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よ・ゼミ 第3回 地域社会にナイトタイムエコノミーを!!(森ビル株式会社森美術館<アートで地域のコミュニティづくりに貢献>)

自主ゼミ

2021.08.19

 学生たちが、大学での<学び>で得た「まちづくり」や「まちおこし」に関する知識や、自ら取り組んできた地域連携に関わる<学び>を、就職後(社会へ出てから)の活動の中でどのように実践・応用していけば良いのかを体感するための自主ゼミ「よ・ゼミ」の第3回目を2021年6月26日土曜日に実施しました。
 第3回目は、森ビル株式会社森美術館のシニア・コーディネーターの田篭美保さんにご登壇いただきました。
 まちづくりに興味を持つ学生たちの中には、地域経営の一端として「自分たちが楽しめる地域とはどのようなものか?」について考え、<ナイトタイムエコノミー(深夜帯に行われるさまざまな経済活動)>の導入について興味を持って調べている学生もいます。とくに、観光地・鴨川で学ぶ学生たちは、<ナイトタイムエコノミー>の普及推進について真剣に考えています。
 そこで今回は、森美術館を当ゼミにお招きし、アートとまちづくりの関係性についてお話しいただくだけでなく、森美術館の活動の一端である<六本木アートナイト>についても取り上げていただきました。<六本木アートナイト>というイベントの運営方法や仕組みづくり、イベント当日以外の地域との連携方法など、色々な課題との向き合い方について、学生たちは多くのことを学んだようです。

 このような貴重な機会に、観光学部からは学生7名と教員1名が参加しました。

● 観光学部2年 木場大智
 僕は、「観光メディア」という授業で、<ナイトタイムエコノミー>をテーマとしたフリーペーパーの記事を制作しています。そこで、今回の自主ゼミ「よ・ゼミ」で、<ナイトタイムエコノミー>に関連するお話も伺えるとのことでしたので、初めてこの自主ゼミに参加させていただきました。
 今回は、東京都の六本木にある森美術館が取り組んでいる地域連携活動について、シニア・コーディネーターの田篭さんから伺いました。その中で、とくに印象に残ったことが二点あるので皆様にも紹介しておきます。
 一つ目は、六本木ヒルズ、ミッドタウン東京、国立西洋美術館といった六本木に点在する商業施設や美術館などが基点となり、六本木を盛り上げるために行われている一夜限りのアートイベント「六本木アートナイト」についてです。
 2003年に六本木ヒルズができたことから、六本木ヒルズにアート作品が設置されはじめ、「アートの街」として世界のアートファンから注目されるようになったそうです。そのため、アートを求めて観光客が訪れることもあったそうです。そこで、東京の夜も堪能してもらうため、東京都と連携して、「六本木アートナイト」を立案し、2009年から開催実行しているそうです。多いときには、来街者数が80万人を超えるほどの大きなお祭りです。
 開催当初のメイン・アーティストは日本人だったそうですが、2019年には海外のアーティスト(チェ・ジョンファ氏(韓国人アーティスト))をメイン・アーティストとしてお呼びし、「たくさんの人々をアートで繋いでいく」ことをテーマとして、六本木界隈にお住いの地域ボランティアの方々と協力して作成する作品を作りました。こうした何年にも亘る活動が功を奏してか、日本だけでなく国際的なイベントとなり、六本木アートナイトの夜が賑わったそうです。
 また、華やかな夜のイベントを実施するにあたっては、事前の交渉やイベント後の後処理(掃除や片付けなど)が昼間のものよりも大変だということをおっしゃっていました。近隣住民の方にも迷惑になってしまうことが予想されるので、<ナイトタイムエコノミー>を展開するには、こうした地域へのきめ細かな事前事後の配慮が重要になってくるとのことでした。
 二つ目は、田篭さんへの質問コーナーにおいて、「日本のナイトタイムエコノミーが海外のように発展するためにはどうしたらいいか?」という内容の質問をさせていただいた際の回答です。
 この質問に対して田篭さんは、「ナイトタイムエコノミーがなぜ必要かという目的をはっきりさせること。それには「楽しむもの、遊ぶもの」のようなものも必要かもしれない」と答えてくださいました。確かに、田篭さんのおっしゃる通り、「なにか「楽しむもの」や「遊ぶもの」がないと人は行動しない」し、人が「楽しむもの」や「遊ぶもの」を目的とするためには「その情報を知るきっかけも必要」だと感じました。
 以上となりますが、今回の田篭さんのお話からはいろいろなことを学ぶことができました。まず、アートによって住む国も言語も違う人たちを繋げられるアートのすばらしさ。それと、<ナイトタイムエコノミー>を実施するために必要な対応なども知りました。ですので、今後、大学の学びの中で<ナイトタイムエコノミー>を促進する企画などを開催することがあれば、田篭さんのお話を参考にしていきたいと思います。
 

チェ・ジョンファ氏がボランティアの方々と協力して制作した作品の前で記念撮影をしている様子


● 環境社会学部3年 杉山清宏
 企業が取り組む地域支援や地域連携について学ぶ「よ・ゼミ」の第3回目となる今回は、森ビル株式会社森美術館学芸員の田篭さんをお招きし、美術館による地域連携活動についてお話をうかがいました。机に自由に落書きをしてもらいそれを作品として展示する「オスカー・ムリリョ」という作家の展覧会、開発隣接エリアの西新橋をフォーカスした「まちと美術館プログラム」、森美術館を基点とした一夜限りの祭典「六本木アートナイト」など、多くの地域との連携活動について拝見させていただきました。
 その中でも、私が卒業論文で「お祭り」について研究をしていることもあり、東京都と連携し東京都のナイトタイムエコノミー政策の一環として行われている六本木アートナイトというイベントについて非常に興味を持ってお話をうかがうことができました。ただ、最初は、六本木のような高層ビルが並ぶ地縁社会の感じられないコミュニティが形成されているエリアで「お祭り」が成立するのか不思議でなりませんでした。
 そのように思った理由として、田篭さんが、今回の自主ゼミの最初に、森美術館が六本木ヒルズ森タワーという高層ビルの53階にある美術館だという話をしてくれたからかもしれません。また、都市再開発の新しい形の一つとすることと、「現代性」と「国際性」を融合した美術館だと説明されたことが、私の考える「お祭り」に携わるコミュニティの概念とはかけ離れたものだったからです。

 ただ、六本木アートナイトについてお話を聞いていると、私の地元の「お祭り」と周辺環境は異なっていても、「お祭り」への携わり方や地域共同体を構築したいという思いは変わらないのだな、ということがわかりました。また、私の地元の「お祭り」は若者の参加人数が減ってしまい困っていますが、その原因や対策などについて、六本木アートナイトのような新しくできた「お祭り」を通して見つめ直すことで、自分なりではありますが多くの参考にすべきことを考えるきっかけとなりました。

 
 

アートナイト開催前にプレイベントとして一週間毎日違う場所に現れるRED BALL

●観光学部 3年 呉屋 美晴
 今回は、最先端のアートシーンを展示している森ビル株式会社森美術館様の田篭さんからお話しを伺いました。
私は、将来、地元である沖縄県の地域振興に繋がる活動をしたいと考えています。また、普段から自分のアイデアや価値をイラストで表現したり、実際に企業のブランディングや美容室などのロゴやイラストの制作をしており、アートを身近に感じています。そのこともあり、今回、田篭さんからお話を伺えたことは、私にとってとても貴重な体験でした。自分自身の活動と照らし合わせながら話を伺うと同時に、今後の自分の活動について考えるきっかけにもなったからです。
 今回、初めて自主ゼミ「よ・ゼミ」に参加して一番印象に残ったことは、「黒人差別の事件<Black lives matter>後の抗議活動の中で、多くのパブリックアートが壊された」というお話です。ある時は賞賛されていたものが、一つの事件をきっかけに、見る角度や考えが変わることがあるという事実を突きつけられました。アートというのは、10人いたら10通りの見方があるように、一人一人価値の度合いが異なります。「感じる」という世界の中には、正解も不正解もありません。このような出来事は、壊されてしまったアートを制作した人のことを考えると心痛む部分もありますが、同時に、アートを見た人が「「行動」という表現方法で自身が感じたことや考えたことを表した」と私は捉えました。壊すという「行動」が良いものだったのかは分かりませんし、私の見解で誤解を招いてもよくないので、言及はしませんが、アート作品だけではなく、私が属している観光という分野自体も、実はそうした振れ幅のあるものではないのかと感じたので印象に残っています。
 また、地域振興の中にアートを取り入れることは、今までの私には存在しなかった視点です。とくに、今回のお話を聞いて、アートを設置するときには、設置場所となる地域の時代背景や地域住民の考えなど、様々な点を考慮しなければならないことを学びました。先の<Black lives matter>の話とも繋がりますが、「表現の自由が存在するなら、見た人の感じ方の自由が存在する」からだと思います。ただ、そのことを考えると、地域振興に取り組む上で、アートは少しリスキーな側面も持ち合わせているのかとも感じましたが、新たな地域振興のかたちとして考えることができました。
 私の今後の目標は、地元である沖縄県で、ポジティブインパクトを与える活動を展開することです。私にできることを通して、「人々の幸せを生み出す」そんな活動ができたらいいな、と考えています。今回、この自主ゼミに参加させていただき考えたことを今後の活動にも取り入れ、ハイクオリティなパフォーマンスを発揮できるよう努めてまいります!!
 

六本木アートナイトの準備風景

恒例の集合写真