トピック
2026.11.05

10月18日(日)、大森ゼミの学生7名が、千葉県御宿町の「ヴァイオリンの家・日本メキシコ友好の家」を訪問し、世界的に活躍して来られたヴァイオリニストの黒沼ユリ子先生*にインタビューを行いました。学生たちは、日本とメキシコの交流の歴史などを黒沼先生のご著書などから事前に学び、それぞれ質問を準備して訪問に臨みました。
黒沼先生は、長年にわたる海外生活や国際交流のご経験をもとに、メキシコの歴史・文化、先住民族の言語や文化の多様性、日本とメキシコの文化交流について、幅広くお話しくださいました。

特に、日本の報道や教育では欧米諸国の情報が中心となっており、ラテンアメリカなどの国々について知る機会が限られているというご指摘は、私たちが世界をどのような視点から見ているのかについて考えるきっかけとなりました。
また、1958年から1962年のチェコスロバキア留学のご経験から、当時の社会主義と資本主義という異なる政治・社会体制や、外国から見た日本についてもお話しいただきました。

館内では、メキシコ壁画運動に参加した日本人画家・北川民次の活動や、日本文化の影響を受けたメキシコの建築家のこと、世界各国の楽器や工芸品なども紹介していただきました。



今回の訪問は、学生たちが日頃取り組んでいる学びとも深く結びつくものでした。
黒沼先生からは、日本では「メキシコ」という呼び名が使われている一方、現地では「メヒコ」と発音されることを例に、私たちが英語を介して外国の文化を捉える傾向があることについて問題提起をいただきました。
さらに、日本人自身が外国語で自国を表す際に、「JAPAN」と言っているのを「可笑しい」と思いませんかとの問いかけに、私たちが普段何気なく使っている国名について、改めて考えるきっかけとなりました。
今年度のゼミでは、メキシコ系アメリカ文学の作品を読み、移民や文化的アイデンティティについて考えましたので、こうしたお話は、授業で読んだ作品のテーマとも重なるものであり、言語と文化的アイデンティティの関係について、さらに考えを深める機会となりました。
また、スペイン語やチェコ語を履修する学生にとっては、それぞれの言語が使われる地域の歴史や文化について、実際に現地で生活し、その言語を使いながら生活されて来られた黒沼先生から直接お話を伺う貴重な機会となりました。
参加した留学生たちは、自身も日本で日々異文化交流を経験していることから、国や文化の異なる人々が互いに理解し合うために大切なことについて質問しました。黒沼先生からは、先入観を持たずに相手と向き合うことや、相手を思いやる優しい心を持つことの大切さについてお話を伺いました。
また、少数民族の問題に関心を持つ留学生からは、メキシコの先住民族の言語や文化がどのように継承されているかについて質問がありました。黒沼先生は、ご自身が創作された児童書がスペイン語と先住民族の言語の一つであるララムリ語に翻訳され、子どもたちの言語学習に活用されていることなどを紹介してくださいました。

こうしたやり取りを通して、学生たちは、異なる文化を尊重し、互いに理解し合うことの大切さや、言語・文化の多様性を守り、次世代へ継承していくことの重要性についても考えを深めました。
今後は、インタビューの内容やそこから得られた学びを整理・考察し、11月7日(土)・8日(日)の大学祭での展示や、11月末の成果発表につなげていきます。
黒沼ユリ子先生、このたびは貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。また、訪問前にはご著書『御宿日記』や、先生が出演されたテレビ番組を収録したDVD、訪問後には絵本のスペイン語版とララムリ語版までお送りいただき、学びを深めるための貴重な資料を数多くご提供くださったことに、心より感謝申し上げます。
今回のお話を通して、改めて世界の広さと多様性を知り、さまざまなことに関心を持つことや、これまで当たり前だと思っていたことにも疑問を持つことの大切さに気づきました。先生からいただいた「世界は広い」というお言葉を大切にしながら、これからも身近な地域から世界のさまざまな国や地域へと視野を広げ、異なる文化への理解を深めていきたいと思います。

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1940年 |
東京生まれ。 |
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1956年 |
日本音楽コンクールヴァイオリン部門第1位特賞。 |
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1958年 |
桐朋学園音楽科在学中にプラハ音楽芸術アカデミーへ留学。 |
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1962年 |
プラハ音楽芸術アカデミーを栄誉賞付で卒業。 |
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1971年 |
チェコ演奏芸術家賞を受賞。 |
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1980年 |
メキシコ・シティに「アカデミア・ユリコ・クロヌマ」を創設。 |
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1986年 |
メキシコ政府より「アギラ・アステカ」勲章を贈られる。 |
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2005年 |
メキシコの「セルバンティーノ国際芸術祭」において、團伊玖磨作曲のオペラ『夕鶴』のメキシコ初演に携わる。メキシコ人歌手による原語(日本語)での上演を実現。 |
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2008年 |
メキシコ人歌手によるオペラ『夕鶴』の日本公演を実現し、音楽総監督を務める。メキシコ人歌手による日本語での歌唱と演技を通して、メキシコ声楽界の高い実力を日本に紹介。 |
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2014年 |
日本へ帰国。千葉県御宿に居を構える。 |
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2016年 |
故郷・御宿での公演を最後にヴァイオリニストとしての現役引退を表明。 |
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著作は継続中。 |
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『メキシコからの手紙―インディヘナの中で考えたこと―』 |
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『メキシコの輝き―コヨアカンに暮らして』 |
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『メキシコのわが家へようこそ』 |
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『ドヴォルジャーク その人と音楽・祖国』 |
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『黒沼ユリ子の「おんじゅく日記」~ヴァイオリンの家から~』 |
黒沼先生は、国内外で数多くの録音を残され、15枚以上のLPレコードを制作されました。そのうち3枚が「レコード・アカデミー賞」を受賞しています。プラハやメキシコでも録音活動を行われ、CD『チェコ・ヴァイオリン音楽選』『わが心のメキシコ』、DVD『TVの中の黒沼ユリ子』など、多くの演奏・映像記録を残されています。