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2023年度 ハンガリー研修 19日目

ハンガリー研修

2023.09.04

2023年度 ハンガリー研修 19日目 9月4日

 ハンガリーに来てから2週間以上が経ち、土日は各々自由にブダペスト市内を観光し平日は大学や病院で研修をするという日常にも慣れてきた。帰国まで2週間を切り、ハンガリーでの生活がとてもあっという間に感じている。今週は土曜日に近隣の国オーストリアの首都ウィーンに行き、日帰りで音楽の街を楽しむことができた。日曜日はCapital Circus of Budapestでサーカスを見た。サーカス自体見るのが初めてだったため、そのダイナミックさや会場の熱気にとても感動した。

 今日はブダペスト軍事病院で外傷についての講義を受けたり外傷患者のICUを見学したりさせていただいた。外傷患者のケアではまず入院前の現地でのケアとして気道確保や出血の有無の確認をし、いち早く病院へ搬送できるようにすることが重要である。現地でのケアで重要となるのがトリアージであるが、そのトリアージは患者の主な損傷部位はどこか、損傷の程度はどれほどであるか、全体的な重症度など様々なスケールに分かれており、状況によって使い分けられている。また、現地でのケアにおいて重要となるATLS (外傷二次救命処置:Advanced Trauma Life Support )というプログラムについても学んだ。ATLSは外傷初期治療時に最も大きな損傷を第一に治療できることや、診断名がはっきりしなくてもその損傷への治療に早期にあたること、その患者の病歴を細かく知ることができなくても損傷への治療に取り掛かることなど迅速な治療の提供のために重要となるプログラムである。そして、現地での患者の観察項目として広く知られており重要な指標となっているのがABCDEアプローチである。A(ccA)はAirwaysの頭文字で気道確保、BはBreathingで呼吸の確認、CはCirculationで循環動態の確認、DはDisability and neurological evaluationで脳神経系障害の有無、EはExposure and environmentで外表の暴露と環境で、これらの項目を観察し患者の状態を迅速かつ正確に把握することができる。ABCDEアプローチは主に救急車内で行われることが多いが、しばしば病院到着後に行われることもある。また、小児患者の気道確保では成人と異なり仰向けの状態で首・背中より下の部位にタオルなどを入れ、頭の位置を少し下げることで気道を確保するということについても学んだ。外傷患者が病院に搬送されてきたあとは、救急隊から患者の現在の病状について聞いてから患者に触れ二次治療を開始することが重要であるということを学んだ。ICU見学では外傷患者のICUは事故、外科、内科と3つのエリアに分かれており、それぞれの動線が交わることがないよう一方通行になっていた。日本と異なるハンガリーの外傷ICUの特徴として外科の中でも事故のみを専門として治療するエリアが分かれていることを知った。ハンガリーで生活する中でハンガリーの車やバイクの運転は日本と比べて強引な部分があると感じていたため、そのぶん交通事故件数も多くなり事故を専門に診療する必要があるのではないかと感じた。

 午後は交通事故を想定した蘇生トレーニングを行った。蘇生トレーニング用の人形を使用し心肺蘇生やAED、点滴などのシミュレーションを行い、リアルな交通事故現場での迅速な医療の提供についてより深く学ぶことができた。蘇生トレーニングの中で点滴を腕などの静脈ではなく前脛部(すね)の骨に直接針を刺しており、医師の方に理由を聞くと救急時で静脈を探している時間がないことと、心肺が停止していた場合、循環血液量が不足し十分に薬液が全身に回らない恐れがあるためということだった。交通事故現場という特定の場面における救急医療について自身で行うべきことを体験しながら学びを深めることができたと感じた。

ハンガリーの黄色い救急車

交通事故を想定した蘇生トレーニングの様子①

交通事故を想定した蘇生トレーニングの様子②