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第17回ど・ゼミ~「移住」について、一歩手前から考える!

自主ゼミ

2022.02.17


 「まちづくり」「まちおこし」に関する企画や運営といった仕事に日々従事している“その道のプロ”をお招きし、月1回のペースで開催する自主ゼミ(大学の授業外で学生たちが自主的に行うゼミ活動)の第17回目を2021年12月18日(土)に開催しました。今回も、観光学部から学生4名(オンデマンドで12名)が参加しました。

 今回の“その道のプロ”は、「これからの地域とのつながりかた」を提案する雑誌『TURNS』のプロデューサーであり、株式会社第一プログレス代表取締役社長の堀口正裕さんです。他にも、「TURNSカフェ」や「TURNSツアー」といった、地域と若者をつなぐ新しい形式のイベントを開催し、「ローカルに暮らす魅力」や「地域で暮らす知恵」などを共有する活動をされています。

 そんな堀口さんのお話は、観光学部の学生、とくに、観光地の地域活性化を推進したいと考えている学生にとっては、関係人口創出にあたってのイベント制作のアイデアをいただくいい機会となったようです。また、観光に関する情報を発信したいと考え、観光におけるメディアのあり方について学ぶ学生にとっても、関係人口として関わってくれる人々が「TURNSではなく、RETURNSとならない(堀口)」ように留意しながら、観光地の情報を提供していくことが重要なのだと改めて思ったとのことでした。
 今回の自主ゼミも、上記のような多くの気づきを学生に与えてくれるいい機会となりました。
 

「『TURNS』は生き方のヒントづくりのためにありたい」


●観光学部2年 深川雄平
 今回は「これからの地域とのつながりかた」をコンセプトとした雑誌『TURNS』のプロデューサー・堀口さんから、雑誌『TURNS』が取り上げてきた地域活性化の事例についてお話いただきました。とくに、たくさんの事例の中でも「成功例」についての印象が深いので、その中からワーケーションを主とした地域活性化の「成功例」について感想を共有させていただきます。

 今回、そのワーケーションを用いた地域活性化の「成功例」としてご紹介いただいた地域は、長野県北部に位置する千曲市です。千曲市は、ここ数年で空き家が増え、その利用に困っていました。また、観光地に近いのですが、リゾート施設もない地域のため、観光による地域の再建なども検討できない地域だったそうです。そのこともあり、コロナ禍以前から、ワーケーションを一つのきっかけとして関係人口を増やしていくといった方法で地域活性化を検討したいと考えていたそうです。「他の観光地のようなリゾート施設が欲しい!」と言っても実現はできないので、「今ある資源から考える」ことが求められ、ワーケーションをテーマとすることに決めたそうです。
 そこで目を付けたのが、廃車同然の電車です。早速、「これを使って、車両内でワーケーションを実施しよう!」ということになりました。こうした呼びかけに地域の皆さんで取り組み、車両を整備し、廃線同然の電車でワーケーションを実施しました、その結果、リピーター率がなんと70%になったとのことでした。一見、突飛な活動にも思われますが、「今までこれといったものがない」と思っていた千曲市の一つの魅力として廃線電車の車両がワーケーションに活用されることで、地域のことを多くの方に知っていただくことにつながったという話には驚きました。さらには、リピーターの方と現地の魅力をマッチングするためのアプリも開発され、それがまた新たな話題となり関係人口増につながったことは素晴らしいなと思いました。なんでもやってみないことには始まらないのだなと感じます。

 ちなみに、私は、この「ど・ゼミ」を契機として、ワーケーションを用いた地域活性化に興味を持つようになりました。ただ、ワーケーションというサービスは、コロナ禍によってリモートワークが主流になっていることと重なり成長しただけの一過性の事業だと思っていましたが、ワーケーションの中に地域の資源ネットワークを上手く導入していくことで、より豊かな仕事環境を築くことができるのだと今回の講演を介して理解できました。そして、同時に地域への経済効果も大きいのだということがわかりました。こうしたお話を伺うことで、ワーケーションについてさらに深く学んでいきたいと思えました。

 

ワーケーションの可能性について講義してくださる様子


●環境社会学部4年 梅井 舜
 今回ご登壇くださったのは雑誌『TURNS』のプロデューサーを務める堀口正裕さんです。
私も地方出身で、ある程度の年になったらUターンをして地方に貢献したいと思っていることもあり、雑誌『TURNS』をたまに購読していました。そのため、今回、お話を伺うまでは、「移住」を促進するために、地域の人々の活躍している様子を紹介している雑誌だと認識していました。
 今回のお話の中でも、色々な地域で活躍されている方々が取り組む「まちづくり」や「まちおこし」の事例をたくさん紹介していただきました。ただ、どの事例について伺っても、私には「移住」を目的に取り組んでいるお話には聞こえませんでした。それは、ご紹介いただいた多くの活動事例が、住民が「自らがやりたいこと」を企画として始め、その「自らがやりたいこと」を昇華するために地域の魅力を活用しているだけに見えたからです。ただ、それが個人的な活動だと非難しているわけではありません。当たり前のことかもしれませんが、「自らがやりたいこと」を推進する気持ちがなければ、何も始まらないし、周りの人からの賛同や協力も得られないのだと改めて感じました。言い換えると、「移住」ありきの行政が行う制度設計では、その地域の魅力は伝わらないし、他の地域の人が「移住」したいとも思わないのだと思うことができました。
 また、今回のお話を伺うまでは、「移住」を覚悟してある地域に移り住んだ人は、それなりの決意があるので、移住先で上手に暮らしているものだと思っていました。しかし、堀口さん曰く、「「移住」にはミスマッチもある」とのことでした。上記で述べたような「移住」を迎える側のアピールが煌びやかに見えるようなメディアの操作であったり、地域の移住制度のみを信頼して「移住」してしまった結果だとのことでした。もちろん、移住先の暮らし方に憧れて「移住」してもいいのですが、「移住」をする側もしっかりと移住先について勉強し、良い面だけではなく、悪い面も把握することが必要なのだと改めて思いました。とくに、堀口さんからの「移住」に対する姿勢として、真剣に「移住」を希望している地域について勉強することは、「自分のためのでもあり、移住先の地域のためでもある」という言葉は、私の考えを軌道修正してくれました。

 最後になりますが、私は、4月からは千葉県で「まちづくり」を生業としている企業への就職が決まりました。ただ、先にも述べたように、いずれは地元である新潟県に帰り同様の仕事をする予定です。なので、今のうちから「地元を客観的に見ておく」のも必要なことだと、今回のお話を伺って感じました。
 

堀口さん曰く「移住は幸せを掴み取るための通過点」


●環境社会学部4年 蜂谷 主
 私は、大学進学を機にラジオを聴くようになりました。最近は、Tokyo FM+ 80.0の『明日への狼煙を上げる、ラジオの中の会社・スカイロケットカンパニー!』や『ディアルでルルル♪-ライフシフトのヒントを山梨から-』を聞いています。今回の自主ゼミ「ど・ゼミ」は、その両番組に出演されている雑誌『TURNS』のプロデューサー・堀口正裕さんのお話でした。そんな、身近な環境を通して接していた方が、「地方移住に関してどのような意見を持たれているのか?」ということについて直接お話を伺えることをとても楽しみにしていました。

 そんな私が、堀口さんのお話の中で最も印象に残ったフレーズは、「「地方への移住」を正しく理解してもらうことで、ローカル(ここでのローカルは、地域とくに地方社会のこと)と人(移住者)とのミスマッチを防ぐ」というものでした。とくに、「ローカルだからユートピアなんじゃない」という堀口さんの言葉に目の覚める思いがしました。ラジオなど様々なメディアでは、地方移住や二拠点生活をすることの良い面が大きく取り上げられていますが、「本当に住んでみないとわからないことが多い」ということが堀口さんの話からよく伝わってきました。
私も、地方へ移住したい理由として「静かな場所で暮らしたい」「自分のやりたいことを実現したい」など、移住者当人としての夢や理想を地方社会に一方的にぶつけようとしたこともありました。しかし、今回のお話を伺って、「本当にそれでよかったのかな?」と思い返しました。また、「地方移住」について、移住先側からの視点で考えてみることも重要なのだと改めて思うようになりました。そして、「地方移住」を成功させた人への考えも大きく変わりました。
 ただ、一方で、堀口さんのお話は「移住に対する夢や理想を捨てろ!」ということではないのかなとも思いました。事例として紹介していただいた香川県三豊市にある「URASHIMA VILLAGE」というホテルは、様々な業種の方たちが語り合い、力を合わせ、それぞれが持っていたスキルを活かすことで集客に成功したとのことでした。一方的に夢や理想をぶつけるのではなく、お互いの夢や理想を実現させるための方策を見出す仲間づくりを段階的に行っていく中で「地方移住」を目指すことが重要だと思いました。また、私は、ゼミの中で「サードプレイス」の運営に関する研究をしてきましたが、こういう夢や理想に向けて建設的な目標を語らう場作りとして「サードプレイス」が必要ではないかと改めて思った次第です。
 最後になりますが、私も4月から社会人となります。ただ、社会人として企業の活動も重要ですが、それだけではなく、いつの日か自分が住まう地域の「まちづくり」「まちおこし」の力になりたいと思いました。 
 

地方移住について考えるきっかけになった「スカロケ移住推進部」とのコラボの様子