ハンガリー研修
2025.09.10
重症患者における口腔ケアの重要性についても学んだ。口の中には多くの細菌が存在し、通常はバランスを保っているが、病原性の強い菌が増えると「バイオフィルム(細菌が集まって作る膜のような構造)」と呼ばれる強固な集合体を形成する。バイオフィルムは薬や免疫の働きが届きにくく、除去には歯ブラシなどによる機械的な清掃が必要である。これが誤嚥(食べ物や唾液が気管に入ること)や気管チューブを通じて肺に入り込み、「人工呼吸器関連肺炎(VAP: Ventilator-Associated Pneumonia)」の原因となることもある。
集中治療室(ICU:Intensive Care Unit)では、唾液の減少や口呼吸による乾燥も加わり、感染リスクはさらに高まる。そのため、口腔ケアは単なる清潔保持にとどまらず、全身の健康や患者の予後(病気の経過や回復の見通し)に直結する重要なケアであることを理解した。さらに、クロルヘキシジン(殺菌作用のある薬剤)や重曹(口の中の酸を中和する作用がある)の適切な使用、口腔環境と糖尿病・心疾患など全身疾患との関連についても学び、今後の看護実践に活かせる内容であった。