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【留学体験インタビュー:鶴岡杏樹さん】

留学

2023.10.27

アイルランド留学中に、友人の誕生日を祝うパーティーに参加した鶴岡杏樹さん(左から4番目)

アイルランドでの留学生活を2023年5月に終えた鶴岡杏樹さんは、高校を卒業してから本学に入学する前も、オーストラリアで語学留学をしていました。2度の留学を通して「語学だけでなく、その国の歴史や文化を学んでから現地へ行けばよかったと感じています」と話す鶴岡さんに、現地での思い出や後輩へのアドバイスを聞きました。

最初の難関は友人作り

鶴岡さんは2年の秋学期から、アイルランドにあるリムリック大学へ留学しました。アイルランドはイギリス諸島の西側に位置する島国で、リムリックは南西部に位置する国内第三の都市。首都のダブリンからは電車で約2時間ほどです。ここへの留学を決めた理由は、以前からヨーロッパの文化に興味にあったことに加え、入学前に留学していたオーストラリアで出会った友人に、ヨーロッパ出身者が多かったことだそうです。

最初の3か月間で一番苦労したのは友人作りで、「オーストラリアとのギャップに悩みました」という鶴岡さん。「オーストラリアではフレンドリーなタイプの人が多かったので、すぐに打ち解けることができました。アイルランドでも最初は同じ感覚でいろいろな人に声をかけたのですが、妙な壁を感じました」。その壁を乗り越えるきっかけとなったのは、ビリヤードだったそうです。「ビリヤードが人気を集めていたのですが、私も好きだったので、仲間に加えてもらい、一緒にプレーしました。するとすぐに仲良くなれて、それからは毎週のように遊んでいました」と懐かしそうに振り返ってくれました。さらに、「中国を中心にアジアからの留学生がたくさんいたオーストラリアと違って、リムリック大学の留学生はスペイン、ドイツ、フランスなどの出身者が多く、アジアの学生との接点が少ないことも、壁を感じた一因かもしれません」と、鶴岡さんは改めて当時の状況を見つめ直していました。

また、政治的、歴史的背景から、特定の国の人と距離を置こうとする人たちもいて、複雑な側面も感じたそうです。そんな中でも鶴岡さん自身は、「政治から未来のことまで、さまざまな国の人たちと深い話がたくさんできました」と言います。「ウクライナ出身の学生とも友人になりました。留学前に通学していたという大学の写真を見せてもらいましたが、ロシアによる侵攻後は荒れ地と化し、本当に悲惨な状況になっていました。何か声をかけたかったのですが、かける言葉が見つからなかったです」と、目を伏せながら語ってくれました。

リムリック大学の外観

川も流れる自然豊かなキャンパス

手書きノートは既に「絶滅」

リムリック大学のキャンパスは本学千葉東金キャンパスの約3倍もあり、とても広大です。敷地内に寮が四棟あり、鶴岡さんはその一つで生活していたのですが「教室がある棟まで徒歩10分はかかりました」というほどです。川まで流れているなどキャンパス全体が大きな公園のようで、散歩を楽しむ一般の方も多くいたそうです。

そんな恵まれた環境のなか、授業に初めて参加したときに鶴岡さんが気づいたのは、この大学の学生は手書きでメモを取らないということでした。「全員パソコンかタブレットでメモを取っていて、教員からも紙の資料配布はほとんどなく、パワーポイントを使って講義をしていました。日本ではまだまだノートに手書きする学生が多いので、新鮮でした」

ここで学ぶ学生は専攻を問わずどの科目でも受講できますが、年間で選択できるのは4、5コマです。経済学に力を入れている大学なので、鶴岡さんはマーケティングマネジメントや社会組織学などを選択しました。アジア圏出身が学生は少ないだけでなく、留学生が鶴岡さんひとりだけという授業もあったそうです。「少人数でのグループディスカッションがあったのですが、どの学生もコミュニケーション能力が優れていることに加え、分析力が高いことに驚きました。例えば『貴方から見たアイルランドはどんな国?』『ペプシコーラとコカ・コーラにはどんな違いがある?』などといった議題に対し、それぞれが自分なりの理解を整理し、論理立てて説明するですが、そのどれもが素晴らしい内容でした。そういう場に慣れていない自分には本当に難しかったです」と授業での苦労を話してくれました。分析力が高いのは「さまざまな国からの移住者が多いので、学生たちも幼少期から他の国に関心を持ったり、自分たちの文化と比較したりして育つ過程で、考える力が自然と養われるのではと感じました」と鶴岡さんなりの見解を述べてくれました。

授業の中で、日本のハロウィンについてプレゼンテーションする鶴岡さん(右から2番目)

「何語を話せるか」より「何を話したいか」

鶴岡さんは本学入学前にワーキングホリデー制度を利用し、オーストラリアのタスマニアで仕事をしながら英語を勉強していました。新型コロナウイルスが流行し始めたことをきっかけに帰国を余儀なくされましたが、英語にはある程度の自信があり、アイルランドでの生活にも不安はあまりなかったそうです。ですが、現地に着いたとたん「完全に鼻をへし折られました」と苦笑します。「語学ができるだけでは、会話はできません。留学前にその国の歴史を勉強したり、最近の出来事も調べたりしておけば、それを話題にすることができます。同時に、日本の歴史、文化などの勉強も必須です。日本のことを聞かれても答えられなかったことが、今でも恥ずかしい記憶として残っています」と、これから留学を考えている後輩たちにアドバイスをしてくれました。

帰国後、本学でさらなる語学力のアップを目指しながら、独学でプログラミングを学んでいる鶴岡さん。理由はリムリック大学の学生たちが、パソコンのスキルが高く、日本では「凄い」と思われることを当たり前のようにこなしている様子に影響されたそうです。「アイルランドへの留学を経験して、自分の視野が一気に広がったとともに、いかに固定観念に囚われているのかに気づかされました」と話します。卒業後は、海外に事業展開している日系企業または外資系企業で日本のために働きたいとの思いを一層強くしており、将来に向かって、日々努力を続けています。