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よ・ゼミ 第8回  本当の地域の魅力を知るためのモビリティ開発とは?(ジェイアールバス関東株式会社『地方社会に根付く公共交通の課題とこれから』)

自主ゼミ

2022.12.16

学生たちが、大学での<学び>で得た「まちづくり」や「まちおこし」に関する知識や自ら取り組んできた地域連携活動による<学び>を、就職後(社会へ出てから)の活動の中でどのように実践・応用していけば良いのかを学ぶための自主ゼミ「よ・ゼミ」の第8回目を実施しました。
今回は、東京大学と連携し、観光地に新しいモビリティを根付かせようと、地域の宿泊事業者や地域支援団体などを巻き込みながら観光に寄与する拠点整備とスモールモビリティサービスを構築する西岬モビリティプロジェクトという活動を実証実験してきたジェイアールバス関東株式会社(以下、ジェイアールバス関東)にお話いただきました。

本学観光学部の一部の学生の中には、大学の立地する東金市や近隣の市町村と、上記のような活動と同じように新しい拠点整備とスモールモビリティサービスの構築をしたいと考えている者もおり、今回はそうした連携のかたちとその課題についてお話を伺う貴重な機会となりました。
このような貴重な機会に、観光学部からは9名の学生(オンデマンド4名)が自主ゼミ「よ・ゼミ」に参加しました。

ジェイアールバス関東の活動を視察した際に乗車したグリスロ

ジェイアールバス関東の活動を視察した際に乗車したグリスロ

観光学部2年 加藤 琳美

今回の講演を通して、館山市で実施されている西岬モビリティプロジェクトという活動を初めて知りました。この活動の中では、高齢化や人口減少が進む地方社会に対して、グリーンスローモビリティ(以下、グリスロ)という電動の移動サービスを活用する実証実験がなされていました。
このグリスロは、「普通の自動車では入れないような細い道でも入っていけるモビリティ」だったので、とても地域観光には適した乗り物だなと思いました。
ただ、こうした活動は、面白い活動だなと思った一方、財源などの課題についてもお話しくださったこともあり、とても考えさせられる機会となりました。「日常的に利用率が上がらなければ、運用をしていく財源はない」という至極当然の話なのですが、平日には人のいないことが多い観光地においてモビリティを活用している企業が真剣に考えなくてはいけない課題についてもお話いただいたことが理由としてあげられます。
観光産業に関わるお話を聞く場に行くと、どうしても「素敵な景色」や「美味しい料理」といった「いい話」だけを聞くことが多いのですが、今回のお話を聞いて、「今後、観光に携わる上では、リアルな現実を知らないといけないな...」と改めて気を引き締めました。本当に今回のお話を聞くことができて良かったです。

グリスロを利用した観光コースは自家用車では入ることのできないような場所が見学コースになっている

グリスロを利用した観光コースは自家用車では入ることのできないような場所が見学コースになっている

観光学部2年 柴田 礼子

今回、ジェイアールバス関東のお話をお聞かせいただくまで、JR東日本が子会社としてバス会社を運営していることについて知りませんでした。私は「JR」と聞くと電車のイメージしかなかったからです。

まず、お話くださったのは、現在の日本の現状についてです。「人口が減少したことにより公共交通網の本数が減少しているにも関わらず、地域社会の住民は高齢化しており、免許返納後に交通手段をなくしてしまった人が増えている」とのことでした。
そうした事態に対し、バス会社が、(実証実験とはいえ)グリスロを導入し、今後の住民の利便化を図ろうという試みは素晴らしいと感じました。
館山市には海も山もあり景色がきれいなので、確かに宿泊施設に泊まった際にはゆっくり散策するのも楽しいだろうなと思っていました。なので、グリスロのようなゆっくりと景色を見ることができるモビリティに乗って付近を散策するのも楽しそうだなと思い動画を拝見しました。歩いて向かうと少し遠いと感じるところでも簡単にいけると思いますし、グリスロならお年寄りから子どもまで誰でも乗車可能なのでいい乗り物だなと思いました。
また、自転車ラックバスというものも紹介してくださいました。最初に言葉だけ聞いた際には、「バスの中に自転車が入るのか?」と思っていましたが、前に荷台がついていて、とても面白い考え方だなと思いました。

ちなみに、どちらのモビリティに対する考え方も、マイクロツーリズムの促進にも寄与するものだと思いましたが、まずは観光よりも地域住民の日常生活の足を優先させることが目的だとのお話でした。こうした住民を優先させる理由は、もともとJRが公共交通機関だったことが背景にあるのでしょうか…。

最後になりますが、私も南房総エリアに住んでいるので、今回の館山市での過疎化に対する取り組みや地域の活性化についての現状を聞き、自分の住んでいる地域や地元の企業がどのような活動をしているのか改めて意識してみようと思いました。

マイクロツーリズム促進につき、コースは地域特有の資源を巡るとのこと

マイクロツーリズム促進につき、コースは地域特有の資源を巡るとのこと

観光学部卒業生 丸山 ケン太

私は、学生の頃に、南房総市の観光協会でアルバイトをしていました。その際に、業務の一つとして高速バスのチケット手配や発券を経験しました。その時のバスがジェイアールバス関東の房総なのはな号でした。
その経験もあって、ジェイアールバス関東の活動を知りたいと思い、ゼミ活動の調査の際には、西岬モビリティプロジェクトの見学に同行しました。
そのこともあり、今回お話くださったジェイアールバス関東館山支店の竜崎支店長のお話は一度お聞きしたことがありました。その際に、グリスロの体験乗車もさせて頂きました。その時のもっとも印象に残ったことは、「本当に、静かな乗り物だな…」と感じたことです。また、小型だったので、こうした静かな動きと相まって、古くからある住宅地の中にある「狭い道を通るのには適しているな」と感じました。そう考えると、館山市だけではなく、房総半島の漁村の景観にあっている乗り物だとも考えます。

ただし、実証実験だったとはいえ、「実際に運営するまでは大変な道のりだったのではないのか?」と聞いていて思いました。結果として、新しいモビリティとして「グリスロを導入することが決定しても、継続的に運用していく予算がない」ということで、現在は運用していないということでした。ただ、いつかまた再運行してもらえるといいなと思います。

ちなみに、ここまで早いスピードで社会実装のための実証実験が行えたことは素晴らしいなと思います。現在、まちづくり系の会社で働いていて、実証実験が動き出すまでの時間が、非常に悩ましいところだと感じたからです。そうした点では、今回のお話は、これからの日本の地方都市の構図を変えてくれる可能性を秘めている貴重なお話だと思いました。

グリスロの運転手が地域特有の魅力について紹介してくれました

グリスロの運転手が地域特有の魅力について紹介してくれました