第14回ど・ゼミ~地域ブランディング、そのための「発想の転換」~

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 8月21日(土)、「まちづくり」「まちおこし」に関する企画や運営といった仕事に日々従事している“その道のプロ”をお招きし、月1回のペースで開催する自主ゼミ(大学の授業外で学生たちが自主的に行うゼミ活動)の第14回目を開催しました。今回も観光学部から学生4名が参加しました。

 第14回目の“その道のプロ”は、東京を拠点にU・Iターン人材支援事業を経験した後、地元である長野県にUターンし、長野県から全国の農業生産者に寄り添ったかたちで伴走支援を行っている地域産品プランナーの山岸直輝さんです。
 東京での人材支援事業の活動の経験から始まり、そこで見えてきた地方の課題に配慮した農業ブランディングの手法(規模の小さな農業生産者にもメリットある6次産業化)やブランディングの波及効果(話題性とそれによる継業支援の可能性)など、多岐にわたるお話を伺いました。
 学生たちは、観光学部の授業でも実践的に学んでいる地域ブランディング成功のヒントを教えていただくことで、観光産業をいろいろな点で下支えしてくれている農業生産者との関わり方を学ぶとともに、観光地と農業、観光地と産業を繋ぐための「発想の転換」について考えるきっかけをいただきました。

 


「○○と△△」という意外な組み合わせから地域ブランドを開発
 

● 環境社会学部4年 梅井舜
 今回ご登壇いただいた山岸さんは、全国の農作業に従事する地域人やその人々が従事する産業に伴走するかたちで活動をされている方です。全国各地の農業の6次産業化やブランディングに寄与するプロデューサとして、株式会社MISO SOUP(以下、MISO SOUP)という会社で活躍されています。ただし、この会社での活動だけではなく、株式会社りんごと(以下、りんごと)という会社を経営されており、自分の地元である長野県を拠点とし、その地域の特産として有名なりんごを使った事業にも取り組まれています。
 そんな山岸さんのお話は、「「発想の転換」が<まちづくり>において一つポイントになる」という示唆を与えてくれました。それは、下記の二つの話を伺ったことがきっかけです。

 まず、MISO SOUPという会社での地域資源を活かしていく活動のお話、とくに、ここでの事業の一つとして、香川県のうどんを「どう盛り上げていき、広めていくか?」という課題がクライアントから出された際の取り組みが、「「発想の転換」が<まちづくり>において一つポイントになる」と実感させてくれました。
 その際に、「ただし、香川県のうどんを扱う飲食店は、今や全国規模で展開しています。今さら盛り上げたり、広めたりする必要があるのでしょうか?」との疑問が浮かんだようです。この問いかけを真剣に考えると、「香川県のうどん」というざっくりとした全体像であれば、今さら広める必要はないくらい知れ渡っていることがわかるわけです。では、山岸さんはどういう解答を出したかというと、うどんの価値を食べるものから価値転換したそうです。とくに、「財布の種類を変える」ことに尽力したとのことでした。香川県のうどんの価値を広めたいのであれば、子どもたちにうどんの作り方を教える教育キッドを作り、販売すればいいのだという価値転換を行なったわけです。こうした価値転換こそが、実は<まちづくり>にも必要なのだと思いました。
 また、りんごとを設立したきっかけになった事業のお話も、「「発想の転換」が<まちづくり>において一つポイントになる」ことを教えてくれました。長野県の農業が、2019年度の台風で被害を受けた際に、「農産物(果樹栽培)を生産する現場を「復旧」させるのではなく、新しいものを生み出すきっかけとしよう」という発想の転換をした際のお話です。
 普通は、台風を経験し、果物が木から落ちてしまうと地域の果樹農家は落胆してしまうそうです。また、どうしても以前の姿を取り戻そうと躍起になるとのことですが、山岸さんは「台風でも前向きに取り組める産業を作りたい」と思ったそうです。そして、台風の影響で一般の市場には並べられないB級品のリンゴでも従来よりも高く販売できる仕組みづくりを行い、その売り上げを次の産業作りへと繋げていく工夫をしたとのことでした。こうした考え方も、<まちづくり>においても意義あることなのかもしれないと思いました。
 最後になりますが、私は、こうしたお話を伺いながら、自分の将来を思い描いていました。現在、地元を離れ千葉県の大学で勉強していますが、いずれは地元に戻り、山岸さんのように地元で活躍できる人材に成長したいと思っているからです。そのためにも、地域社会の生活の中で固まってしまった発想を転換できるよう、柔らかい考えのできる人材になりたいです。



財布の種類を変えさせるアイデア商品づくり


● 観光学部3年 藤井 陽菜子
 今回、はじめて自主ゼミ「ど・ゼミ」に参加させていただきました。
 今回は農家伴走型プロデューサーの山岸さんのお話しをお聞かせいただきました。
 山岸さんのお話を通して、「モノ単体の価値だけを売り出していくのではなく、(売り出そうとしている)モノと(そのモノを作っている)人や(モノを生み出している)環境を繋ぎ合わせることで新たな価値を作っていく」活動の意義と、その社会的な影響力について知ることができました。
 例えば、「りんごと温泉」、「ホワイトコーンと舞妓さん」などというように、一見接点がないモノや人、環境を繋げ、新たな価値を創出していったお話は大変興味深いものでした。また、私は、観光学部の学生として、地域の名産や観光地に関わる活動も多いので、モノ同士をかけ合わせたり、モノと人や環境を繋げていくプロセスや手法に関しても大変参考になりました。
 とくに、「りんごと○○」を繋げるという活動のお話は印象に残っています。先に例に挙げた「りんごと温泉」(温泉・サウナ施設限定りんごジュース<風呂あがりんごジュース>)での活動以外に、りんご農家に伴走するにあたって、台風によって影響を受けたりんごを消費者のもとへ届ける活動についてお話をしてくださったからです。その際に、「自然災害によって一度崩れたしまったものを元に戻すのではなく、それをきっかけに新しいものを生み出していこう」、つまり、「復旧ではなく復興を」という言葉が印象に残ったこともあります。
 私は、1年生の時に、同じく台風による影響を受けた千葉県館山市の復興ツアーに観光案内を行う学生コンシェルジュとして参加させていただきました。その際に、「観光地の魅力や名産品に、どうしたら興味を持っていただけるのか?」その説明を考えることに苦戦したこともあり、モノを人に売り出すことに苦手意識を持っていました。
 ですが、今回の自主ゼミへの参加を通して、モノの価値を伝えるためには、「そのモノの魅力のみを伝えるだけではなく、他のモノ・ゴトと繋げたり、その背景に着目していくことが重要」だということに気づくことができました。私にとって、こうした学びは新たな発見であり、1年時の反省を就労後の活動の中で活かすことができるのではないか、と感じることができるいい機会となりました。
 また、上記のようなモノを人や環境と繋げていく観光資源創出プロセスを学ぶことは、地元が観光地ではない私にとって、観光資源を新たな視点から考えるきっかけとなりました。
 ただ、最後にこうしたご講演への印象を述べた際に、「観光地ではないところを無理やり観光地化することは、必ずしも良いことではない」というお答えは、衝撃でした。今後は、この観光地化すべき場所の線引きについて、もう少し考えていきたいと思いました。



「ホワイトコーンと舞妓さん」をつなげた発想の転換<京都舞コーン>


● 観光学部4年 丸山 ケン太
 今回の自主ゼミ「ど・ゼミ」に登壇くださった山岸さんのお話を伺い、地域産品プランナーという名称のお仕事があることを初めて知ることができました。
 正直なことを言うと、東京などの大都市圏以外の地方社会で、地域ブランディングを仕事にする、ましてや、株式会社として運営していく組織があることに驚きました。地方社会における先進的なデザインのお仕事は、そのほとんどが、UターンやIターンで地元に戻ってきた人材や地域に移住してきた個人の方が、自治体からの応募などで取り組むというイメージを持っていたからです。しかも、その大部分の業務をボランティア感覚でやっていることが多いことを横目で見ていたこともありました。もしくは、大都市圏で事務所を開業している有名デザイナーに依頼をしていることが多いと、地域に根付いた観光関連企業の方や行政職員の方からお話を伺っていました。下手をすると、発注者側にお金がない! 場合は、専門ではない方がデザインやブランディングをすることを肌身で感じていたためです。
 と言うように、地域ブランディングの仕事をしてみたいと思いつつも、未だ、地域社会のブランディングを仕事としている専門家が地方社会に根付いていない現状を知り落胆している身としては、とても励みになるお話でした。
 しかし、同時に、こうした地域ブランディングの可能性と、それに伴う地域固有のデザインの必要性について、その価値を共有していかないといけない相手は、地域に根付いて暮らしている高齢者だと思うと、とてもハードルの高い商売なのだとも思いました。地方社会では、若者が都市部に流出し減少しているので、価値を共有するにも、地域産品プランナーが一からその価値を教えていかなければならないと思うと難しい職業でもあるのだと思いました。
 ただ、山岸さんは、少しずつでも価値を共有していくためのステップとして、「何かの課題に取り組む際には、地域の中にいる若い人などを巻き込んで教えていく」と仰っており、とても驚かされました。少子高齢化などの影響で地域の過疎化が進む中では、若者の自立が必ず必要になると思いますが、その価値を共有してもらうまでには時間のかかる仕事だなと思いました。
 以上、山岸さんの今回のお話は、山岸さんの地域のブランディング力やそのブランディングを生み出す発想力が面白いということとは別に、地域産品プランナーというお仕事が地域社会の抱える最前線の課題の解決を担っていることを知ることができとても良かったです。
 


地域との関係づくりの鉄則
とにかく現地に足を運んで課題を発見し人を巻き込むことが重要!