海外研修
2025.09.12
2025年度も、観光学部では、8月21日から26日までの6日間、韓国での海外研修プログラムを実施しました。(本年度は、本学の福祉総合学部の学生たちと一緒にプログラムを実施しています)
本研修における学生たちの目的は、「実地で観光資源・産業・文化などについて体験的に学ぶ」ことにあります。「実地体験をすることで、専門教育や海外長期留学への志向を高める」ことも狙いです。
研修プログラムでは、「(1) 海外協定校との交流」、「(2) 観光関連交通機関への乗車」などを経験しながら、「(3) 世界遺産」や「(4) 伝統文化の現代的な活用事例」、「(5) 研修国独自の観光ブランディング事例」について、視察を通して学びます。本年度は、この五つの学びを前提に、釜山(プサン)から韓国に入国し、安東(アンドン)という世界遺産群の広がる地域、そしてソウルを巡ります。
今回は、韓国入国三日目に釜山を離れ、安東市を視察した際の様子を学生の声を介して紹介します。とくに、安東市にある三ヶ所の世界遺産のうち(登録数としては二点)、そのうち2018年に世界遺産として認定された「韓国の書院(Seowon、Korean Neo-Confucian Academies)」群の一つである陶山書院(トサン ソウォン)と2010年に世界遺産に認定された安東・河回村(ハフェ マウル)を視察しました。また、併せて、五日目にソウルで視察をした西村韓屋村(ソチョン ハノクマウル)での学生の感想などを紹介したいと思います。
視察終了後に安東駅で集合写真
○観光学部1年 森下 空龍
韓国研修三日目は、韓国の中腹にある安東市にバスで移動しました。安東市は世界遺産に認定されている文化財や環境が多くあるため、その視察となります。
まずは、陶山書院という世界遺産を視察しました。ここは、昔の人達が住み込みで勉強をしていた場所だそうです。今でいうところの集合住宅のように、一カ所に固まって建築が建てられています。その中が棟で別れていたので、その一つ一つの棟を巡り、実際にどんな生活だったのか、何をした場所なのか説明を聞きました。
ガイドの案内のもと陶山書院の施設群を視察しました
また、ここにはとても有名な儒学者(李滉(イ・ファン))がいたらしく、その人の功績についてもお話を聞きました。その方が、子どもたちを教える私塾のようなことをしていたらしく、当時の子どもたちが、どんなものを使って勉強していたのかとか、どういう勉強をしていたか、どういう遊びをしていたのかについても学びました。今でいうところの寮のある私立の学校のような場所だったこともあって、そのうちの1つの棟が、当時の親からの寄付を募って建てたことが案内板に記されていました。試士壇という科挙試験の受験場所となったことを記念した施設も建てられていました。
ちなみに、この書院は、川や山に面しており、風光明媚な場所に立地しています。その山は、日本の山では見かけることのない松の山でした。韓国は、そもそも松の林が多いのですが、ここの山は、書院の建物を建て替える際に伐採し利用するために、赤松を昔から植えてきたからだそうです。しかし、朝鮮戦争で焼け野原になったらしく、その後は、成長速度を鑑み、黒松に植えかえたとのことでした。
しかし、私たちが視察に行く、少し前に大きな山火事があり、その黒松の森も一部が焼けてしまったとのこと。そのこともあり、陶山書院に行く道程にあった近隣地区の山は火災にあった後が見られました。黒松は、油が出るので、その影響で火が広がったのではないのかということでした。そのため、今度は、松だけではなく、他の植物も一緒に植えようという話になっているらしいです。歴史的な「もの」を残すことも重要ですが、歴史的な「環境」を維持するということはもっと難しいことだと感じました。
無料レンタルの日傘をさして松林の道を散策
そして、昼食後に、安東・河回村という場所に行きました。ここは日本の世界遺産である白川郷のように村丸ごとが世界遺産になっており、古くからある建物が点在して建っていました。その村の中を散策し、石を使った塀を見るだけでなく、建物の中の1つに入ることができました。すごく立派な場所だと思いました。
また、その一角にある博物館にも入り、当時の人達がどのような物を使って生活していたかということを学びました。また、この村が、「なぜ、河回村というのか?」についても知ることができました。それは、隣にある川がこの村の横でS時にカーブしているという理由からこの村の名前が付いたそうです。
以上、二箇所の世界遺産群を視察しましたが、ただ、その環境や建築を見て回るだけでなく、韓国の昔の人の生活を学ぶことができたことはよかったと思っています。
河回村を囲うように流れる洛東江(ナットンガン)と対岸にそびえる芙蓉台(プヨンデ)
○観光学部2年 横塚 菜摘
韓国研修三日目に行った安東・河回村は、古くからの建物をそのまま残し、歴史や伝統がそのまま語り継がれているようなそんな村でした。歴史ある大木が残っていたり、昔ながらの床暖房の設備が残っていたりして、とても興味深かったです。村の中を一周しながら、ガイドの方が話す村の歴史を聞きながら家々を巡っていく体験は、実際に歴史的な暮らしの中に入った気分になり楽しむことができます。
少しテーマパークに近いかたちの観光体験だなと感じました。昔の人々の生活を疑似体験することによって、歴史に対しての解像度が高まり、日本に帰ってきてからも鮮明に思い出すことができます。ただ、実際に住んでいる人もいるとの話を聞き、驚きました。
河回村内を散策しました
一方で、五日目に、同じように韓国・ソウルにある歴史的な村・西村韓屋村(ソチョン ハノクマウル)を視察しました。ただ、西村韓屋村は、安東・河回村と異なり、現代のお店とうまく融合されていて、若者がたくさんいる印象を抱きました。日本の京都などが歴史的な建造物を群として残していくために行っているような取り組みと似ているなと思いました。
外観は韓屋といわれる古民家のつくりなのですが、中は現代的にお客が入りやすいようアレンジしているものが多くありました。しっかりと歴史を守るために集客している工夫を見ることで、河回村との歴史的建造物の活用方法の違いを比較することができました。どちらも未来に古いものを残そうという意識が感じられ、方法は違えど、たくさんの観光客を呼び込んでいて素晴らしいと感じました。
西村韓屋村内で韓屋がどのように使われているのか調査しました
西村内にある韓屋を改装した飲食店で昼食をとりました