特集
2026.06.19
本年度、観光学部が提供する市民未来大学(大学が共有する知的資源を一般市民向けにわかりやすく提供する教育プログラム)では、「遺産」をテーマに全4回の連続講座を実施しました。
本講座では、日本およびアジアにおける文化遺産の捉え方や、それらを活用した観光振興の事例について学びました。文化遺産を単なる保存の対象としてではなく、地域の魅力や観光資源としてどのように活用していくのかという視点から、多様な事例を紹介しました。
講義内容は以下の通りです。
1.日本の観光と文化遺産
(1)日本の文化遺産に対する考え方 ― 身近なものも文化遺産になる時代の「遺産」概念とは?(金子)
「文化」や「遺産」という言葉が日本においてどのように受容され、変化してきたのかを、その語源や歴史的背景を踏まえて解説しました。また、近年文化庁が推進している「日本遺産」の取り組みについて、その制度の特徴や地域活性化への活用事例を紹介しながら、日本における新たな遺産概念について考察しました。
本年度初回の講義は「日本遺産」について学びました
(2)日本の温泉文化 ― ユネスコ無形文化遺産登録に向けて(于 航)
温泉は単なる入浴施設ではなく、湯治や地域コミュニティ、祭礼や信仰などとも関わりながら発展してきた日本独自の文化について解説しました。講義では、日本各地の温泉地の歴史や文化的特徴を紹介するとともに、現在進められているユネスコ無形文化遺産登録に向けた活動現況について紹介しました。また、温泉文化を将来へ継承するためには、文化的価値の理解だけでなく、観光資源としての活用や担い手の育成も重要であることを強調しました。
ユネスコ無形文化遺産の登録プロセスと課題などについて学びました
2.アジアの観光と文化遺産
(3)無形文化遺産を活かした観光商品づくり ― 中国の事例(于 航)
中国の事例では、無形文化遺産を活用した観光商品や体験プログラムを紹介し、文化継承と観光振興を両立させる取り組みについて学びました。また、中国の切り絵無形文化遺産継承人をオンラインで招き、切り絵体験ワークショップを実施しました。受講者は継承人から直接指導を受けながら作品制作に取り組み、無形文化遺産の魅力や文化的背景を体験的に学びました。当日は観光学部の在学生も運営補助として参加し、市民と学生がともに学ぶ交流の場となりました。

切り絵体験ワークショップを体験
(4)文化遺産を守るとは? ― 韓流ブーム時代から変わった韓国の観光(金子)
日本でも大きな人気を博した韓流ドラマによる観光ブームから、近年のK-POPを中心とした観光戦略への変化を振り返りながら、韓国の観光政策の変遷について解説しました。また、ソウル市が進める「未来遺産」制度を事例として取り上げ、現代社会においてどのようなものを次世代へ継承していくべきなのかについて考察しました。
韓国の「未来遺産」制度について学びました
本講座を通じて、受講者の皆さまには「遺産」とは過去から受け継いだものだけではなく、現在の私たちが未来へ引き継ぐべき価値を見出し、創り出していく営みでもあることを学んでいただきました。