観光産業を支えてきた地域に根ざす老舗・酒蔵の新たな事業展開から学ぶブランディング手法<寒菊銘醸>

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フィールド基礎演習aの第二クォーターの活動は、実際に東金市近傍の地域に足を運び、「個々の企業がどのような企業ブランディングを行い、その企業ブランディングを介し、地域観光にどのように寄与しようとしているのか?」ということについて学ぶ機会としています。
本年度は、多古町にある株式会社船越ワイナリー、同じく多古町にある大三川邸、合資会社 寒菊銘醸(以下、寒菊銘醸)を視察しました。
そこで、今回は、3回に分け、その視察を通して学生が学んだことについてご紹介します。
今回は、千葉県山武市にある寒菊銘醸です。

● 観光学部2年 阿部 心寧
私が、今回の視察でとくに印象に残った企業ブランディングの手法は、千葉県山武市にある寒菊銘醸の取り組みについてでした。その理由は、以下の2つの取り組みから観光を支援する拠点の活動で考えて行くべきことについて学びを得たからです。

社長の佐瀬様に工場内の見学を行なっていただきました


1つ目の取り組みは、ブランド価値を高めていくための独自の工夫についてです。
寒菊銘醸は、約130年の歴史をもち、千葉県産のお米を使用した日本酒を製造・販売してきました。昨今では、オーシャンビールなど、千葉県産のコシヒカリを使用したビール製造にも取り組んでいます。そして、オーシャンビールにおいては、そのブランドを維持するために、少量生産の販売とし希少価値を高めています。ただ、一方で、大手ビール会社のように、価格を安くして大量に商品を提供するライバル会社は数多く存在しているので、そうした企業との販売競争は大きな課題です。そこで、寒菊銘醸では、時代に合わせたラベルのデザイン変更やホームページ、SNSなどを有効活用した情報発信を行ってきました。その結果、寒菊銘醸のお酒を買うためだけに、飛行機で千葉県山武市まで足を運ぶお客様もいたとのことでした。また、外国人からの注文が以前よりも増えるなど大きな変化が見られたそうです。
以上のことからもわかるように、今の時代にあって企業のブランドを広めていくためには、国内外問わずお客様にも手に取って頂けるような商品を作り出し「自分達から発信していく」工夫が求められているのだということです。そのためには、自らのターゲットを明確にしておくことが必要だということでした。

若者をターゲットにして変更したパッケージデザイン


2つ目の取り組みは、職場環境に関わる経営理念についてです。とくに、この寒菊銘醸の経営理念の特筆すべきこととして、3つのポイントがあると思いました。
・ポイント1. 社長が全て判断するのではなく、従業員全員で意見交換をする点
新しいことに進む際には、何を決めるにしても、従業員全員で話し合いの場を持つそうです。つまり、話し合いの場で、若い新人の意見が採用されるということもあるそうです。実際にお話を聞いていると、「自社の商品を消費してくれるターゲットを考える上では、若い人の意見や感性を取り入れることは珍しくない」とお話ししてくださいました。
・ポイント2. 必要とあれば、社長自らが率先して行動する点
例えば、昨今においては、国内にいても遠隔地の人とzoomで簡単に打ち合わせが出来るようになりましたが、実際に社長が海外などの遠隔地を訪れ、直接、相手の顔を見て交渉を行っているとのことでした。一般的な企業では、営業職の人が行うべきことですが、こうしたface-to-faceの交渉が、ブランドの波及において最も重要なことだからだそうです。
・ポイント3. 女性の働きやすい仕事環境を整備している点
「酒造り」と聞くと男性の仕事のイメージが強い職場のように思うのですが、寒菊銘醸では女性でも働ける環境作りに力を入れているとのことでした。例えば、重い物を持つなどの女性には難しい力仕事は男性がサポートするにしても、麹を扱う現場にも女性が入っているとのことでした。

専務の佐瀬様から女性活躍の場作りについて説明いただきました


以上の取り組みを通して、寒菊銘醸のブランドの背景となるイメージづくりをしていることが印象に残りました。

最後になりますが、千葉県産のお米を使用することや目に見える企業のデザインを統一していくことだけが、地域をブランディングする手法ではないことをこの視察を通して学びました。第一クォーターで道の駅しょうなんと連携し地域のブランディングに取り組む鈴木亮平さんから、「地域のブランディングとは、(拠点を介して)地域として守りたいものを広めていく活動」であるという話をうかがいましたが、今回の視察ではその具体的な活動を学ぶことができました。
特産品の裏側にあるブランディングの魅力をさらに調査していきたいと思います。