This page does not support translation languages. ×

第18回ど・ゼミ~まちづくりも、ファンづくり!!ファンを増やすための広報戦略

自主ゼミ

2022.05.28

4質の良い教育をみんなに11住み続けられるまち作りを
 

「まちづくり」「まちおこし」に関する企画や運営といった仕事に日々従事している“その道のプロ”をお招きし、月1回のペースで開催する自主ゼミ(大学の授業外で学生たちが自主的に行うゼミ活動)の第18回目を開催しました。今回も、観光学部から学生6名(オンデマンドで4名)が参加しました。
今回の“その道のプロ”は、中銀カプセルタワービル(以下、カプセルタワービル)という集合住宅の住人であり、その保存再生運動に関わっている前田達之さんです。前田さんは、朝日広告社という企業で働く一方で、その仕事の中で得たノウハウを利用し、、カプセルタワービルの価値を伝える活動を行ってきました。

そんな前田さんのお話は、観光学部の学生、とくに、自らホテル経営や民泊事業に関わりたいと考えている学生にとっては、宿泊業をやる上での広報活動の重要性という点で多くの示唆をいただきました。
とくに、持続的に住人になってもらい建築を維持させていていくために、職業も年齢も国籍も違うカプセルタワービルの「ファン」の各層へ届くメッセージの作り方を学び、そのための広報戦略についてお話しいただいたことは貴重な機会となりました。また、カプセルタワービルの解体が決まって以降も、その「ファン」たちに向けて多くの情報を発信し、少しでもカプセルタワービルを持続させようとするその姿勢から多くのことを学ぶことができました。

今回の自主ゼミも、上記のような多くの気づきを学生に与えてくれるいい機会となりました。

今回の講義の主題となっている解体が決まった中銀カプセルタワービル

今回の講義の主題となっている解体が決まった中銀カプセルタワービル

観光学部4年 髙橋 昂哉

第18回の自主ゼミ「ど・ゼミ」は、カプセルタワービル保存・再生プロジェクトに従事している前田達之さんをお招きし、歴史的建造物の保存活動からまちづくりについて学ぶ機会となりました。

まず、私の自主ゼミに参加した際の感想を述べる前に、このサイトを見ている方々は観光を志す受験生や観光業界で働く方々が多いと思いますので、このカプセルタワービルについて簡単に説明しておきます。この建築は、黒川紀章という世界にも名前が知れ渡っている建築家が設計し、50年もの時代を経た近代建築です(1972年竣工)。<メタボリズム>という運動を先導した建物として世界的にも有名になりました。みなさんはご存知でしたか?

そんな有名な建築の保存再生プロジェクトに取り組むにあたって、前田さんは以下の活動を実施したとお話くださいました。

  1. カプセル(一住戸)のオーナーと管理組合に対し適切な修繕活動を行うための呼びかけ
  2. カプセルの価値を高めるための新たな使い方の提案とリノベーション
  3. 建築の価値を周知するための広報活動

 

私は、本公演に先駆け、フィルムコミッション(行政(とくに市役所の観光課が担当していることが多い)などが主軸となり、映画やドラマ、CMなどのロケーション(野外撮影)を誘致して、地域活性化に取り組む組織)について勉強していたので、その観点からこうしたお話を聞かせていただきました。そして、こうした歴史的価値のあるカプセルタワービルに代表される有名建築物の保存は、フィルムコミッションにおいても必要なことなのだと思いました。この建築もマーベルコミックスX-MENシリーズの『ウルヴァリン:SAMURAI』の舞台にもなっていますが、前田さんの仰る「適切な修繕活動」、「新たな価値の提案」、「広報活動」があったからこそ実現したのだろうと思います。

一つには、映画やドラマを撮影する場合、その映画のロケ地に関わる関係者だけでなく、ロケ地を使う上で近隣住民への理解を得ることが必要だからです。地方自治体とも密な連携を取ることも必要です。そのためにもロケーションとなる場の景観維持が必要となるでしょう。そして、ホームページによる広報活動などロケ地として継続的に使ってもらえるような体制づくりをしなければならないからです。

カプセルタワービルは、保存活動の甲斐もなく、残念ながら本年度解体を迎えます。そんな最後の機会に、私は、この建築について語る前田さんのお話を通して、観光学部生として、建物や景観、インフラなども観光地を構成する上で維持していかないといけないものなのだということを学ぶことができました。本当にありがとうございました。

色々な「ファン」層へ保存賛同を働きかけるための広報

色々な「ファン」層へ保存賛同を働きかけるための広報

海外の「ファン」層に向けた新たな価値づくり:民泊事業

海外の「ファン」層に向けた新たな価値づくり:民泊事業

環境社会学部卒業生 梅井 舜(現・幕張PLAY株式会社)

今回ご登壇下さった前田さんは、カプセルタワービルの保存再生活動に取り組んでおられます。

1972年に作られたカプセルタワービルは、この2022年に解体が決まっており、その姿を今後は見ることはできなくなります。そんなカプセルタワービルの魅力は、なんといってもいくつものカプセル(住戸)が組み合わさり一つの全体像を作り上げているその造形でした。しかし、その魅力は誰にでも伝わるわけではなく、中銀カプセルタワーの近隣住民からは、カプセルタワービルはより良い環境を求める声も上がっていたそうです。この魅力を魅力と思わなくなる現象は、私が今までまちづくりに関する勉強をしてきた中で何度も遭遇してきました。
本当に残念な限りですが、この現象は避けようがありません。そこで、前田さんは、カプセルタワービルの「ファン」を増やすことで、カプセルタワービル存続の新たな活路を作ってきました。「ファン」の増やし方も様々なことを行なったようです。自らのSNSでの情報発信はもちろんのこと、TVやラジオに出演したりもされていました。また、クラウドファンディングを用いた保全のための資金調達もおこなっていました。そしてそのクラウドファンディングの返礼品には「ファン」の心をくすぶる商品のセレクトなども行い、活動の価値をあげることも行っていました。さらには、こうした「ファン」づくりを介して、建築そのものの話題作りをするだけでなく、周辺地域の価値向上も行なってきたとのことでした。

私は、まちづくりの手法においても、こうしたファンベース(ブランドや企業などを支持する人たちのコミュニティによって、そのブランドや企業の主軸となる価値を決めていく手法)の考え方が問われる時代になるのではないかと考えているので、今回のお話は非常に勉強になりました。

中銀カプセルタワービルに注目を集めさせるための仕掛け作り:クラウドファンディング事業

中銀カプセルタワービルに注目を集めさせるための仕掛け作り:クラウドファンディング事業