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オリーブ Research

「オリーブ産地化に取組む千葉県東金地域の物語」 

 

〔プロローグ〕 

『植木のまち東金』 といわれる千葉県東金市で、2014年からオリーブ産地化に向けた活動が始まった。新たなブランドの構築や地域活性化を目指したこの活動は、冷害や虫害、風害、特に2019年秋の房総台風による被害など、さまざまな困難との闘いの連続だった。そこで2020年には、再起をかけて組合を設立し、大学との連携も始まり、2023年秋に収穫量がはじめて1トンを超えた。しかし、その収穫量を維持することは難しく、今もさまざまな努力を続けている。 

本連載では、オリーブの魅力、オリーブとの付き合い方、そして東金市におけるオリーブ産地化に向けた活動について紹介する。農業・ものづくり・観光・教育・ヘルスケアなどオリーブ産地化に関わるあらゆる分野において、『いかに価値を育て、どのようにつなげていくか』 という問いは共通している。本連載では特に、この問いに対して、人々がどのように向き合い解決しようとしているか、を伝えていきたい。 

大切に育てられたオリーブは、樹齢千年となっても果実を実らせる。本連載を通じて、多くの人々がオリーブに関心を抱き、世代を超えてオリーブと関わり続けることを願うものである。 

2026年5月吉日 

文責:光本篤史(城西国際大学薬学部・教授、東金市産オリーブの地域ブランディング推進事業・アドバイザー) 
協力:東金市役所経済環境部農政課、東金市オリーブ組合、東金元気づくり株式会社(道の駅 みのりの郷東金) 


〔第1部〕 オリーブの魅力:なぜ、オリーブなのか

第1部では、オリーブの奥深い魅力を、身近な視点から丁寧にひもといていく。


【第1回】 オリーブ ― 平和・勝利・生命力のシンボル

第1回は、古くからさまざまな物語に登場するオリーブの逸話から、象徴となる背景のストーリーや現代社会での活用方法について、紹介する。

オリーブは、古くは旧約聖書 『創世記』 “ノアの方舟(はこぶね)” の説話に登場する。洪水から逃れるために家族や動物たちと方舟に乗り込んだノアは、しばらくして方舟から鳩を放つ。1回目に放った鳩はすぐに戻ってきたが、2回目に放った鳩が “オリーブ” の小枝を加えて戻り、3回目に放った鳩が戻ってこなかったことから、ノアは、『ようやく洪水が止み、地上で暮らすことができる』 と悟った。この説話から、オリーブは ”知恵” や “平和のシンボル” といわれるようになった。

その後 ”白い鳩とオリーブの枝” のモチーフは、20世紀を代表する巨匠 パブロ・ピカソ が1949年に描いたリトグラフ “平和の鳩” により、平和のシンボルとして世の中に広まることとなった。現在、国連が提唱するSDGsの16番 『平和と公正をすべての人に』 のシンボルマークにも、白い鳩とオリーブの枝のモチーフが活用されている(図1)。

また、ギリシャ神話(紀元前千年頃)によれば、大神ゼウスから 『人々にとって最も役に立つものは何か』 と問われた女神アテナは、 『オリーブは闇夜を照らす光となり、傷みを和らげ、香り高く、そして口にすれば貴重な食料になる』 と答えたという。このようにオリーブオイルは、灯火、薬用または食用として、ギリシャ文明を支える貴重なものであった。

さらに、古代ギリシャで開催されたスポーツの祭典 “オリンピアの闘い” では、勝者にオリーブの枝が捧げられていたことから、オリーブは “勝利のシンボル” でもあった。近代オリンピックやマラソン大会でも、スポーツ競技の勝者を称え、メダルとともに “オリーブクラウン(冠)” が捧げられている。なお、植物の枝葉で作る冠というと、月桂樹の冠も有名だが、月桂冠は、学術や芸術の祭典で提供されるといわれている。どちらも勝利のシンボルである。

オリーブは、痩せた土地でも根をはり、育ち、大切に育てることにより、千年を超える樹齢でも実をつける(図2)。長命であり、傷んでも再生する力が強いことから、“生命力のシンボル” ともいわれる。オリーブは、先祖から受け継ぎ、後代に継承されていく。オリーブは単なる農産物ではなく、歴史を刻み、文化を醸成し、暮らしを豊かにする “人々の宝” である。
次回は、オリーブ栽培地域の変遷について紹介する。

図1 SDGs16番のシンボルマーク 

図2 千年大樹 (小豆島ヘルシーランド株式会社所有、筆者撮影) 

〔参考資料〕 
オリーブオイルの歴史から、オリーブオイルの品質や健康効果などについてまとめられた書籍。オリーブの世界を知る貴重な資料として掲載させていただく。 
1) 「オリーブの歴史」 ファブリーツィア・ランツァ著, 伊藤綺訳, 原書房 (2016) 
2) 「オリーブのすべて」 横山淳一・松生恒夫・鈴木俊久著, 幸書房 (2018) 

 

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【第2回】 オリーブ栽培地域の変遷 ― 小アジア、地中海沿岸地域、そして日本へ 

第2回は、オリーブの栽培地域に焦点を当て、歴史的な変遷を踏まえて紹介する。 

オリーブは、今から約7千年前にはすでに栽培されていた1)。第1回で触れたように、約3千年前の古代ギリシャ時代には、人々に光や食、薬をもたらす貴重な植物として大切にされ、ギリシャやローマ帝国の商人たちにより、地中海沿岸地域へ広められた。これらの地域は、栽培・加工技術を磨き、継承するとともに、独自の食文化を確立したことから、ギリシャ・イタリア・トルコ・チュニジア・スペインといった国々は、世界の主たるオリーブ生産国となった (図1)。 

地中海性気候は、『年間を通じて温暖で四季があり、夏涼しく雨が少なく、冬は寒くなりすぎず雨が降る』 ことを特徴とする。オリーブの栽培はその後、地中海沿岸に限らず、同じく地中海性気候の北米大陸西岸のカリフォルニア地方や南米大陸のチリ・オーストラリア西南端などといった地域にまで広がった。 

さて、日本で本格的に、オリーブ栽培が行われるようになったのは、20世紀初頭に北方海域の漁業権を得たことによる。魚の缶詰を大量に作るためにオリーブオイルが必要と考え、国策として鹿児島・三重・香川の3県でオリーブの栽培を開始した。当時、定植に成功したのは、地中海地域によく似た気候の瀬戸内海に位置する小豆島だけであり、日本のオリーブ産地といえば小豆島を思い浮かべる人が多い(図2)。現在でも、日本のオリーブ生産量約440トン(2022年)の85%ほどは小豆島のある香川県で生産されている2)。 

1990年代の “イタ飯ブーム”、そして、2010年以降の ”健康志向” により、オリーブオイルの国内需要は高まり (図3)、その消費量は年間約4万2千トン(2025年)に上る3)。しかし、日本のオリーブオイル生産量は40トンにも満たないため、99.9%以上を輸入に頼っている2,3)。新型コロナ感染症や気候変動による干ばつの影響で一時的に輸入量が減少したが、日本におけるオリーブオイル市場の大きさと発展性が見込まれ、地中海性気候以外の地域でも栽培できるノウハウが確立してきたことから、近年、オリーブ生産に取組む地域が急速に広まり、今では47都道府県でオリーブ栽培がおこなわれている。 

次回から第6回までの4回にわたり、健康志向でオリーブオイルの需要が高まる理由について、化学的な観点から理解を深めていく。

図1 地中海沿岸地域の国々 (*橙色:ケッペンの気候区分 “地中海性気候Cs”、筆者作図)

図2 小豆島オリーブ公園からの眺望 (筆者撮影)

図3 日本におけるオリーブオイル輸入量の年次推移 (*財務省貿易統計データ4)より筆者作図)

〔参考資料〕
1) Early production of table olives at a mid-7th millennium BP submerged site off the Carmel coast (Israel). Sci Rep, 11, 2218 (2021)
2) 農林水産省特殊果樹生産動態等調査 https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/tokusan_kazyu/  (閲覧日:2026年5月18日)
3) 「植物油の基礎知識 植物油の道 ‐植物油の生産から消費まで‐ 6. 日本の植物油事情」 日本植物油協会 https://www.oil.or.jp/kiso/seisan/seisan06_01.html (閲覧日:2026年5月18日)
4) 財務省貿易統計、統計品別推移表 https://www.customs.go.jp/toukei/srch/index.htm?M=77&P=0 (閲覧日:2026年5月18日)

 

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【第3回】 オリーブオイルが主役 ― 地中海型食習慣 

健康志向により、オリーブオイルの国内需要が高まっていることを第2回で紹介した。ここからは、なぜオリーブオイルが健康によいとされているか、理解を深めていきたい。オリーブの魅力は何といってもオリーブオイルに代表される食の楽しみである。第3回では、オリーブオイルが主役となる健康的な伝統的食文化である地中海型食習慣について、紹介する。 

地中海型食習慣は、歴史に裏打ちされた伝統的な食文化と、疫学研究のエビデンスにサポートされた健康食習慣として、2013年にキプロス・クロアチア・スペイン・ギリシャ・イタリア・モロッコ・ポルトガルの7か国を対象に、ユネスコの世界無形文化遺産に登録された1)。 

地中海型食習慣(図1)は、野菜・果物・豆類・全粒穀物・ナッツ・魚介類を中心とし、新鮮な食材の素材を生かしたシンプルな料理を特徴としている。四つ足の赤肉は少なめにして、脂質のほとんどをオリーブオイルから摂取する点が注目に値する。オリーブオイルは、地中海沿岸地域の食卓に常備され、食習慣のシンボル的存在となっている。家族や友人と食卓を囲み、ゆっくりと会話を楽しみながら食事をする文化が確立しており、運動を継続して行うことや、一日コップ6杯の水を飲むことも推奨されている食文化であり、生活習慣である。 

地中海型食習慣は、心臓病や糖尿病の予防に効果的なことが、疫学研究から多数検証されている。1950年代から、Keys博士を中心に始められた 『食習慣と健康に関する世界的調査研究(世界7か国研究)』 により、ギリシャのクレタ島の住人は脂質の摂取量が多いわりに心臓病による死亡率が低いことが明らかにされた2)。クレタ島の住民は脂質のほとんどをオリーブオイルから摂取しており、オリーブオイルの摂取が心臓病になりにくい要因と考えられた。 

その後の欧米人を対象とした疫学研究から、地中海型食習慣を継続していると、心疾患になりにくいこと3)、一度心筋梗塞を起こした人が二度目のイベント発生が起きにくいこと4)、成人の糖尿病発症率を抑制すること5)、など、予防医学的な有用性が明らかにされている。今後、日本人を対象とした疫学研究により、オリーブオイルや地中海型食習慣による健康効果が検証されることを期待する。 

次回は、健康影響をもたらしているオリーブオイルの成分について、ひもといていく。

図1 地中海型食習慣イラスト

〔参考資料〕
1) 「地中海型食習慣」 世界無形文化遺産登録, ユネスコ, 2013 https://ich.unesco.org/en/RL/mediterranean-diet-00884
2) Coronary heart disease in seven countries. Circulation, 41, 1-195 (1970)
3) Primary Prevention of Cardiovascular Disease with a Mediterranean Diet Supplemented with Extra-Virgin Olive Oil or Nuts. N Engl J Med, 378, e34 (2018)
4) Mediterranean Diet, Traditional Risk Factors, and the Rate of Cardiovascular Complications After Myocardial Infarction. Final Report of the Lyon Diet Heart Study. Circulation, 99, 779-785 (1999)
5) Reduction in the Incidence of Type 2 Diabetes With the Mediterranean Diet. Diabetes Care, 34, 14–19 (2011)

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【第4回】 オリーブオイルの健康影響 ― 身体によい食用油 

オリーブオイルが健康によい理由は、脂肪酸の質にある。第4回では、オリーブオイルの健康影響について、紹介する。 

オリーブオイルには、嗜好性を左右する個性的な香りや風味があるが、愛好家をはじめ多くの人の興味をそそり注目に値するのが、その健康影響である。オリーブオイルも食用油のため、99%以上はグリセロールに3つの脂肪酸が結合した化合物の混合物である(図1)。オリーブオイルに含まれる脂肪酸全体の約75%がオレイン酸であり1)、食用油の中でオレイン酸含有率が突出して高い。 

摂取した食用油脂に含まれる脂肪酸は、体内の脂肪に含まれる脂肪酸と置き換わる。オリーブオイルに多く含まれるオレイン酸が体内に取り込まれると、炎症を鎮めたり、酸化LDLの生成を抑制したりすることで、動脈硬化や心血管疾患を予防する2)。また、心臓病による死亡の主因となる血中LDL(悪玉)コレステロールと動物性脂肪に多い脂肪酸の摂取量には相関があり、動物性脂肪に代えてオリーブオイルの摂取量を増やすことで、LDLコレステロールが減少し、循環器疾患の発症リスクが低下する3)。 

米国食品医薬品局(FDA)は、『一日約20 gの高オレイン酸(70%以上)オイルの摂取は、冠動脈性心疾患のリスクを低下させる可能性がある。』 とする健康表示を認めている4,5)。オリーブオイルも、ほかの食用油同様に22 gで約200 kcalのエネルギーになる。脂質はエネルギー源や身体づくりに不可欠な栄養素であるが、いつもの食事に追加したら、一日の総摂取エネルギーは摂り過ぎとなり、肥満を招く。上記FDAの文面には続きがあり、『ただし、一日の摂取カロリーを超えない範囲で…』 と注意書きが添えられている(図2)。 

オレイン酸には腸の蠕動運動促進作用があり、オリーブオイルの摂取がお通じを改善することがある6)。オリーブオイルの感受性は人によって異なるが、便秘で悩む人が、食事にオリーブオイルを取入れることで、お通じが改善したという例は多い。医師にご相談を! 

オレイン酸は、日常の食事から無理なく摂取できる。重要なのは量ではなく、バランスである。四つ足の赤肉など動物性脂肪の摂取を控え目にして、魚やオリーブオイル由来の脂質を適量摂取することを心掛け、健康的な食習慣に取組みたい7)

図1 食用油の構造

図2 スプーン2杯のオリーブオイルで健康に! *総摂取エネルギーを変えずに!

〔参考資料〕
1) 「最近1ヶ年間の脂肪酸組成」 公益財団法人日本油脂検査協会 http://www.oil-kensa.or.jp/pdf/2025F.pdf  (閲覧日:2026年5月18日)
2) Update on Anti-Inflammatory Molecular Mechanisms Induced by Oleic Acid. Nutrients, 15, 224 (2023)
3) Reduction in saturated fat intake for cardiovascular disease. Cochrane Database Syst Rev, 5, CD011737 (2020)
4) Effects of dietary extra virgin olive oil on serum lipid resistance to oxidation and fatty acid composition in elderly lipidemic patients. Bratisl Lek Listy, 104, 218-221 (2003)
5) FDA Completes Review of Qualified Health Claim Petition for Oleic Acid and the Risk of Coronary Heart Disease. United States Food & Drug Administration, Nov.18th 2018
6) 「健康長寿力を引き出すオリーブオイル納豆-腸の名医が考案した便秘からがんまで遠ざける奇跡の快腸食」 松生恒夫著, ユサブル (2019) 
7) 「日本人の食事摂取基準(2025年版)総論」令和7年3月 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316460.pdf  (閲覧日:2026年5月18日)

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【第5回】 オリーブオイルの脂肪酸 ― オレイン酸の化学構造と性質 

第5回では、オリーブオイルをはじめとする食用油脂について理解を深めるために、化学構造に基づいて説明する。『化学はちょっと~』 という方もいらっしゃるかもしれないが、しばしお付き合いいただきたい。 

〔植物油と動物脂のちがい〕 

「あぶら」は、炭素(C)・水素(H)・酸素(O)から構成される化合物で、グリセロールに脂肪酸が3つ結合した構造を有する混合物である(図1)。脂肪酸には炭素の数や部分構造にちがいがあり、あぶらの性質のちがいと関連している。脂肪酸とは、複数の炭素(C)が一本につながった鎖(炭素鎖)の末端にカルボキシ基(-COOH、一般的に、この構造を有する化合物は酸とよばれる。)をもつ。炭素鎖には、炭素(C)に水素(H)が十分に結合した構造(-CH2-CH2-)と、一部の水素(H)が不足した構造(-CH=CH-、これを二重結合という。)があり、あぶらの性質に重要な役割をもつ。 

「あぶら」を表す漢字には、油と脂がある。オリーブオイルや菜種油等のような植物由来の液体のあぶらは、サンズイの油で、牛脂のような動物由来の固体のあぶらは、ニクヅキの脂で表記される。いずれの「あぶら」も、図1の構造を有しているが、植物油は、二重結合をもつ脂肪酸を多く含むのに対し、動物脂は二重結合をもたない脂肪酸を多く含むという点で大きく異なっている。二重結合をもたない脂肪酸を多く摂取していると、血液中のLDL(悪玉)コレステロールが増加し、循環器疾患(動脈硬化や心血管疾患)の発症につながることが知られている。これに対し、二重結合をもつ脂肪酸を多く含む植物由来の油を摂取していると、その一部が体内のあぶらと置き換わることで、LDLコレステロールが減少し、循環器疾患の発症リスクが低下する1)。このようなメカニズムから、一般的に、『動物脂の摂り過ぎには注意が必要で、植物油が健康によい』といわれているのである。 

〔植物油の中でもなぜオリーブオイルが健康によいのか?〕 

植物油には、オリーブオイルの他にも、菜種油、ゴマ油、えごま油等、いろいろな植物由来の油がある中で、なぜオリーブオイルが健康によいといわれているのか。これにも、植物油を構成する脂肪酸の二重結合が大きく影響している。一般的に、二重結合を複数もつ脂肪酸は、化学的に酸化分解されやすく不安定で、酸敗し劣化しやすい。菜種油、ゴマ油、えごま油等には、二重結合を複数有する脂肪酸が多く含まれるのに対し、オリーブオイルに含まれる脂肪酸の約75%は、二重結合が1つしかないオレイン酸のため2)、ほかの植物油と比較して、酸化されにくい。このように、二重結合が1つしかないオレイン酸を多く含むことが、酸化劣化しにくいというオリーブオイルの特長につながっているのである。 

次回は、オリーブオイルに含まれる天然由来の微量成分に目を向ける。 

図1 食用油の構造

〔参考資料〕
1) Reduction in saturated fat intake for cardiovascular disease. Cochrane Database Syst Rev, 5, CD011737 (2020)
2) 「最近1ヶ年間の脂肪酸組成」 公益財団法人日本油脂検査協会 http://www.oil-kensa.or.jp/pdf/2025F.pdf  (閲覧日:2026年5月18日)

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【第6回】 オリーブポリフェノール ― 天然由来微量成分の役割 

未精製のオリーブオイルには、ポリフェノールなどの天然由来の微量成分が含まれ、個性を特徴づけている。第6回では、脂肪酸以外の微量成分がもつ性質について、紹介する。 

未精製のオリーブオイルには、約99%のあぶら(グリセロールに脂肪酸が結合したもの)のほかに、天然由来成分が約1%含まれている。代表的なものが、オリーブポリフェノールである。代表格のオレウロペインには、部分構造であるヒドロキシチロソールに抗酸化作用があり、LDL(悪玉)コレステロールの酸化を防ぐ働きがある1)。 

オレウロペインは、オリーブの苦味の本体でもある2)。品種・収穫時期・搾油方法などによって変動するが、未精製のオリーブオイルには重量百分率で0.1%程度含まれている。オリーブ特有の辛みをもたらしているのは、オレオカンタールである3)。オリーブの辛みが、抗炎症薬イブプロフェンの辛みと類似していることから見出され、イブプロフェンの約50分の一の抗炎症作用を有する4)。 

オレウロペインの苦味は舌にある味蕾に発現する味覚受容体で感知される2)のに対し、オレオカンタールの辛みは喉の奥に発現する痛覚受容体で感知される5)ことから、人はこの2つを区別することができる(表1)。ちなみに喉にピリッと刺激するオレオカンタールの辛みは、唐辛子の辛さとは異なり、ワサビの辛さに近い。オレオカンタールには抗腫瘍活性があることも報告されている6,7)が、通常の摂取量で、臨床的なエビデンスが示されているわけではない。 

未精製のオリーブオイルに含まれる天然の微量成分には、ポリフェノールのほかにトリテルペン類がある。オレアノール酸は、抗炎症・抗菌作用のほか、肝臓への脂肪蓄積を抑制する肝保護作用を有する8)。スクアレンには、抗酸化作用や、肌の保湿作用があり、粘膜の炎症を鎮め、皮膚を保護する働きがある9)。スクアレンは、ヒトの皮脂に15%程度含まれ10)、加齢とともに減少する11)。 

人の皮脂の40%程度はオレイン酸であり、オレイン酸を多く含むオリーブオイルは、皮膚になじみやすい12)。オリーブオイルには、ビタミンEやポリフェノールなどの抗酸化作用を有する成分も含まれるほか、ほかのオイルにはないスクアレンを補給してくれる13)。こうした観点から、オリーブオイルは、化粧用としても医療用14)としても活用されている。 

オリーブ由来成分のうち、オレイン酸、オレアノール酸、オレウロペイン、ヒドロキシチロソールを機能性成分として含む機能性表示食品がすでに開発され、販売されている15)。科学的エビデンスにサポートされており、『オレイン酸22gには、血中の高めな悪玉(LDL)コレステロール・総コレステロールを下げる機能が報告されています。』 『オレアノール酸およびオレウロペインは、身体活動時での脂肪の消費を助けることで、肥満気味の方の体脂肪の低減に役立つことが報告されています。』 『オリーブ由来ヒドロキシチロソールは抗酸化作用により、血中のLDLコレステロールの酸化を抑制させることが報告されています。』 のように、健康機能の有用性が表示されている。 

2023年には、オリーブ由来成分を含む機能性表示食品が食品表示内容と合致しないと判断されたことから、販売休止となり、一部取下げとなった16)。オリーブ由来成分が安全性の問題を引き起こしたわけではないものの、販売が継続もしくは再開された機能性表示食品により、オリーブ含有成分に基づいて開発された機能性表示食品の有用性と安全性のエビデンスが蓄積することを期待している。 

次回は、オリーブオイルの国際基準と日本の規格について、紹介する。

 

表1 オリーブオイルの苦味と辛み

〔参考資料〕
1) Elevated Circulating LDL Phenol Levels in Men Who Consumed Virgin Rather Than Refined Olive Oil Are Associated with Less Oxidation of Plasma LDL. J Nutr, 140, 501–508 (2010)
2) Activation of specific bitter taste receptors by olive oil phenolics and secoiridoids. Sci Rep, 11, 22340 (2021)
3) A Simple High-Performance Liquid Chromatography Method for the Determination of Throat-Burning Oleocanthal with Probated Antiinflammatory Activity in Extra Virgin Olive Oils. J Agric Food Chem, 54, 3204-3208 (2006)
4) Phytochemistry: ibuprofen-like activity in extra-virgin olive oil. Nature, 437, 45-46 (2005)
5) Unusual pungency from extra-virgin olive oil is attributable to restricted spatial expression of the receptor of oleocanthal. J Neurosci, 31, 999-1009 (2011)
6) The olive oil phenolic (-)-oleocanthal modulates estrogen receptor expression in luminal breast cancer in vitro and in vivo and synergizes with tamoxifen treatment. Eur J Pharmacol, 810, 100-111 (2017)
7) Oleocanthal as a Multifunctional Anti-Cancer Agent: Mechanistic Insights, Advanced Delivery Strategies, and Synergies for Precision Oncology. Int J Mol Sci, 26, 5521 (2025)
8) Recent advances in the chemistry and biology of oleanolic acid and its derivatives. Eur J Med Chem, 276, 116619 (2024)
9) Biological importance and applications of squalene and squalane. Adv Food Nutr Res, 65, 223-233 (2012)
10) The role of sebaceous gland activity and scalp microfloral metabolism in the etiology of seborrheic dermatitis and dandruff. J Investig Dermatol Symp Proc, 10, 194-197 (2005)
11) Effects of aging on fatty acids in skin surface lipids. J Invest Dermatol, 73, 112-117 (1979)
12) 「肌老化を軽減するための新たなオリーブオイルの開発」 岸本憲人著,  J Soc Cosmet Chem Jpn, 56, 19-26 (2022)
13) Biological and pharmacological activities of squalene and related compounds: potential uses in cosmetic dermatology. Molecules, 14, 540-554 (2009)
14) 「日本薬局方 オリブ油ヤクハン 添付文書」 ヤクハン製薬株式会社(2025年11月) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/800012_7121704X1423_1_01 (閲覧日:2026年5月18日)
15) 「機能性表示食品の届出情報検索」 消費者庁 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/search/ (閲覧日:2026年5月18日)
16) 「機能性表示食品について」 消費者庁 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/ (閲覧日:2026年5月18日)

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【第7回】 オリーブオイルの品質と個性 ― 国際基準と日本の規格 

オリーブオイルには、国際的な品質基準がある。第7回では、オリーブオイルの定義、品質と魅力について紹介する。 

オリーブオイルの国際基準(表1)を定めているのは、国際オリーブ協会(International Olive Council; IOC、本部はスペインのマドリード)である1)。オリーブ果実から、圧搾・遠心分離・ろ過などの物理的手段のみにより、変性させない条件で得られた未精製のオリーブオイルをバージン・オリーブオイル(VOO)という。中でも、オイル100 g中に含まれる遊離脂肪酸(*グリセロールから外れた脂肪酸)のg 数を表す酸度が0.8以下で、官能評価をクリアしたものだけがエキストラバージン・オリーブオイル(EVOO)といわれる。EVOOは、理化学検査のほか、複数のオリーブオイル・テイスターによってランクづけされた、最高品質とされるオリーブオイルである。 

EVOOの魅力は、オリーブの実に含まれる微量の天然成分が、香りと風味をもたらし、オイルの個性を際立たせていることにある。青いトマト・アーモンド・草・ハーブ・りんごのような──などと表現される香りは、品種や産地によって大きく異なる。搾りたてのオイルは特に香りが強く、青草からフローラルな花の香りまで幅が広い。風味は、フルーティでマイルドなものから、スパイシーでストロングなものまで独特の個性がある。 

EVOOの苦味や辛みはオリーブポリフェノールに由来し、鮮度の証でもある。良質なオイルは、口の中に広がるフルーティさ、続いて味わう苦味、のどで感じる辛み、後味に加えて喉から鼻に抜ける香り(レトロネーザル)など、多様な刺激が時間差で訪れ、オリーブオイルの奥行きを楽しませてくれる。オリーブオイルは、開封して空気にさらされたり、光を浴びたりすると、酸化され劣化していくため、ボトルには色の濃い遮光瓶を使用することが多く、窒素ガスで封入することで酸素を除き、酸化や劣化を防いでいる。適切に保管されたEVOOは、3‐4年経過しても良質な風味が保たれている。 

EVOOは食材や料理との組合せによって、その存在感が際立つ。マイルドなオイルはパンとの相性がよく、小麦の香りを引き立たせ、スパイシーなオイルはステーキ肉や赤身の魚などに合い、ピリッとして素材のうま味を引き出してくれる。自分好みのオイルを選び、料理に合わせて使い分けることができたら、どれほど素敵な世界が広がるだろう。 

IOCの国際基準によれば、EVOO以外のオリーブオイルは、酸度が2.0以下ならVOO、酸度が3.3以下ならオーディナリーバージン・オリーブオイル、酸度が3.3を越えるものはランパンテバージン・オリーブオイルと分類される。ランパンテとはランプ用のという意味で、食用不適とされ、工業用途や抽出原料として用いられる。 

VOOから構造が変化しない方法で精製し得られたものがピュア・オリーブオイルである。精製の過程で天然の香りや色味、風味成分などが除かれてしまうが、同時に遊離脂肪酸も除かれるため、酸度は0.3以下と低くなる。またVOOとピュア・オリーブオイルを混ぜたもので、酸度が1.0以下のものは狭義のオリーブオイルとよばれ、ピュア・オリーブオイルとともに食用として用いられる。オリーブ果実の搾りかすをポマスといい、ポマスから化学的な抽出により得られるポマス・オイルは、食用不適であり、工業用途などに用いられる。 

日本における食用オリーブ油は、日本農林規格(JAS)2)により 『オリーブの果肉から採取した油であって、食用に適するよう処理したものをいう。』 と規定されている。オリーブ油と精製オリーブ油の区別しかなく、この2つは一般状態と酸価で分類されている。一般状態は、オリーブ油では 『オリーブ特有の香味を有し、おおむね清澄であること。』 に対し、精製オリーブ油では 『おおむね清澄で、香味良好であること。』 とされている。酸価は、国際基準の酸度とは異なり、1 gの脂肪酸を中和するのに必要なKOH量(mg)とされ、酸価 x 0.5 ≒ 酸度、である。JAS規格によれば、オリーブ油の酸価は2.0以下、精製オリーブ油は0.6以下である。 

JAS規格にEVOOの分類はないが、日本で販売されるオリーブオイルにはエキストラバージンと表示されているものが多い。こうした中、『一般消費者による自主的かつ合理的な選択及び事業者間の公正な競争を確保する』 ことを目的として、『エキストラバージンオリーブオイルの表示に関する公正競争規約』 が2023年に消費者庁に認定・告示され、国際規格と整合のとれたEVOOの食品表示に、グレード:エキストラバージン、と表示されるようになった3)。日本オリーブオイル公正取引協議会が目的達成のため、公正マーク(図1)の貼付のほか、普及・啓発に取組んでいる。 

良質なオイルは価格が高めであるが、個性を見極め、料理に合わせて好みのオイルを使い分けられるようになると、オリーブオイルの世界を楽しむことができる。次回は、オリーブオイルを日常に取入れる工夫について、紹介する。

表1 オリーブオイルの国際基準1)

表2 日本におけるJAS規格によるオリーブオイルの分類2)

図1 公正マーク3)

〔参考資料〕
1) 国際オリーブ協会, International Olive Council (IOC) https://www.internationaloliveoil.org/ (閲覧日:2026年5月18日)
2) 日本農林規格, Japanese Agricultural Standards (JAS), 農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/jas/index.html (閲覧日:2026年5月18日)
3) 「エキストラバージンオリーブオイルの表示に関する公正競争規約」 日本オリーブオイル公正取引協議会 (2022年3月) https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000247330 (閲覧日:2026年5月18日)

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【第8回】 オリーブオイルを食卓に ― 日常に取入れる工夫 

オリーブオイルは、特別な料理だけでなく、日々の食事に取入れることで、楽しみを広げることができる。第8回では、日常の食卓でオリーブオイルを楽しむ工夫について、紹介する。 

エキストラバージン・オリーブオイル(EVOO)は、料理の幅を広げてくれる万能の調味料である。前菜から主菜、デザートまで、オイルの個性を活かした多彩な料理が提供されている。前菜では、カルパッチョやサラダが定番。新鮮な魚や野菜にオイルをひと回しするだけで、香りが立ち、味に奥行きが生まれる。レモンや塩、醤油との相性もよく、シンプルな料理ほどオイルのクオリティが際立つ。オリーブオイルをパンにつけて食べるのもおすすめである。小麦に合うのは、マイルドなオイル。芳醇な香りを引き立て、おいしさを膨らませてくれる。オリーブオイルで焼いたフォカッチャには、ハーブや塩味がよく合う。 

主菜では、肉や魚のソテーにオリーブオイルをかけると、香ばしさやジューシーさが増し、料理全体の風味が豊かになる。パスタやリゾットにも欠かせない。仕上げにひと回しすると味が引き締まる。アヒージョのようにたっぷりオイルで簡単に一品となる料理もある。食材は、魚介とキノコ、エビとブロッコリーなどの組合せが定番。ニンニクやトウガラシとの相性が抜群で、箸が進む。デザートには、オリーブオイルのフルーティさが活きる。バニラアイスにかける、ケーキに使う、フルーツと合わせる、意外な組合せから、新しい美味しさの発見が楽しめる。早摘みオイルの青りんごのような香りは、デザートにピッタリ! 

オリーブオイルは、食材と組合せると、味わいが大きく変わることがある。オイルの個性を知り、素材との相性がわかってくると、料理に取入れる楽しさが広がる。オリーブオイルは、日本の食文化との相性もよく、食卓に取入れやすい。焼き魚・納豆・味噌汁・冷奴にもオリーブオイルをひと回し、日ごろの食習慣にオリーブオイルを組合せれば、新たな食の魅力が発見できる。千葉県の東金・九十九里地域は、新鮮な野菜や果物、魚介類、大豆や米などが豊富にあるので、オリーブオイルを加え、地中海食と和食・日本食のいいとこどりをして、健康食習慣を整えたい。 

『三つ子の魂百まで』 とはよくいったもので、人は子どものころから慣れ親しんだ味を美味しいと感じる。はじめてEVOOに出会った大人が、『変な味がする』 『何か入っている⁉』 と顔をしかめていることがある。良質なEVOOの風味を経験し、自分好みのオイルに出会い、食の楽しみを広げてほしい。良質なEVOOも開封後1か月もすると、空気にさらされ、光を浴びて、色味が抜け、香りも減り、味も変わってしまう。適切に保管しつつ、1‐2か月で使い切るようにしよう。 

次回は、調理におけるオリーブオイルの注意点について、紹介する。

図1 オリーブオイルを使った料理:カプレーゼ、ペペロンチーノ、アヒージョ(左から)

図2 東金・九十九里地域の食材

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【第9回】 オリーブオイルと上手につきあう ― 調理で油の劣化を防ぐ知恵 

第8回では、オリーブオイルを日常に取り入れる工夫について、紹介した。第9回では、オリーブオイルを含む食用油を用いて調理する際の注意点について、紹介する。 

オリーブオイル、菜種油、ごま油は、それぞれオリーブ、アブラナ、胡麻の果実や種子に由来する食用油である。実や種を搾るだけで得られる未精製の食用油には、原料に由来する風味や栄養素が残り、個性豊かな食用油となる。一方、精製した食用油は、未精製の油に脱酸・脱色・脱臭などの処理を施すことで、グリセロールから外れた遊離脂肪酸、色素、臭いなどを取除いてつくられる。『サラダにかけてそのまま食べられる』食用油としてサラダ油が開発されたのは、今からおよそ100年前のことである1)。 

食用油を使って加熱調理したときに、油から煙が出ることがある。風味や栄養価が損なわれ、身体に有害な物質が生成するため、煙が出ないように調理したい。遊離脂肪酸や複数の二重結合をもつ脂肪酸を多く含む食用油は、酸化されたり、加熱や食材・水分などと反応したりして、加熱したときに煙を発する原因となる。食用油を煙が出るまで加熱すると劣化するし、繰り返し使っている油は煙が出やすい。着色、臭い、粘りけなどが、劣化の指標になる。 

オリーブオイルの場合、未精製のオリーブオイルには、遊離脂肪酸や風味をもたらす低分子物質が残っているため、180℃の加熱調理で煙が出やすい(図1)。一方、精製したオリーブオイルは、煙の元となる成分が除かれており、180℃まで加熱しても煙が出にくい。食用油が煙を発する温度を発煙点といい2)、未精製オリーブオイルは160℃、精製オリーブオイルは200℃、サラダ油は205℃である3)。 

未精製のオリーブオイルには、酸化されにくい脂肪酸や、酸化を抑制するポリフェノールやビタミンEが含まれており、発煙点を越えずに用いたオリーブオイルの安定性は高い。一般に、加熱調理には精製オリーブオイル、生(なま)で食材に合わせるのは未精製オリーブオイル、といわれるが、いずれにも使えるので、食材に合わせて美味しく召し上がってほしい。 

オリーブオイルは、10℃を下回ると固まる。固化と融解を繰り返すと、オイルの劣化を早める。夏の暑さと直射日光を避けるため冷暗所に保存するが、開封後のオイルを冷蔵庫に入れ、食事のたびに冷蔵庫から出して使うのは避けたほうがよい。『良質なオリーブオイルを入手したら、一回分ごと小分けして冷凍庫に保存し、必要なだけ融解して使い切る。』という料理人もいる。冷凍することで質を保ち、解凍を1回だけにとどめて劣化を防いでいる。 

オリーブオイルの性質を理解するほど、上手に使うことができ、料理の楽しみが広がる。次回は、オリーブの実そのものを味わうテーブルオリーブについて紹介する。

図1 加熱調理したオイルのイメージ

〔参考資料〕
1) 「植物油のおいしいおはなし」pp38,『Part 6. なるほど! 油ウォッチング② 日清サラダ油は、日本のサラダ油の原点です。』 日清オイリオグループ株式会社(2025年10月) https://www.nisshin-oillio.com/story/p06-01.html (閲覧日:2026年5月18日)
2) 「油の性状と発煙点について」 家政学雑誌, 12, 309-311 (1961)
3) 「料理の科学大図鑑」  スチュアート・ファリモンド著, 日本語版監修 辻調グループ 辻静雄料理教育研究所, 熊谷玲美+渥美興子訳,pp192-197,河出書房新社(2018) 

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【第10回】 テーブルオリーブの文化 ― 果実の漬物 

オリーブの実に手を加えると、食卓を彩る果実となる。第10回では、新漬けに代表されるテーブルオリーブの文化を紹介する。 

オリーブの実をそのままかじると、渋くて苦くて食べられたものではない。地面に落ちた赤い実を、鳥が咥える姿を時々見かけるが、しばらく見ていると10メートルもしないうちに吐き捨てて、飛び去ってしまう。鳥にも美味しくないのだろう。 

オリーブの実は、搾油してオイルにするだけでなく、塩漬けや酢漬け・オイル漬けにすることでテーブルオリーブとして食卓を演出してくれる(図1)。その作り方は、非常に繊細である。オリーブの実に含まれる強い渋みを抜くには、苛性ソーダや重曹、塩水処理などさまざまな方法がある。温度管理や時間の見極めが重要で、処理しすぎれば風味がなくなり、渋みが残れば食べにくい。 

収穫したばかりの大きく育った若い実を丁寧に選果・洗浄し、渋を抜いて塩漬けに仕上げる新漬けは、オリーブの実が果実であることを実感させてくれる。果肉感を感じるとともに染み出してくるオイルからは、クリーミーなチーズを思い出させるような豊かな味わいが口いっぱいに広がる。果実のままの新漬けは、チーズやワインとの相性が抜群である。ピザに乗っているスライスがイメージしやすいが、サラダや前菜のアクセントにもなる。和食との相性もよく、漬物として楽しむこともできる。みじん切りにして白身魚に乗せ、レモン汁をかけたら、素敵なソースに早変わりする。 

テーブルオリーブには、収穫期にしか味わえない季節限定の特別感がある。市販の新漬けとは一味ちがうオリジナリティある新漬けにチャレンジしてみてほしい。ちなみに、赤黒く色づいた果実を新漬けにしようとあく抜きをすると、色が抜けて青緑色になってしまう。市販の新漬けにあるブラックオリーブは、グルコン酸第一鉄の添加によって、消費者の期待に応えるように色付けされている。 

新漬けをきっかけにオリーブに興味をもち、オイルや加工品へと関心が広がることも多い。栽培者にとっても、一年の努力が実を結び、収穫の喜びを実感できる。新漬けは、オリーブの魅力が身近に感じられる秋の贈り物である(図2)。 

ここまで第1部では、オリーブの魅力について、歴史・文化・食習慣や、オイルの成分・品質、活用・保存方法などを紹介してきた。第2部では、オリーブ栽培を始める際に準備しておきたいことや、栽培の実践などについて、紹介していく。

 

図1 オリーブの新漬け

図2 ワインのお供に

【注意喚起!】
 ご家庭で新漬けにチャレンジする際には、苛性ソーダの入手、取扱い、廃液などの処分方法などが適切に行えるように準備してから、取組んでください。目の粘膜や皮膚に触れると危険ですし、水に溶かすと熱も発生するので、要注意!