグリーン席も、観光客とおぼしきグループなどでほぼ満席でした。4月の緊急事態宣言で客足が止まって以降、東海道新幹線には毎月2~3度は乗ってきましたが、満席の状況に遭遇するのは初めての経験でした。
 
紅葉の名所に向かうJRの臨時バス

 京都駅に着き、烏丸口のJR西日本バスの乗り場に向かうと長蛇の列ができていました。紅葉の名所として知られる三尾(高雄神護寺、槇尾西明寺、栂尾高山寺)へ向かう観光客の行列です。この日は、京都の郊外の紅葉がピークを迎えるころで、三尾への唯一の公共交通機関であるこのバス路線では、臨時便を増発しても乗りきれない状況でした。立錐の余地がない混雑ぶりで出発した栂ノ尾行のバスは、途中の停留所で待っている乗客を「次のバスにお乗りください」と断りながら北上、神護寺の入口に当たる高雄には20分ほど遅れての到着でした。コロナ以前の京都の路線バスで起きていた「バスの素通り」と「混雑による遅延」が戻ってきていたのです。
 
  紅葉に染まる高雄山神護寺

 参道で紅葉のてんぷらを参拝客に売る店員に話を聞くと、こんなに観光客が戻ってくるとは思わなかったと、少し嬉しげでした。
 神護寺は最澄や空海も入山した平安初期から続く名刹で、仏像や肖像画などの寺宝の豊富さでも知られますが、外国人の姿がほとんどないことを除けば、コロナ以前の賑わいが完全に戻っているといってよいほどの混雑ぶりでした。神護寺から歩いて10分ほどの西明寺では、境内が狭いため神護寺以上に「密」に近い状況にも驚きました。
 
ライトアップに映える世界遺産「仁和寺」

 夜は、世界遺産の仁和寺のライトアップの状況をヒアリングしましたが、こちらもチケット売り場には長い行列ができており、境内に咲く有名な「御室桜」の満開時には、緊急事態宣言で参拝を休止しなくてはならなかったことを思えば、客足の戻りはお寺のスタッフにとっても胸を撫で下ろす「復活」でした。
 東京に戻る前に立ち寄った京都駅内の土産物店の店員は、「きょうは休む間もない忙しさ。もともとコロナ対応で店員を減らしているので、かえっていつもよりも忙しいほどだった」と話してくれました。また、京都駅前の地下街のレストラン街も、GoToトラベルの地域クーポンを使う旅行客でどこも行列が長く伸びていました。
 このように、11月の京都は一見すっかり観光客が戻っているように見えますが、有名どころの観光地は回復の足音が高く聞こえる一方で、GoToキャンペーンの影響をほとんど受けていないところも少なくないというように、まだら模様です。また混雑の復活は、コロナ以前にあった「オーバーツーリズム」も併せて「復活」している状況が垣間見え、本来なら今後の観光のあり方をじっくり考えるべき時期に、GoToキャンペーンの浸透で課題を積み残したまま戻ってしまいそうな勢いに、単純に喜べないのではと感じざるをえませんでした。
 11月に入って国内ではコロナ感染拡大の「第3波」が押し寄せており、北海道ではすでにホテルや居酒屋などでキャンセルが始まっています。まだしばらく感染の波による「抑制」圧力とGoToキャンペーンによる「回復」圧力の綱引きで、各地の観光地は翻弄されそうです。
本学科ではこうした最前線の観光事情を学生と共有しながら、コロナ後の観光のあり方を一緒に考えていきます。