フィールドワーク
2023.07.22
第2クォーターに実施しているフィールド基礎演習aでは、地域の拠点となる施設のブランディングとその拠点を中心とした地域全体のブランディングの手法と実践例について学んでいます。
今回は、地域の産業拠点となる企業が担うべきブランディング手法と地域ブランディングをする際の機運の醸成方法などについて、実践の現場で活躍されている株式会社コトヴィア|COTOVIA Inc.の代表取締役・荻原実紀さん(以下、荻原さん)からお話を伺いました。
とくに、愛媛県宇和島市での実践事例を中心に、地域を巻き込んで活動するにあたり、地域の課題を「自分ごと化して考える」ことの重要性について学びました。そうした授業に参加した学生の報告を介して、内容をご紹介させていただきます。
自分の人生をデザインするためのコンセプト
地域ブランディングの本質
○観光学部4年 石田 茜音
今回の自主ゼミでは、荻原さんから、千葉県東金市における中心となる観光施設の魅力づくりにおいてヒントとなるお話を伺いしました。荻原さんの地元である愛媛県宇和島市での4つのブランディング事例をもとに、地域の魅力創出について考えることがテーマです。
私が、とくに印象に残っているお話は、宇和島信用金庫のブランド化・CIプロジェクトと宇和島市の「うわじまシティブランディング事業」の事例についてです。宇和島信用金庫のブランディングは、地域密着型の金融機関といった一企業のブランド化とコーポレートアイデンティテ(CI)の確立を目指しているのに対し、宇和島市のブランディング事業は宇和島の魅力をシティセールスとして全国に発信することを掲げています。2つの事例を比較することで、ターゲットをどこにおくかによって、ブランドマーク一つとってもコンセプトが異なり、どのようにデザインするのか、そして誰がどのように決めていくか、その手法が異なることがわかりました。例えば、ブランドマークのデザインを「地域住民から募集するべきなのか」「専門家に依頼するべきなのか」「社員や市民になるべく参加してもらい、その評価も参考にするのか」など意味合いが異なります。目指す目的によって、ブランドの核となるデザインされたシンボルマークが決定されていくプロセスが大きく変わってくることに、面白さを感じました。
また、宇和島信用金庫の価値を高めていくブランディングにおいて、地域貢献プロジェクトとして、地元の子どもたちに歴史と文化を分かりやすく伝えるために作成された「絵本づくり」のお話は、大変興味深く感じました。とくに、絵本をきっかけに、「宇和島市と歴史姉妹都市である宮崎県仙台市や長野県千曲市との新たな人的交流や経済交流にまで発展した」という地域の垣根を超えたつながりへと広がったことに驚きました。それぞれの地域が有する資源の「無限の可能性」を知ることができました。
ちなみに、近年、多くの企業でCSR活動が行われるようになり、その一環として「地域社会への貢献」というキーワードは注目されています。私自身も就職活動をする中で、たくさんの「地域社会への貢献」活動を耳にしました。ただ、「地域社会への貢献」として、まちづくりに取り組む際には、必ずそこで暮らす住民がいます。しかも、その住民は年代も性別も考え方も多種多様です。そんな方々の理解と協力なくしては、まちづくりは成功しません。これは、私も東金市の商工会議所や地元住民の方々と一つのイベントを創り上げた経験からも理解してきたつもりです。今回の荻原さんのお話の中に「仕事をする上で大切にしていることは「自分ごと化して考える」」というお話があり、まさにこのことだなと自分の活動を振り返ることができました。これから観光産業に携わっていく中で、私も大切にしたい考え方であると思っています。また、こうしたまちづくり活動が、イベント開催時などの一時的な効果ではなく、その地域の資源を活かし、その地域に関わるすべてのステークホルダーが恩恵を受けられる長期的な目線でのまちづくりにならなくてはならないと改めて学ぶことができました。
ミヤモトオレンジガーデンの商品(愛媛県八幡浜市)
宇和島信用金庫地域貢献事業の一環、絵本作り
○観光学部4年 盧 彦名
今回、荻原さんから、企業のブランド作りと地域ブランディングに関わるお話をうかがい、地域活性化が課題となっている日本社会においては、地域をブランド化していくことが求められていることに気づきました。
今回のお話の中で印象に残っていることは、宇和島市の「うわじまシティブランディング事業」についてのお話でした。
とくに、「うわじまシティブランディング事業」は、宇和島市の魅力化計画のもとで「宇和島市内外の人たちが、宇和島市のことを「好きになる」「さらに関わりたい」「共創していきたい」」ということを目標として、まちの魅力化のためにいろいろな活動に取り組んでいることを知りました。例えば、地域の関係人口を増加することを狙って、宇和島市の人的資源、自然資源、文化資源、産業資源、生活資源を繋いで、新たな魅力を作り上げ、宇和島らしさの形成を創造しているとのことでした。
また、ブランドとは、「まちの魅力や個性を可視化したもの」であるという考え方のもとに、宇和島市のブランドをデザインする時に「どういったイメージを作るのか」「どういった機能を果たすのか」「どういったシステムを作るのか」ということを考え、緻密にデザインされているというお話をうかがい、地域ブランディングにおいて重要な取り組みのステップを学ぶことができたと思っています。
今回のお話を聞き、「「知りたい」「買いたい」「行きたい」「関わりたい」「住みたい」「住み続けたい」の流れ」を作りあげることは、地域活性化における地域ブランディングの有効な手段であることを認識できたと考えます。私たちも、東金市で学ぶ中で、歴史的な建造物として八鶴亭や多田屋本社社屋などを見てきました。また、地産地消の場である道の駅みのりの郷東金なども見学しました。ただ、私は、こうした貴重な資源を結び、観光産業の創出や関係人口を増加に寄与する取り組みに関わる機会はありませんでした。残念でなりません。本当は、宇和島市のように地域ブランドに注視して、東金市の魅力を可視化することをプロジェクト型の授業を通し、実践しなければならないのだと実感しました。とくに、そうした授業の過程で、「東金市に暮らす人々にどのような生活を送ってもらいたいのか」「東金市に来る人々にどのような体験価値をしてもらいたいのか」「東金市のブランドアイデンティティは何か」ということについて改めて考えなければならないと思いました。
最後になりますが、人口減少時代においてはどんな地域でも地域全体で共創していくことが必要だと思います。今回のお話を参考に、いろいろな地域の活性化について考えていきたいと考えます。
愛媛県宇和島市シティブランディング事業の検討会議の様子
学生からの質問に対し誠意を持って答えてくれました