展覧会概要

最新の風俗を描いた浮世絵は、江戸時代の服飾文化を今に伝える格好の絵画資料です。町人が経済力をもったこの時代、女性たちは季節や行事ごとに、きものの素材や模様、着こなしに変化をつけ、装うことを楽しみました。江戸初期には、刺繍や絞りによる大柄な図様の寛文小袖が流行し、友禅染の誕生以降、繊細な染め模様が展開していきます。中期には、上下の割模様や総模様、裾(すそ)模様の形式が生まれ、梅や菊などの光琳模様が大流行します。そして後期には、幕府の奢侈禁令を逆手にとって、渋い色合いの縞や格子、江戸小紋といった粋な装いが好まれました。

また当時、人々が憧れた歌舞伎役者や遊女は、流行の先端をいくファッションリーダーでした。例えば、市松模様や芝翫縞(しかんじま)のように、人気役者の衣裳や紋から流行が生まれます。役者や遊女の姿が色鮮やかに描かれた浮世絵には、おしゃれに敏感な人々が着こなしの参考にする、スタイルブックの役割もあったことでしょう。

このたびの展覧会では、肉筆浮世絵や錦絵から、女性のきものの多様なデザインをみていきます。あわせて、女子美術大学美術館のご協力により、実際に着用されていた江戸中期から後期のきものの名品を紹介します。現在も色褪せない江戸のきもの文化をお楽しみください。

夏姿美人図

吉原真龍《夏姿美人図》 絹本着色
天保〜弘化(1830〜48)頃、 当館蔵

関連企画

◎講演会

10月11日[土]午後1時20分〜2時50分

「小袖の系譜」

須藤良子氏(女子美術大学美術館学芸員)

図書館3階プレゼンテーションホールにて

*聴講無料/要予約

 

◎ギャラリートーク(当館学芸員による展示解説)

9月27日[土]、10月4日[土]午後1時30分〜

梅樹扇模様帷子

《梅樹扇模様帷子》江戸中期(18世紀)
  女子美術大学美術館蔵