第15回ど・ゼミ~関係人口を増やすための接点づくり~

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 9月4日(土)、「まちづくり」「まちおこし」に関する企画や運営といった仕事に日々従事している“その道のプロ”をお招きし、月1回のペースで開催する自主ゼミ(大学の授業外で学生たちが自主的に行うゼミ活動)の第15回目を実施しました。
観光学部からも、オンラインで2名の学生と教員1名が参加しました。また、今回はオンデマンドで8名の学生も参加しました。

 今回は、自主ゼミ「ど・ゼミ」として勉強会を実施しましたが、「行政が施行する地域政策や政策に伴う整備がどのように進められているのかということを、行政職員の方々にご紹介いただく自主ゼミ「まる行(行政が行う地域政策まるわかり研究会)(以下、まる行)」」の橋渡し役となる活動をされている方にご登壇いただきました。

 その第15回目の“その道のプロ”は、Jターンで北海道の上士幌町に移り住み、地域おこし協力隊として活躍する辻彩香さんです。
 辻さんが日頃から関わられているシェアオフィスの管理・運営を中心に、関係人口創出のためのいろいろな課題とその課題を乗り越えるための取り組みについてお話しいただきました。
 学生たちは、地域おこし協力隊の制度や活動を知るだけでなく、地域おこし協力隊を介した地域の活性化とその可能性について知ることができました。とくに、これまでの行政職員だけでは難しい活動(遠隔地にある企業との連携事業や新規事業の開拓など)の担い手としても活躍できる職能について、改めて理解を深めることができました。
 

 

町の事業者と町外の事業者をつなぐ縁ハンスPROJECT


●観光学部2年 深川雄平
 私は、観光を取り巻くワーケーションやシェアハウスについて、自分で調査したことや今後の展望など、自分のSNSで記事を書くことを日頃から行っています。そのこともあり、今回の自主ゼミ「ど・ゼミ」で語られるテーマに興味を惹かれ、初めて参加させていただきました。

 今回は、上士幌町役場の地域おこし協力隊としてご活躍されている辻さんから上記のようなお話をしていただきました。とくに、ワーケーションやシェアハウスとも親和性のあるシェアオフィスの運営に関するお話は、興味深く聞かせていただきました。
 皆さんもご存知の通り、最近は、コロナ禍の煽りを受け、シェアオフィスの需要が高まっています。その影響で、シェアオフィス産業の運営に携わる企業間の競争も激しいことを伝え聞いています。また、こうした状況の渦中では、シェアオフィスを維持させていくために、他のシェアオフィスとは差異化を図る必要があり、都会では味わえない景色や非日常を味わうだけのシェアオフィスでは生き残るが難しくなってきているとのことは、いろいろな調査を通して知っていました。

 そんなことを個人的に調べていた最中だったので、今回の「かみしほろシェアOFFICE」のご紹介は興味深く感じました。とくに、「かみしほろシェアOFFICE」のコンセプトが、「関係人口を増やす」ことだったところに注目しました。シェアオフィスで「関係人口を増やす」というのは、あまり聞いたことがないのではないでしょうか。私は、そのコンセプトを聞いた時点で、「差異化が出来ている!!」と感じました。
 単なるリモートワークの現場としてのシェアオフィス利用だけでなく、シェアオフィスを介して、地域事業者と首都圏の企業をビジネスパートナーとしてマッチングしたり、農業などを中心に地元生産者と首都圏企業でコラボ商品の開発をするための場としても利用してもらい、活発なコミュニティー基盤を創ることで関係人口を増やそうという試みでした。しかし、より深く交流するためには、1日だけでは足りません。そこで、株式会社MUJI HOUSEが提供している「無印良品の家」を、ワーケーション施設として利用する活動にも取り組むとのことでした。
 以上のような、シェアオフィスが核となり、関係人口創出など地域創生に繋がる活動をされている上士幌町の取り組みは、他のシェアオフィスと比べて非常に魅力があり、無限に可能性があるシェアオフィスになるのではないかと思いました。
こうした魅力的な活動の話を伺うと、企画や運営などの点で、私達学生にも携わらせていただきたいという気持ちになりました。
 

「かみしほろシェアOFFICE」の外観
 

「かみしほろシェアOFFICE」での打ち合わせの様子


●観光学部3年 髙橋昴哉
 今回の自主ゼミ「ど・ゼミ」では、北海道上士幌町役場の地域おこし協力隊として活躍されている辻さんにお話をしていただきました。
 北海道上士幌町は人口が5,000人ほどの町で、町内の約76%が森林地帯というとても自然豊かな町だそうです。日本一広い牧場として有名なナイタイ高原牧場があり、畑作、酪農、農業や林業が盛んな町でもあります。そんな自然豊かな町で、東京からJターンし、地域おこし協力隊として働く辻さんは、「かみしほろシェアOFFICE」の管理・運営業務や「無印良品の家」を利用したワーケーション施設の企画立案に携わることで関係人口創出に取り組んでいらっしゃいます。

 ちなみに、私が、今回のお話で、興味深いと思ったことは二つあります。
 一つ目は、「かみしほろシェアOFFICE」や「無印良品の家」といった施設を利用する利用客に関するターゲット設定についてです。上士幌町では、こうした施設の利用者のターゲットを首都圏で働く方々に設定していました。自然豊かな田舎の暮らしや風景は、首都圏の都市では味わうことができないので、そこへアプローチをかけているとのことでした。そして、その首都圏から来た人々と地元の人々が「交流」する機会を積極的に設け、関係人口の創出を図っているそうです。とくに、「交流」といっても、婚活イベントのような交流イベントをするわけではありません。ここで行われている「縁ハンスPROJECT」というプロジェクトがあり、上士幌町のもともとの産業(豆やジャガイモ、ブランド牛(ナイタイ和牛)など)を他都府県に発信し、仕事化する活動である点に興味を惹かれました。
 二つ目は、「無印良品の家」を利用して実践しようとしている、働き(work)ながら休暇(vacation)を楽しむワーケーションのプログラムについてです。vacationは、私たちが学んでいる観光と言い換えてもいいと思うので、「どのように働きながら観光を楽しむのか?」と想像してみました。ただ、私は、まだ学生なのでワーケーションのworkの部分の経験がありません。なので、このワーケーションを楽しむ人はどのように仕事をしているのかが全く想像がつきませんでした。しかし、ここでワーケーションの本質をわからないままにしておくのではなく、観光人材にとっては新しい仕事拡張のチャンスだと奮起し、今回の話をきっかけに、「ワーケーションがどのようなものなのか?」ということを知る必要があると思いました。それが、どのような形で実現するかはわかりませんが、学生がワーケーションを実際に体験できるような企画ができたら面白いなと考えています。そうすることで、地方都市の観光人材不足を補うことができないかと願うからです。それほど簡単に叶うことではないのですが、私は、行政やまちづくりの仕事に興味があるので、上記のような企画ができるようゼミ活動の中で挑戦してみたいなと思います。
 

縁ハンスPROJECTでのやりとりのイメージ

 

上士幌町と無印良品の家が協同で整備しているワーケーション施設


●環境社会学部4年 蜂谷 主
 今回は、北海道上士幌町で地域おこし協力隊として活動されている辻さんにご登壇いただきました。この自主ゼミに最初から関わってきましたが、初めて、地域づくり、まちづくりの最前線で活躍されている地域おこし協力隊に携わる方のお話を聞く機会を得ることができました。

 私は、地域おこし協力隊という働き方とは、地域から依頼のあった活動を支援するサポーターとしての役割が大きいのかなと思っていましたが、それだけではなく、辻さんは行政の方々とともに多くの企画をされており、驚くことが多かったです。
とくに、上士幌町が取り組む、地域活性化を目指した「縁ハンスPROJECT」(https://kamishihoro-enhance.biz/)という取り組みに興味を惹かれました。
 一方で、地域の事情を私たちがよく理解していないのでわからないこともあり、多くの疑問が浮かぶ活動についてのお話であったため、とても印象に残っています。そこで、自主ゼミ後、私は、いくつかの質問を文面で投げかけたところ、快く解答いただきましたので紹介したいと思います。

下記、辻さんにお送りした「縁ハンスPROJECT」の内容に関する質問と回答です。 

Q1. 「町外の企業に積極的にお声がけし、地域の企業と事業マッチングさせることを起点に、関係人口を生み出そうとしている」というお話でした。
ただ、企業と連携した事業を行う上士幌町固有の農家さんなどの事業主を町外に輩出する一方で、そのことで経済的な格差が生まれ、地域に根付いている事業主間の序列を作ってしまう原因になってしまうのではないでしょうか?

A1. 上士幌町の農家さん(北海道の農家)は大規模農業で、決まった量を毎年作って農協に卸しています。そのこともあり、収入に困っている人は、ほとんどいません。収入面では+アルファで、新しいことを始める必要もない方が多いです。なので、縁ハンスPROJECTが始まって1年が経ちましたが、今の段階ではこのプロジェクトがきっかけでの経済的な格差というものは生まれていないです。
ただ、「プロジェクトに参加された○○さんは、何やらすごいことに関わっているようにみえ、遠い存在になってしまった...」という声も届いています。
とはいえ、上士幌町としては、町の基盤産業になる事業を産んでいきたいと考えているので、今後は、いかにして町内事業者の方にこのようなプロジェクトに参加するモチベーションを持ってもらえるよう呼びかけるのかが課題です。 その点が改善されれば、プロジェクトに参加していただく方が今より増えていくと考えています。

 

Q2. 町外の方と事業マッチングを積極的に行い上士幌町と関わりのある企業が増える一方で、町内の企業同士の横のつながりを生むために取り組んでいることはありますか?
A2. 「この方とつながりたい!」という要望があれば、私が可能な限り紹介するようにしています。そもそも人口が5,000人という小さな町で、顔が見える関係性というところがあるので、勝手に自然といろいろな方と繋がっていることが多いです。無理してつなげようとしない方がうまくいくこともあるかもしれません。
 

Q3. 新規に関わることになる町外の企業コミュニティを、地域住民のコミュニティとどうやって共存させていこうと思われていますか?

A3. 新しくできる企業滞在型交流施設(ワーケーション施設)では、 新規に関わることになる企業主催で、住民を巻き込んだイベントを開催予定です。 また、町内の事業者に集まってもらい、そこでマルシェをするという案もあります。このように、私たちも町外から来た方が地域と関わる接点を作っていく必要があると考えています。
 

Q4. では、逆に、新規に関わることになる町外の企業が、上士幌町への帰属意識を高めるためにしていることはありますか?

A4. 「縁ハンスPROJECT」もその一つですが、 上士幌町では、ふるさと納税に寄付をいただいた方向けに、「上士幌まるごと見本市」という上士幌町の魅力を体験できるイベントを、毎年東京で開催しています。 
今年は、コロナ禍ということもあり、オンラインでの開催となりましたが、町とのご縁ができた方に対して、上士幌町との関わりを継続してもってもらえるように、このようなイベント等の取り組みを積極的に行っています。

とのことでした。
 以上となりますが、私は、今回の講義で初めて町外企業と町内事業者の仲介を役場が担うまちの活性化という事例に直接触れることができ、とても勉強になりました。私たち学生がまちづくりやまちおこしを考える上では、少し大きな事業だと感じましたが、卒後の活動などに活かしていければと考えます。そのためにも、参加学生一同で、他の地域にも同様の活動があるのか情報を集めてみたいと思いました。

 

縁ハンスPROJECTで成立した商品

コロナ禍前の「上士幌まるごと見本市」で開催されたバーチャル上士幌案内