30周年記念事業
2022.11.17
日本の医療保険制度について、歯切れよく説明する鴨下一郎氏
特命教授の辞令を手にする鴨下氏(中)を囲む上原明理事長(右)と杉林堅次学長
医療の担い手を目指す学生たちを対象とした講演会「日本の医療費と医療の在り方について~政治家としての視点で」を11月17日、千葉東金キャンパスで開きました。前衆院議員で、ストレス研究を専門とする医学博士でもある鴨下一郎氏を講師に迎え、創立30周年記念事業として展開している「Lecture Series」の一環としての実施となりました。
講演会場には看護学部、福祉総合学部、薬学部の学生計320名が集まったほか、姉妹大学である城西大学ともオンラインで結び、薬学部の学生が視聴しました。冒頭、本学の運営母体である学校法人城西大学の上原明理事長が、医療をはじめとする社会保障制度改革における鴨下氏の功績を紹介し「看護師や薬剤師の国家試験に合格することを目的とせず、どうすれば社会に貢献できるかを学んでほしい。これから先の人生の夢と志に向けて、問題をどう捉えるかを、これから伺う話を参考にして考えてください」と、学生たちに語りかけました。
続いて、杉林堅次学長が「医療職を目指す皆さんは、目標を達成したときには医療費から報酬を得る立場となる。高齢化が進む日本では社会保障をどう維持していくかが大きな問題となっており、医療に携わるからには医療保険制度をきちんと理解する必要がある。この講演会を機に、しっかり勉強してください」と述べました。
鴨下氏はまず、「国民皆保険制度」について「国民みんなが保険証一枚で全国どこの医療機関も自由に選んで受診できる。高額な費用がかかっても支払いは最高8万円ですむ。これほど優れた制度は日本にしかありません」と、誇るべき特徴をスライドを用いて分かりやすく説明。その一方で、高齢化や医療の高度化、ニーズの多様化によって医療保険の財源が逼迫しており、制度をどう維持していくかが問題となっていることを示しました。その解決策として鴨下氏は、OTC薬(一般用医薬品)の活用によるセルフメディケーション(自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること)を挙げ、「その推進に寄与するのが薬剤師だ」と指摘しました。
さらに、これから医療に関わろうとする人たちに求められるものとして、「デジタルヘルス」と「タスク・シフティング(医師の指示下で医療行為の一部を看護師らに移管すること)」への対応を挙げました。「オンライン診療の普及はこれからの医療全体を大きく変えていく。それに伴い、看護師や薬剤師の役割が重要度を増し、業務内容も広がっていく」と医療現場の今後について言及し、そういう変化の中で自分がどのように働き、生きていくかを今からきちんと考えておくことの大切さを説きました。
最後に患者へのケアについても触れ、「一人ひとりいろいろな価値観がある。最期まで延命治療をしてほしいか、それとも自宅に戻って過ごしたいか。そうした意志を敏感に感じ、受けとめられる医療者になってほしい」と、いつの時代でも変わらない思いやる気持ちの大切を強調されました。
質疑応答では、「健康リテラシーをどうやって身につければいいか」「医療職に必要とされるデジタル技術とは」などの問いが寄せられ、一つひとつに丁寧に答えていただきました。
また、講演会に先立ち城西国際大学特命教授の称号が杉林学長から鴨下氏に授与されました。