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第13回ど・ゼミ~20年後の地域を活性化させるインクルーシブな「居場所」づくり~

自主ゼミ

2021.07.29

 6月19日(土)、「まちづくり」「まちおこし」に関する企画や運営といった仕事に日々従事している“その道のプロ”をお招きし、月1回のペースで開催する自主ゼミ(大学の授業外で学生たちが自主的に行うゼミ活動)の第13回目を開催しました。今回も、観光学部から教員1名が参加しました。

 第13回目の“その道のプロ”は、東京を中心に子どもの遊び環境を創出している一般社団法人TOKYO PLAY(以下、TOKYO PLAY)にてコーディネーター(プレイワーカー)をされている矢野真利那さんです。

 公園での子どもの遊び環境作りや子どもの遊び環境を維持するためのバックグランドの整備活動の話を起点とし、みちあそびのための公共空間の利活用方法とそのための対策、インクルーシブな遊び場作りとその必要性など、多岐にわたる矢野さんの活動とその意義をご紹介いただきました。その上で、子どもの遊び環境における現状の課題や「子どもの遊び環境作りを地域全体で取り組むことで、20年後の地域を活性化させる」といったビジョンについても情報共有いただきました。

 また、参加学生たちは、上記のようなお話に共感するだけでなく、今回の勉強会の最中に何度か登場してきた矢野さんの2児の母としての勇姿を見て、自分たちが関わっていこうとするまちづくり、まちおこしの中で、次世代を担う子どもたちと共存していく真意を学んだようです。

 今回は、残念ながら、観光学部の学生は勉強会には参加できませんでしたが、後日、情報を共有させていただきました。その中で、「表向きの観光だけでなく、「観光地においても次世代を担う子どもたちが住み続けられる場作りが必要なのだ」と改めて実感した」という感想などが話題となりました。

 今回も、こうした多くの示唆をいただける機会となりました。
 

地域ぐるみで子どもの環境を作る活動


●福祉総合学部4年 上長根大嵩

 今回の自主ゼミ「ど・ゼミ」は、TOKYO PLAYにてコーディネーター(プレイワーカー)をされている矢野さんにご登壇いただき、子どもの遊び環境を通じた地域のコミュニティー作りについてお話を聞かせていただきました。

矢野さんたちの取り組みは、家庭や学校といった子どもたちにとっての居場所となる閉鎖的な子育て環境ではなく、学校など家庭外の場所でも関わることのない他者(子ども同士の関わりだけでなく、子どもと大人という世代を超えた関係づくりも含め)との繋がりができる仕組み作りです。そして、そこで形成されたコミュニティーをもとに、地域やまちで子育てをしていくことが重要だとおっしゃっていました。

 さらには、私たちの中の一人からでた「どれくらいの歳月を前提に、そうしたコミュニティーを持続させようとしているのですか?」という質問に対し、矢野さんは、「地域での子どもの居場所づくりの中で育まれたコミュニティに属する子どもたちが、遊び場を基点に住んでいる地域を好きになって愛着ができることで、「将来もここで暮らしたい、地域のために何かしていきたい」などといった、気持ちが生まれれば嬉しい」と言っていたことが印象的でした。実際に、矢野さんがプレイワーカーをしていた公園で育った子どもが、新たな地域づくりに参加しているという話も聞いて、「子どもの頃の思い出が将来のコミュニティの基礎となる」のかと改めて学んだ次第です。

 話は変わりますが、矢野さんたちの活動は、元手となる資金をあてにせず、色々な場所で、子どもたちが自分たちで考えて居場所を創って遊ぶことをモットーにしているとのことでした。そのこともあり、子どもの創造性も高めていける活動だと思いました。地域の中には、大人が作った子どものための遊び場というのは数多くありますが、そうした公園や建物に配された施設で遊ぶことでは得られない「人と人との繋がりが創られている」ことに感心しました。
 とくに、矢野さんのお話の中で、「インクルーシブ」な遊び場づくりを目指しているというお話がありました。「インクルーシブ」とは、人間の多様性を尊重する共生社会を目指した理念です。
 先に挙げた「人と人との繋がりが創られている」活動も、本来同じ地域の子どもたちとは、障がいがあるなしに関わらず、みんなが自然に交わって遊ぶ「インクルーシブ」な環境を目指しているそうです。健常者の子どもたちも、幼い頃から障がいのある子どもたちと自然に交わることで、「障がい=なんかわからない、関わりたくない」という気持ちを持たずに互いの理解に繋げられると考えているからだそうです。
 障がいのある子どもというと、小学校や中学校でのいじめなどがメディアでとりあげられていますが、こうした活動を通し、理解を深めることで、少しずつでも減少していくことを願っています。
 

遊び環境づくり=子供の記憶づくり


●環境社会学部4年 渡邉明央

 今回の自主ゼミ「ど・ゼミ」では、子供の自由な遊び場をつくり上げるプレイワーカー、またプロジェクトコーディネーターとして活動されている矢野さんにお話をお聞かせいただきました。
 プレイワーカーとは、子どもの遊び場の環境を整えたり、子供と大人をつないだりと、子どもの遊び場をコーディネートする専門職で、日本では主に「プレーパーク」と呼ばれる場で活動しているとのことでした。
 まず、私は、子どもの遊び場を専門的に考え、運営に関わる人がいることに驚きました。というのも、子供の遊びや遊び場について考えるのは親のすることだと思っていたからです。ですが、今回のお話を聞いていくと、親だけではできない、専門職であるからできるものがあることに気づかされました。そのうちの一つが「みちあそび」という取り組みです。これは、「交通量の少ない道路を歩行者天国化して解放し遊び場にする」「人が行きかう空き地や緑道、公園の園路などを利用して一時的な遊び場をつくる」活動だということでした。地元警察と交渉したり、市役所に申請するといった行為が必要になることを改めて知りました。まさに、これは親だけではできないことだと思います。
 また、この取り組みは「地域の人たち皆が、道で遊ぶことを通して、それぞれの居心地のいい場所を考えるきっかけをつくる」ということを目指し、取り組んでいるプロジェクトとのことでした。私が思うに、道とは、様々な人が行きかう場所であり、そんな道で行われる「みちあそび」には思いがけない交流が発生すると思って話を聞いていましたが、どのようにすればそのきっかけが作れるのかはわかりませんでした。ただ、矢野さんのプレイワーカーとしての活動紹介の中で「小学生と高校生と大人が焚火を囲んで話をする場面が日常的にある」というお話があり、そういった世代を超えた交流が可能な仕組みづくりに感心しました。
 今回のお話を聞くまで、子供の遊び場というものは、大人になった自分には関係のないものだと考えていただけに、今回の多世代交流を生むきっかけとなる遊び場づくりのお話は、多くのことに気づかされました。この気づきを自分の研究など今後に活かしていきたいと思いました。
 

世代をこえた交流を生み出す環境


●国際人文学部4年 漆山ありさ

 今回、私は、自主ゼミ「ど・ゼミ」に初めて参加しました。企業の地域連携活動や地域支援活動を紹介する自主ゼミ「よ・ゼミ」とは異なるまちづくりの手法を紹介してくれる勉強会でした。

 そんな今回の自主ゼミは、プレイワーカーの矢野さんに、子どもと遊びの観点から見たまちづくりについてお話を伺う会でした。
 矢野さんは、日頃より、プレイワーカーとして、「プレーパーク」という「子どもが自由に遊ぶことが保障された遊び場」を作っていらっしゃいます。実際に子どもたちが「プレーパーク」で遊んでいる風景の写真を拝見させていただき感じたのは、自分の「得意」を発見するのにはとっておきの場所だということでした。一般的な公園の中に、場と道具が用意され、そこから先は自由で安全な環境が整えられています。自分の顔に落書きしてみたり、木でオブジェを作ってみたり、水上に家を作ってみたりと子供たちの芸術性や柔軟性が大いに発揮される空間となっていました。これは「プレーパーク」ならではだと感じました。
 また、子どもが、多くの人と安心して関われる点も、「プレーパーク」の良さだと思います。私も、矢野さんのお話を聞いて、大学生ながらに「「プレーパーク」に行ってみたい!」という気持ちになりました。その背景には、子どもたちが、普段は関わりのない他の地域の子どもや年の離れた大人とも話のできる環境が整えられているからです。子供達が遊ぶ場で、「プレーパーク」のように、子どもたちの遊びを見守ってくれている大人の存在があることはとても重要だと感じました。さらにいうと、こうして出会った人々とは、成長してから抱える悩みを共有することもできるのかなと思いました。「あの時、「プレーパーク」で出会ったあの人に相談してみよう」「そうだ!!昔、遊びに行っていた「プレーパーク」で誰かに話し聞いてもらおう」などの選択肢も広がると思うからです。ただの遊び場にとどまらず、「居場所」として子供たちの心に残り続けるプレーパークは、まちづくり・地域づくりにおいて、大きな影響を与えてくれるものだと思いました。
 ちなみに、矢野さんは、公園の一角や広場を利用した「プレーパーク」の他に、交通量が少ない道路を歩行者天国化し、子ども達の遊び場に変える「みちあそび」活動にも携わっています。道路は、誰もが行き交う場所であるため、たまたま通りかかった人同士が楽しんでいる姿も写真で拝見いたしました。その光景を見て、地域のあるべき姿というものが映し出されていると思います。
 こうした「プレーパーク」や「みちあそび」は、既にある場所の有効活用になるだけでなく、周辺に住む人々がより地域活動に参加しやすい雰囲気を作り出すのに効果的だということを学ばせていただきました。そして、子どもの遊び場という視点でも、地域コミュニティの形成の場という視点でも「プレーパーク」が一つの選択肢として広まっていくべきだと感じました。
 

子供たちが考える「居場所」のかたち
 

恒例の集合写真