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実証実験 「ラストワンマイルまでスモールモビリティに乗車したまま観光を行うことは可能か?」

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 「ラストワンマイルまでスモールモビリティに乗車したまま観光を行うことは可能か?」ということをテーマに、株式会社北信越地域資源研究所様のご協力のもと、新潟県上越市を対象地とし、8月28日に「健常者による電動車椅子の観光利用」に関する実証実験を行いました。本当は、金子ゼミのゼミ旅行を兼ねた実証実験となる予定でしたが、新型コロナ禍ということもあり、蔓延防止対策としてワクチン接種を実施した者のみの参加となりました。

 今回は、その実証実験に先駆け、WHILL(ウィル)株式会社 日本事業本部営業部の小林隼人様をお招きし、オンラインでご講演いただきましたので、その際の記録と感想を観光学部webに報告記事として掲載します。また、実証実験当日の調査報告と感想も併せての掲載となります。

 

上越市内を走行中:古い町並みを走る際の課題調査

 

●金子ゼミ3年 髙橋昂哉
 私たちは、ゼミ活動において、8月28日から30日までの3日間をかけて、WHILL株式会社様ご協力のもと、WHILLの観光利用について実証実験を新潟県の上越市で行う予定でした。ですが、新型コロナウイルス感染拡大防止として、ゼミ全体での実証実験は延期というかたちを取ることを判断しました。

 ただ、実証実験に先駆けて行う予定だった試乗の際にお話いただく内容(WHILL自体の性能や利用にあたっての規約、企業としての取り組みなど)について、8月26日にWHILL株式会社の小林様にオンラインでお話しいただきました。
 まず、印象に残ったお話は、WHILLは、「日常生活におけるラストワンマイルをつなげる最後のピースとして活用してもらうことを目標としている」との一言でした。さらには、電動車椅子の本来の機能的な側面としての活用だけでなく、誰でも使えるポジティブなツールとしても普及させたいとのことでした。私たちのゼミが考えている「健常者による電動車椅子の観光利用」という実証実験も、利用対象者は異なりますが、同じことを目標として考えていたからです。

 ちなみに、私は、WHILLが小さな車体にも関わらず、操作性の向上などの点で多くの機能を搭載していることに興味を持ちました。
 ただ、同時に、この特徴を理解した上で、私は、「今後、WHILLは、小型化だけでなく、大型化の展開を検討しているのでしょうか?」という質問をさせていただきました。観光で利用するにあたり、日本人だけでなく多くの人に利用してもらいたいと考えるからです。その回答は、「大型化、小型化どちらも検討中」ということでした。WHILLは、日本だけでなく海外にも展開しているとのことで、「現在、115kgの方まで乗ることが可能」な作りとなっているそうですが、「海外向けは規格が異なるため、日本で販売している製品よりも耐荷重性能が高くなっている」とのことでした。

 そして、学生からの質問後に、「折り畳みができるパーソナルモビリティとしても検討中(model Fとして現在販売が開始されたようです)」というお話がありました。こうした折りたたみ機能が付加され搬送が容易にできるようになることで、健常者が、公共交通機関で利用する上でのハードルが下がってくると、観光での利用も促進されていいなと思いました。

 こうしたお話を聞くことで、WHILLの観光利用についてさらに考えを深めていきたいと思うようになりました。新型コロナ禍が落ち着き、ゼミ生全員で有意義な実証実験が行えればいいなと思っています。
 

小林さんにレクチャーを受ける

 

●金子ゼミ3年 佐藤 淳也
 私たち金子ゼミが夏休みに行おうとしていた実証実験は延期となりましたが、実験に先駆け、「WHILL」の概要についてWHILL株式会社の小林様をお招きし、ご講演いただきました。講演では、会社としての理念や目指すべきところ、「WHILL」の性能についてお話しいただき、とても興味深く聞くことができました。実験の前に、こういったお話を伺うことができたのは大変良い経験となりました。

 その講演後の質疑応答の際に、「「WHILL」を世に広めていく際に、どのような「WHILL」の強みを出していくのか?」という質問をさせていただきました。
この質問の回答として、「強みは、高性能で屋内でも利用が可能」な点を挙げられていました。私は、この回答を聞き、屋内利用が可能なところは、「WHILL」の大きな強みで良さだと改めて感じました。足の不自由な方が電動車椅子で目当ての施設を来訪した場合、入館するに際して、駐輪場に電動車椅子を停めて、館内用の手漕ぎ車椅子に乗り換えるか歩かなくてはいけないからです。ただ、観光に利用することを考えると、屋内の食事処や観光施設に立ち寄るケースは数多くあるので、こうした乗り換えは、手間ではないかと考えたこともあり、屋内利用が可能なところが「WHILL」の大きなメリットだと感じた次第です。さらに言うと、こうした健常者や障がい者を区別することの無い空間的な配慮が、車椅子を観光利用する際には必要になると思いました。

 この講演でのお話を参考とし、電動車椅子を観光利用するにあたってのメリットや課題、改善点、対策などについて、ゼミ生みんなで話し合って実証実験に取り組みたいと思います。そして、この講演の冒頭に、「数日前にメディアで放映されたパラリンピックの開会式にもWHILLを利用している選手の姿が映るなど、いろいろなところで注目を集めているスモールモビリティである」と説明を受けましたが、私たちも今後の実証実験を通してメディアにアピールし、「健常者による電動車椅子の観光利用」を普及促進していければと思いました。

 

直江津駅の改札を通過している際の様子

 

●金子ゼミ3年 井上裕貴(ゼミリーダー)
 私たち金子ゼミは、8月28日から30日の3日間、新潟県上越市で実証実験を行う予定でした。内容としましては、WHILL株式会社様ご協力のもと、電動車椅子WHILLの観光利用の可能性について検証する予定でした。しかし、新型コロナウイルスに対応した緊急事態宣言発令に伴い、ゼミ生全員での実証実験参加を断念することとなりました。そのため、実証実験に先駆けて行う予定だった試乗会も実施しないこととなったため、その際にお話いただく予定だったWHILL株式会社の取り組みや電動車椅子の性能に関するお話をオンラインにて伺いました。
 今回のご講演を通して、とくに印象に残ったことは、「電動車椅子を日常生活で使う一つのツールとして普及していきたい」という内容でした。私たちとしても「健常者が電動車椅子を観光に利用できるようにしたい」と考えているので、互いの電動車椅子の利用に際し近いことを考えていると感じました。

 また、「電動車椅子を日常生活で使う一つのツール」として、「電車(新幹線なども含む)や空港といった場を移動する手段としても利用を検討している」というお話があり、印象に残りました。とくに、実際、羽田空港では実証実験が行われ、利用されているということに驚きました。しかし、その一方で、私たちが考えているように健常者が電動車椅子を利用する場合、「健常者が電動車椅子を利用することへの周辺の方々の理解」などの点を今後の課題としなければいけないこともわかり、改めて考えるきっかけをいただきました。

 最後になりますが、小林様も、「まだまだ、本社の活動も広まっているとは言えない」というお話をされていましたので、新型コロナウイルス感染拡大の状況が落ちついてから、ゼミ生全員で健常者による電動車椅子の観光利用に関する実証実験を行い、世の中の皆様の理解を深めていければと考えます。

 

実証実験の支援をしてくれた北信越地域資源研究所の平原さんに指導を受ける

 

●金子ゼミ4年 丸山ケン太
 去る8月28日に、日帰りで新潟県上越市、とくに、上越妙高駅前拠点フルサットの敷地内と上越市にある直江津という町、その道程を中心に、「健常者による電動車椅子の観光利用」に関する実証実験を実施させていただきました。

 今回は、株式会社北信越地域研究所の平原様と株式会社WHLLの小林様のご協力のもと、次世代型電動車椅子「WHLL」を利用しての実証実験を行いました。
 設定としては、東京など首都圏からの旅行客が電動車椅子を利用し、観光を楽しむ際に、どのようなことが実際の障壁になるのか、ということを検証することを目的としていました。
 そのこともあり、東京から新幹線に乗り上越妙高へ移動し、上越妙高駅前にある平原様が運営しているフルサットで電動車椅子をお借りすることから始まりました。そこで、初見になる「WHLL」の操作方法を一通り学んでから、直江津に向かうこととしました。10分程度のレクチャーでしたが、すぐに乗りこなせたこともあり、町中での実証実験においても期待が高まりました。私たちは、そんな初心者でも乗りこなせるWHILLの観光利用に関するメリット及びデメリットを考察し、観光に寄与できるかどうかを検討したいと思っています。

◆当日のスケジュール
乗車時間:開始10:00~終了15:30
  及 び  10:00~10:15 上越妙高駅前フルサットでの試走
乗車経路 10:19~10:30 トキ鉄乗車国鉄413系
     10:30~11:00 直江津走行
     11:00~12:00 無印良品直江津店視察
                       無印良品内にて昼食
     12:00~14:00 うみまちアート視察
     ライオン像のある館(旧直江津銀行)
     船見公園周辺海岸会場
     14:00~14:30 直江津八坂神社→雁木下のある通り
     14:51~15:06 しらゆき6号
     15:06~15:30 JR上越妙高駅での新幹線売り場での切符購入体験

◆電車への乗車時における留意点など
 ただ、町中での実証実験に先駆け、上越妙高駅から直江津に行くためには、上越妙高駅からえちごトキめき鉄道に乗車しなくてはなりませんでした。私自身、人生で初めて電動車椅子に乗るため、いろいろな点で新鮮なことだらけでしたが、同時に不安をぬぐいきれませんでした。幸い、上越妙高駅は非常にスペースが広く作られており、エレベーターも完備されていたため、電動車椅子初乗車の私でもスムーズにホームまで運転することができました。
 ただ、直江津駅まで偶然乗り合わせた観光列車は、えちごトキめき鉄道の売りとなっている元国鉄急行型車両だったため、「撮り鉄」の方々が写真撮影をする中、電動車椅子でその前を横切らなくてはいけなくなってしまい、少し気まずい思いをしました。
 とはいえ、電動車椅子を利用し、その電車に乗って直江津に行かないといけないので、スロープを使って車両に乗り込みました。見た目以上にスロープの角度がきつく感じ、臆しましたが、えちごトキめき鉄道の方々のサポートにより何とか乗車することができました。直江津駅到着時にも、えちごトキめき鉄道の方々のサポートにより無事に降車することができました。こうしたサポートがなければ、電動車椅子に初乗車する方には、おそらく怖く感じることだろうと思いました。事前に、こうしたサポートのお願いをしておくことの大切さを学びました。

 

乗車時のサポート対応(復路)

 

◆町中での走行の留意点など
 目的地の駅である直江津駅も、エレベーターなどが完備されていて不備なく移動ができました。上越妙高駅前に比べ、古い駅舎だったのでエレベーターも小さかったのですが、「WHLL」の車体が非常にコンパクトで、小回りが利くタイヤの作りになっていたことがこうした環境への対応を可能にしてくれたのだと思います。
 駅周辺も、歩道が広くとられていたり、信号付きの交差点が多く、観光シーズンで人や交通量が多い時も安全に電動車椅子で移動できる場所だと思いました。事前調査では、直江津や高田といった上越市の地域は、古くからの街並みが残っているということだったので、道が細いのではないかと心配していたのですが、そんな心配をしなくてもいい環境でした。もちろん、木造建築の建物や生活用水路が巡る迷路のような裏路地など古くからの街並みも残っており、所々で歴史を感じられる風景が広がっていました。そのため、整備されていないちょっとした段差がある場所や、歩道がなくて困った場所も数カ所見受けられました。ただ、そこを綺麗に再開発しましょうというわけではなく、こうした場所も風情があるので、車椅子専用のMAPが整備されていればいいのではないのかと思いました。今回は、「WHILL」のオプションとして整備されたスマートフォン設置用のアクセサリーをつけていなかったので、そうしたものをつけて走行するのであれば、アプリ開発などがすすめられるといいなと思った次第です。そうすることで、車椅子ユーザーにも、もっと安心して観光してもらえる地域づくりができるのではないのかと思った次第です。

 

直江津駅前を走行中の様子

 

◆今後の課題
 古い町並みを残す地域における観光において、MAP制作もそうなのですが、いろいろな気づきのある実証実験になりました。
とくに、今回は、直江津の街中で行われていた「うみまちアート」も見学したのですが、古い建物の中に設置された展示や海岸の砂浜に設置された展示は、そこにある段差などの関係から車椅子に乗車したまま見ることができなかったので、その点では残念だったからです。「WHILL」は砂浜の上でも走行できましたが、急な段差は障壁となりました。
こうした状況に直面し、地域資源を活用した芸術祭を催す場合には、誰にとってもウェルビーイングな観光のできる環境を配慮して全体を作っていかないといけないのだなと改めて思いました。もちろん、展示自体は素晴らしかったので、今後の我々の世代の課題なのだと思った次第です。スロープを用意するという対応もあるでしょうけど、古い建物や環境を残しつつできる他の方法も検討しなくてはいけないなと思うからです。

 

うみまちアート視察の様子

 

◆最後に...
 帰りは、特急列車に乗車し、上越妙高駅まで戻りました。この車両には、私たちが一般に利用する座席とは別に車いす専用のスペースが設けられているなど、車内がとても利用しやすい環境に整備されていました。こうしたちょっとした気遣いのある整備を、町の中にも増やしていくことが必要なのだと思った次第です。
 ただ、今回の調査では上越市を隅々まで調査できていないので、次回は、日帰りではなく2泊ぐらいして、学生たちに何ができるかをもっと喧々諤々し、何か具体策を提案できるようにしていきたいと思いました。
また、今回は、色々な方面に許可を取りながら本学 web siteへの報告記事を書いていたこともあり報告記事の掲載が遅くなりましたが、こういう広報活動も早くできるようになれればと思っています。
 

復路の電車の乗車風景