ハンガリー研修
2025.09.06
外傷救急に関する講義、救急救命科の見学、そして二次救命処置(ALS:Advanced Life Support)に関する研修を受けました。特に、外傷初期診療の国際的な標準プログラムである ATLS(Advanced Trauma Life Support) を学ぶことで、外傷患者に対する看護師の役割を再確認することができました。
外傷は大きく「単発外傷」と「多発外傷」に分けられ、多発外傷患者には ATLS に基づいた初期診療が行われます。ATLSは本来医師向けに開発されたものですが、看護師も初期対応において重要な役割を担います。診療は 第1次診察 → 第2次診察 → 第3次診察 の順に進み、初期対応では ABCDE に基づく評価が行われます。
ccA(Airway with cervical spine protection & Control of external bleeding/気道確保・頸椎保護・外出血コントロール)
B(Breathing/呼吸の評価):胸郭や頸部の動き、SpO₂測定、酸素投与
C(Circulation/循環の評価):皮膚の観察、CRT(Capillary Refill Time=毛細血管再充満時間)、脈拍・血圧のモニタリング
D(Disability/神経学的評価):瞳孔径、GCS(Glasgow Coma Scale)、四肢の運動・感覚
E(Exposure & Environment/全身観察と体温管理):衣服を脱がせて全身を観察し、必要に応じて体温調節
また、生命を直ちに脅かす病態である 緊張性気胸(Tension Pneumothorax, 略:Tension PTX) についても学びました。これは肺や心臓が圧迫されて呼吸不全やショックを引き起こす状態で、放置すれば致死的となるため、胸腔穿刺やドレナージといった迅速な緊急処置が必要です。
救急現場で看護師が意識すべき点として、(1)自分の作業に集中し明確に声を出すこと、(2)患者への声かけははっきり行うこと、(3)反応を必ず確認すること、(4)多職種チームで正確に情報共有すること、が強調されました。
救急救命科では、1日あたり約200人の患者が来院し、そのうち約35%が事故による外傷患者でした。また、術後管理を行う病棟には100床のベッドがあり、外傷患者だけでなく遺伝性疾患や精神疾患の患者も入院していました。印象的だったのは、35床を3~4名の看護師でケアしていた という点です。
ALS研修では、気道確保の基本、ラリンジアルマスクの使用法、そして マニュアル式除細動器(Manual Defibrillator) の使用方法について学びました。除細動器は不整脈以外で用いると危険があるため、適応を正しく判断することが重要です。さらに、電気ショックを行う際には「離れてください」と声をかけ、周囲の安全を確認することの大切さを改めて理解しました。