身近な観光資源・国登録有形文化財の楽しみ

  • シリーズ・新型コロナ時代の観光事情
  • SDGsへの取り組み

 
 この一年は、新型コロナで始まり、感染拡大が収まらないまま年を越そうとしています。海外旅行もままならず、県境を超えた遠距離移動も憚られる中、普段見逃しがちな身の回りの宝物や文化財を見直してみよう。そんな手近な観光に注目が集まっています。
 では一体どんな所に行けば良いのか? その手掛かりになるのが、国の「登録有期文化財」です。国宝や重要文化財に指定された有名な寺社や建造物ほどの知名度はないかもしれないが、地域の歴史を背負ったきらりと光る町のアクセント。それが登録有形文化財です。
 その数、全国におよそ1万3千件。本学の本部や観光学部のある千葉県でいえば、小湊鉄道の養老渓谷駅や上総牛久駅などの木造の駅舎、1959年に完成した大多喜町役場の中庁舎、野島埼と洲埼の灯台、市川市の昭和学院の創立記念館や県立佐倉高校の記念館などが登録有形文化財となっています。酒蔵や醤油屋さんの店舗や蔵の登録もあります。ユニークなところでは、流山市にある1957年ごろに造られた街路灯も文化財となっています。
 
小湊鉄道養老渓谷駅舎
 
大多喜町役場中庁舎
 
松ヶ丘一号型街路灯(千葉県流山市)

 登録有形文化財となるには、築50年以上が経過し、その地域の景観に寄与したり、現在ではつくることができない技術で建てられていることなどの条件がありますが、内部はある程度改装されたり、別の用途に使われていても構いません。近年、文化財はただ人の目に触れず保存するのではなく、観光資源として積極的に活用していこうという流れがあり、登録有形文化財となった古民家や古い公共建築の建物が店舗やレストランなどに転用されるケースも目立ちます。
 観光学部には、この登録有形文化財を深く研究している教員がおり、2020年12月から、時事通信を通して全国の地方紙に「登録有形文化財を楽しむ」という連載を執筆しています。

 全国に目を向けると、例えば山梨県ではワイン醸造の施設、群馬県は養蚕や製糸に関連した民家や工場など、地場産業に関連する建物が登録されていて、一部は資料館などとして公開されています。地域に根づいた産業の学習の場を提供してくれているわけです。また、ノスタルジーを掻き立てる小学校の木造校舎の登録も目立ち、一部はまだ現役で使われています。赤煉瓦の倉庫もあれば、丹下健三、ヴォーリズなど日本の建築界を牽引した著名な建築家が設計した建物もあります。遠くの有名観光地に出かけるだけが観光ではありません。巣ごもり生活が続き、ドラマや映画を観る機会が増えていますが、明治から昭和の時代を舞台にした作品では、登場するクラシカルな建物に目を凝らすと、それが登録有形文化財だったということは珍しくありません。
 また、こうした文化財の保存や活用は、地域の魅力の再発見につながり、国連によるSDGs(持続可能な開発目標)の目標の一つ「住み続けられるまちづくりを」につながります。
 長距離の移動や密になるような人気観光地を避けることが必要な今だからこそ、登録有形文化財は輝きを増しています。ちなみに、学校法人城西大学の創立者である水田三喜男の生家(鴨川市曽呂)の主屋と長屋門も登録有形文化財となっており、一般に公開されています。
 
旧水田家住宅(鴨川市)

 なお、登録有形文化財については、本学部の教員が執筆した『登録有形文化財 保存と活用からみえる新しい地域のすがた』(勁草書房 2017年)がわかりやすい入門書となっています。

☞ https://www.keisoshobo.co.jp/book/b313350.html