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ルワンダ研修レポート

海外研修

2024.03.13

ルワンダ研修レポート

看護学部3年生1名が2月22日~3月13日まで(21日間)、ルワンダ研修に参加しました。
以下、学生のレポートと研修中の写真です。

●始めに 

私は今回の研修において、「ルワンダの医療制度に関する知識を深める」ということを目的として挙げた。
その中でも特に母子間の関わり、母子に対する産前・産後のケアにおいて大きな学びを得ることができたため、今回は「母子と医療」に焦点を当てて述べる。 

 

●活動内容  

・Umucomwiza school teaching 
・Clinic visit(IVURIRO NTUGASAZE) 
・Hospital visit(ADEPR NYAMATA hospital、Rwamagana hospital) 
・Community health workers visit 
・Rwanda University Remera campus visit 

 

●問題だと感じたこと 

今回ルワンダの病院を訪問してみて、母親が子どもを妊娠してからその子どもが育つまでの全ての過程における支援において課題があると感じた。 
例えば日本では経膣分娩、帝王切開分娩共に約1週間は入院をしてから退院となる。 
その入院期間中に新生児は医師の診察、ビタミンK2シロップの内服、先天性代謝異常などの検査。母親は沐浴や授乳指導などを受けて退院となる。 
それに対してルワンダでは、経膣の正常分娩であれば基本的には産後約24時間で退院、帝王切開分娩であっても約48時間で退院となる。また、妊娠期間中に病院の定期受診をせず緊急搬送されてくる妊婦さんも多い。 
しかし、産前・産後には身体的にも精神的にも様々な変化が起こることからも支援を受けることはとても重要である。 
今回コミュニティヘルスワーカーの方々の活動に同伴させて頂いた際、妊娠初期から基本的には子どもが5歳になるまで継続的に関わりを持つとのことであった。 
母親に対しては妊娠中の身体の変化、妊娠中の休暇や受診の重要性について伝え、産後は母親の身体の診察、授乳、離乳食に対する支援を実施。 
子どもに対しては産後の身体の変化、疾患に罹患していないか等、母子共に継続的に総合的に関わりを持ち、支援していると仰っていた。 
しかし、コミュニティヘルスワーカーの数は少なく、この活動だけでは十分な収入を得ることができないため、病院勤務と並行して訪問を行っているとのことだった。 
また、5歳以下のルワンダの子どもの約35%は様々な原因により亡くなっているという現状もあると仰っていた。この現実に対して国も2013年から本格的に動き始めており、病院では補いきれない母子のケアをコミュニティヘルスワーカーが補っていると感じたが、まだまだ支援は行き届いていないのが現状である。 
その為、今後母子共により充実した支援を提供していくためには小さい頃からの性教育を行い命の重要性や妊娠する過程における身体の変化を伝えること、コミュニティヘルスワーカーの仕事等を通して病院の受診や妊娠中に休暇を取ることの必要性を伝えること、マラリアの予防接種の導入を促進するなど、様々な方法で多くの母子が安心して妊娠から育児まで行えるよう支援していく必要があると考えた。 

 

●日本とルワンダの違い 

今回病院見学・コミュニティヘルスワーカーの活動を見学して、ルワンダでは「母子の繋がり」を大切にしているのではないかと感じた。 
病院の小児科では両親などの責任者による24時間の付き添いが必要であること、病院内にカンガルーケアのブースが設けられていたこと、コミュニティヘルスワーカーの方々が、子どもがお腹の中に居るときは話しかけることを母親に伝えていたこと等、母親と子どもの絆を育むために様々なことが行われていた。 
日本でも母子間の繋がりを促進するための様々な取り組みはあるが、問題の一つとして“虐待”が挙げられるのではないかと私は考える。 
子ども家庭庁によると、令和4年度児童相談所における児童虐待対応件数は約22万件であり、主たる虐待者は母親が最も多い。日本では産前に妊娠中の身体の変化や妊娠中の食事等について知ることができるマタニティサロン、産後にも育児支援、心理支援をする訪問看護ステーション、市町村単位で保健師や助産師などの専門資格を持つ職員が生後4か月までの乳児のいるすべての家庭に訪問する乳児家庭全戸訪問事業など、様々な制度が存在しているものの、虐待の件数は増加の一途をたどっている。 
これら日本とルワンダの大きな違いとして感じたことが家族構成である。 
ルワンダのどの家庭を見てみてもほとんどが三世帯で暮らしており、子どもの近くには母親以外に祖母が居ることが多かった。 
それに対して日本では少子高齢化が急激に進行しており、それに伴い核家族化も進行している。昔の日本のように家族、そして近隣住民を含めたすべての人で支え合うという社会は消滅しつつある。ルワンダでは産後の育児に関しては祖母から伝承されることも多いという話も聞き、ルワンダでは家族による支援が産後の育児においては大きな役割を果たしているのではないかと感じた。 
今回のルワンダの母子との関わりを見て、子どもの発育には母親・父親という存在が必要であるが、彼らが果たして子どもにとってどのような存在である必要があるのか、産前、産後の過程においてどのような母子の関わりが必要なのかについて再度考えるきっかけとなり、これらからの日本の母子の関わり方を見直していきたいと感じた。 

 

●挑戦になったと思ったこと、今後の課題 

今回の研修では、ウムチョムイーザ学園でリプロダクティブヘルス&ライツ、パブリックヘルスについて講義を行うことができた。 
今回の看護研修は一人での参加だったこともあり、一人で一からスライドを作成しそれを子供たちに伝えた経験は、自分自身の知識を振り返るきっかけになったと共に、どのようにしたら伝わるのか、興味を持ってくれるのか、彼らが一人でも当たり前に伝えたことをできるようになるのかということを考えるきっかけにもなった。 
しかし、母国語ではない言葉で伝えるということから、自分が伝えたいことがちゃんと伝わっているのか不安に感じたり、子ども達の質問に対して的確に回答することができなかった。 
この経験から自分自身、まずはもっと勉強をして自分の言いたいことを話し、相手が話していることをちゃんと理解できるようになりたいと思った。 
しかしそれと同時に、英語という公用語だけでなく、それぞれの持つ母国語を理解するということも重要なのではないかと感じた。 
私にとっての日本語は「話す」だけでなく、「伝える」という言葉の深さを持っている。母国語にしか表せない言葉のニュアンスや表現があり、母国語でしか表せない言葉の繊細さが存在していると考える。ここから、英語という公用語だけではなく、それぞれの国の母国語である日本語、ルワンダ語等を理解し、会話をするということが相手を理解し、伝えるということに繋がるのではないかと考えた。 

 

●次に繋げていきたいと思ったこと 

今回の研修では、クリニック、病院、コミュニティヘルスワーカーの活動に同伴させて頂いたが、それぞれの機関がどのように連携して住民を支えているのかという繋がりまでは見ることができなかった。 
日本では、介護、お金、生活等日常生活における様々な相談を受け付ける窓口である地域包括支援センターが存在する。この窓口が住民と様々な機関を繋げ、それぞれのニーズに応じた支援を提供している。地域包括支援センターが設置された目的は、現在の日本では少子高齢化が進行している中で、高齢者の尊厳を保持し、高齢者自身が住み慣れた地域で自立して生活できるような社会を実現する為である。 
このように、社会情勢と制度や人々の生活は平行して変化していく。これらから、国の保健省、地域の保健センター、病院間などでどのように連携されているのか、これらが果たしてきちんと住民まで繋がっているのかという繋がりを見てみたいと感じた。 

 

●まとめ 

今回の研修を通して、日本とルワンダを比較し、特に母子間の関わり、母子に対する産前・産後のケアにおいて大きな学びを得ることができた。ルワンダにあるコミュニティヘルスワーカーの存在の大きさや家族による支えの重要性など、社会や人口構造により医療や人々の生活は大きく異なるのだということを学ぶことができたと同時に、それぞれの国にはそれぞれの国の文化、価値観やこれまで培われてきた背景があり、ただただ先進国とされている日本の医療制度をルワンダという国で取り入れるのではなく、それらをその国に適応させていくために変化させていく必要があるのだと感じた。 
日本では高齢化が進行し、ルワンダでは反対に多子若年化が進んでいる今、どのように社会が変化していくべきか、どのような制度を取り入れていくべきか、社会と人間が相互関係の上で変化し続けていくことが重要であると考える。

 

 

生後約1カ月の赤ちゃん

コミュニティヘルスワーカーの方々と一緒に家を訪問し、
子どもの発育状態を確認している場面

ウムチョムイーザ学園でプレゼンテーションをしている場面

クリニックで働く看護師さん