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よ・ゼミ 第6回  地域社会には”PR”が必要。「広告」とは違う本質的”Public Relations”とは?(博報堂ケトル『主役は地域に暮らす人たち』)

自主ゼミ

2022.02.25


 学生たちが、大学での<学び>で得た「まちづくり」や「まちおこし」に関する知識や自ら取り組んできた地域連携活動による<学び>を、就職後(社会へ出てから)の活動の中でどのように実践・応用していけば良いのかを学ぶための自主ゼミ「よ・ゼミ」の第6回目を2021年12月18日(土)に実施しました。

 今回は、「地方社会の人口減少に対しどうにかせねば!!」ということで、日本全国の「地元民とともに」仕事に取り組んでいる株式会社博報堂ケトル(以下、博報堂ケトル)の日野昌暢さん(以下、日野さん)をお招きし、地方社会における課題の解決のための<広告>とは異なる<PR(Public Relations)>の本質(「人々の認識を変え、人々の行動をも変える」)について学びました。また、『絶メシリスト』、『MY TRAVEL BUDDY』(広島県)、『スナックプライド』(宮崎県)などの仕事を介して、「観光ガイドに掲載されていないもの=観光の要素としては認識されていないもの」に光を当て、観光客に認知してもらう仕組みづくりと、このような情報のアーカイブ化の重要性についてお話いただきました。

 そのこともあり、今回の自主ゼミでは、地域をPRすることの本質を学ぶとともに、地域資産を生かした事業化支援の方法について学ぶ機会となりました。

 このような貴重な機会に、観光学部からは5名の学生(オンデマンド14名)が自主ゼミ「よ・ゼミ」に参加することとなりました。



本質的な地域活性を生むプロセス


●観光学部2年 坂田 凜太郎

 今回、ご登壇くださった博報堂ケトルの日野さんのお話を伺って、広告代理店というものに対するイメージが劇的に変わりました。
 名前の通りのお仕事、例えば、チラシを作ったり、ポスターを作ったり、時にはテレビのCMを作ったりといったマスメディアで取り上げられる仕事をされているのかと思っていたので、「意外な取り組み」を行っていることに関心を持ちました。

 私がいう「意外な取り組み」とは、「地域に寄り添い、ローカル発のモノを作っていく」という日野さんのものづくりに対する姿勢のことを指します。とくに、日野さんの活動についてのプレゼンでは、広島や宮崎、そして、私の育った高崎など地方都市での仕事ばかりが紹介されており、驚くと同時にとても興味が湧きました。先ほど「意外な取り組み」と述べたこともそうですが、マスメディアというものは、「都市部で生産されたモノを消費してもらうために作っている広告」であるというイメージを持っていたからです。同時に、こうした活動は、東京など都市部への一極集中が進んでいく昨今において、とても大切な活動だと感じました。

 ちなみに、博報堂ケトルさんの活動の中で、私の興味を惹いた活動は、私の育った町、群馬県高崎市での取り組み『絶メシリスト』についてでした。この取り組み自体は、高校生の頃から知っていました。高崎がまちをあげて応援していたこともあり、高崎駅のモニターや各商店に掲示されているポップなどに、たくさん広告が掲示されていたからです。実際に、この『絶メシリスト』を参考に食事場所を決めたこともあります。

 ただ、そこに住んでいた身からすると、高崎駅など中心市街地は栄えてはいるが駅から徒歩で10分も離れると人気のないシャッター街になっているので、「治安が悪いなー」とも思っていたのも事実でした。 栄えていく高崎駅に併設された駅ビルなどに人気を取られて、旧来栄えていた商店街の需要が少なくなってしまったからです。とはいえ、今回ご紹介してくださった『絶メシリスト』の活動を通して、そのシャッター街の路地裏にあった店舗にも、少しずつ客足が増え、その周りの環境にも影響を与えてくれていました。

 こうした実情を見続けてきた私にとって、今回の活動のお話を伺えたことはとてもいい経験になりました。とくに、こうした商業施設が立ち並ぶ地方都市にも観光を誘発するものは多く潜在しているのだと気付いたからです。とくに地方都市の飲食店街は、地域に住まう顧客をキープするだけではなく、新たな顧客を手に入れるために多くの活動をしないといけないのかなと思いました。高齢化した方々が営む商店の多い地方都市においては、私たち若者世代がSNSを使ったキャンペーンをするだけでも変わるのかもしれません。なので、これからは、いわゆる観光地だけではなく、消滅の危機に瀕している地方都市の再興を見据え、観光について改めて考えてみようと思いました。

高崎市街の商店街の実情を伝える様子

 

●観光学部2年 倉林 優希
 私は、将来、フェスのようなイベントを企画ないしPRする仕事に就きたいと考えているので、今回の博報堂ケトルの日野さんのお話を伺って、勉強になることがたくさんありました。
 中でも印象に残ったものが『絶メシリスト』という企画でした。この「絶メシ」は、博報堂ケトルさんが群馬県の地域活性のためにということで立ち上げた企画だったそうですが、群馬県高崎市を皮切りに今では全国の地方都市の絶品グルメを紹介する一大企画となっています。ただ、私は、群馬県出身ですが、この企画は日野さんのお話を伺うまであまり知りませんでした。しかし、この企画を立ち上げて、ネットやテレビなどのメディアに掲載されることにより地元民のみならず、その企画を見つけた各地方の方々も足を運んでくれるようになったとのことでした。

 ちなみに、この企画は、一時期のコンビニエンスストアやファーストフード店の開業の流れに押され「知る人ぞ、知る地元の絶品グルメ」が衰退しつつあることに対して何かできないかという問題意識から始められたようです。とくに、「絶メシリスト」という企画では、多くの地元の文化や歴史を作ってきた独特の雰囲気を持った飲食店やその絶品グルメがテレビなどの広告媒体を通して紹介されています。

 ただ、近年では、テレビやポスターの広告よりも、「SNS映え」という言葉が流行語となったことからもわかるように、若者はSNSで情報を得ています。と同時に、「食事を眼で楽しむ」ことから入るようになりました。そのため、SNSで発信された美しい写真が掲載されている飲食店に足を運ぶことが多くなりました。私自身も、友達とご飯を食べに行くということになれば、SNSに掲載された流行りの飲食店を検索し、その日に食べるものを決めてお店に向かうことが多いです...。こうしたSNSを介して食事場所を決めることが良いか悪いかは別として、現在はこうした発信をしていかないと人が集まらないというのは事実です。
 では、なぜマスメディアでの<PR>活動というものに対し、お金が投じられるのかなと思っていました。「広告業界の方々の活動は、企業や自治体などから「依頼されて作り上げる」仕事ですが、本当に効果はあるのかな...と。ただ、一方で、今回の日野さんのお話を伺って、私は、日野さんの活動は、私たちが日常的に行っている個人がSNSで発信する活動と同じ意識で<PR>活動されているのだと思いました。「依頼されて作り上げる」仕事のように綿密に計画されたものというよりも、「地域を訪れたことで生じる偶然の出会い(たまたま見つけた飲食店の価値)」を大切にしていたからです。また、<PR>する際に、お客さん目線で興味を持つことも重要視するとのことです。そう考えると、どのようなメディアでも肩肘をはらずに<PR>することが共感を生むのかと思いました。

 私も何か企画したものを共感してもらいたい場合は、日野さんのように、偶然を大事にしながら、日常の自分ごととして何かの情報を発信することを心がけたいと思いました。そうした自然体の<PR>活動が、いま求められているのかもしれません。

高崎市で実施された絶メシリストの企画

 

●国際人文学部4年 漆山ありさ
 今回のよ・ゼミは、博報堂ケトルの日野さんからお話を伺いました。
 日野さんは、多くの地域で行なわれている地域活性化活動に接し、<PR>活動に取り組んでいます。
 ちなみに、私がお話を伺う中で、とくに重要だと感じ、他よりも大きな文字でノートにメモをした言葉があります。それは、「「まち」の人が語れるか!」です。日野さんが活動の中で大事にしていらっしゃることの一つだそうです。
 ちなみに、日野さんがプロデューサーを務めたテレビ東京のドラマ『絶メシロード』、また、地域ごとに制作した『絶メシリスト』のお話で、この日野さんが課題としている「「まち」の人が語れるか!」ということの意味がよくわかりました。舞台となった地元の駅でも絶メシが大々的にPRされているだけならまだしも、日野さんが取り組んだ地域の「PR」活動を通して、地元の方々が「うちの「まち」には「絶メシ」がある」と語り、誇れるものができたというのは素晴らしいことだなと思います。「新しい地域資産」として、地元の方々からの支持を集めていることが分かりました。
 ただ、同時に、「新しい地域資産」として、「何を「売り」にしていくのか?」、そして、「どう<PR>していくのか?」、さらには、地域住民が自分自身で地域の魅力を語れるところにまでもっていくという作業は、とても大変なことだと感じます。とくに、直接的に企画に携わっていない地元の方にも支持されることは非常に難しい課題だと思いました。とはいえ、「直接的に企画に携わっていない方に支持されるようになることこそが「まちづくり」の鍵となり、地域の団結を生むきっかけになるのだ」と、私は日野さんの話を伺いながら納得しました。日野さんの言葉に、「地域のもつ資産や技術、魅力を大切にしていってほしい」という温かい気持ちが込められていると感じたからかもしれません。

 同じく、日野さんがプロデュースした宮崎県の『スナックプライド』プロジェクトも、「スナックは、とても面白いのにメディアには取り上げられていない」という気づきがあったことから、「新しい地域資産」として位置づけるべきだと思ったようです。こうしたお話を伺っていて、目線が変われば「新しい地域資産」になり得るものが、各地には溢れているのだと実感します。そこから、何でも面白いと思って飛び込む力や、自分が得た感情を信じることも「まちづくり」の中では重要になるのだと学びました。

 最後になりますが、私にとって、今回のお話はどれも新鮮な内容ばかりでした。私も地域づくりや地域活性をこの自主ゼミで学んできた者、そしてこれからも「まちづくり」や「まちおこし」の仕事に関わりたい者として、もっと頭を柔らかくした状態で様々な「もの・こと」に触れていきたいです。そして、地方の可能性を様々な視点から見いだせていけたらと思います。

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