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越谷市の視察からみえてくる東金市における<観光地化>の可能性について

フィールドワーク

2023.02.27

第3、第4クォーターで実施したフィールド基礎演習bでは、歴史的な建造物を利活用した地域ブランディングについて学んでいます。
とくに、本学が立地する東金市には、江戸期から大正期にかけて建造された歴史的な建造物が数多く残っている地域でもあるので、こうした魅力ある資源をどのように活用していくべきかを考えてきました。こうしたブランディングについて考える授業を実施している背景には、東金市が歴史的建造物を有効に観光利用してこなかったことが背景として挙げられます。ただ、こうした歴史的な建造物を所有しながらも開発推進事例として取りこめていない地域は、東金市だけではなく多くの地域で課題となっています。
そこで、今回は、東金市より先んじて歴史的建造物を観光に活用しようと乗り出し始めた地域の取り組みと課題、そしてその乗り越え方について学ぶべく、埼玉県越谷市を訪れ、地域の歴史的建造物の活用事例を学ぶための越ヶ谷宿のフィールドワークを実施するとともに、民間企業(株式会社イオンレイクタウン地域活性化推進部、レイクアンドピース株式会社)および行政(越谷市環境経済部経済振興課)の方々からお話を伺うこととしました。

東金市の旧街道沿いと似た構造をもつ日光街道をフィールドワーク

東金市の旧街道沿いと似た構造をもつ日光街道をフィールドワーク

観光学部2年 松山 武司

今回のフィールド基礎演習bの視察で訪れた越谷市で、私が印象に残ったことは、旧日光街道の町並みを保全している活動をハウスメーカー(ポラスグループ)が支えていることでした。

例えば、まち歩きで紹介された江戸時代末期からある<油長内蔵>もその一つだそうです。曳家により移築され再生された物件です。今では地域住民のまちづくり寄合所になっているとのことでした。他にも旧日光街道沿いにあるジビエの飲食店や地域の野菜を販売している八百屋さん、お花屋さんの入った古民家複合施設の<はかり屋>は、越谷市の新たなラウンドマークとなっていました。
他にも、ポラスは関わってはいないかもしれませんが、<本のある蔵・糀屋>や<横田診療所>などの物件を紹介してもらいましたが、こうした歴史的価値のある古い物件を建て壊すのではなく、再生させることは素晴らしい取り組みだと私は感じました。

こうしたことを考えることになったまち歩き後に、レイクタウンにある観光協会の施設に移動し、上記の活動に建築家として関わられてきた株式会社けやき建築設計・欅組代表取締役と越谷市のレイクタウンのまちづくりイベント運営に関わってきたレイクアンドピース株式会社代表取締役社長を兼任している畔上順平さんのお話を聞きました。それぞれ別々の観点から越谷市のまちづくりを支援しているので、どのようにこうしたものが地域全体のブランディングにつながっていくのかは興味をもって話を聞くことができました。
畔上さんのお話を前後してお話しくださった、越谷市環境経済部経済振興課課長のお話やイオンモール株式会社イオンレイクタウン地域活性化推進部長のお話でもそうでしたが、こうしたものを一繋がりのものとして地域ブランディングしていくことは大きな課題だということを知りました。こうした課題は、東金市にも当てはまることが多くありました。ただ、東金市は、新たな価値創出の前に、地域の価値を知ってもらうための情報発信をし、少しでも知名度を上げなければいけないかもしれないとも思いました。こうしたことを行政と一緒に行うことは、私たち学生の取り組むべきことかもしれません。

古民家複合施設として再生された施設群を繋ぐ通り庭で建物の来歴について説明を受ける様子

古民家複合施設として再生された施設群を繋ぐ通り庭で建物の来歴について説明を受ける様子

まち歩き後に観光協会で越谷市のまちづくりについてレクチャーを聴いた際の様子 ( 講演者は畔上順平さん )

まち歩き後に観光協会で越谷市のまちづくりについてレクチャーを聴いた際の様子 ( 講演者は畔上順平さん )

観光学部2年 竹内 春菜

今回の視察では、埼玉県越谷市の「歴史があり落ち着いた雰囲気の宿場町」のまち歩きと「若い人や家族が集まるアクティブな雰囲気のレイクタウン」に関わる活用事例についての講演を拝聴しました。

まず、宿場町では、実際にまち歩きを実施しました。その際の印象は、歴史的な道路幅が踏襲されているため道が狭いのですが、そのわりに車通りも多いため、「歴史的建造物の写真撮影をしながら、ゆっくりと地域を巡りたい観光客にとっては少し不便で危険だ...」というものでした。市民の生活にも迷惑になるのではないかとも思いました。こうした環境に関しては、東金市も歴史的な宿場町だったこともあり同様のことが言えます。ただ、どちらも全国的に有名な観光地ではないためあまり知られていないだけで、伝統的な建造物など歴史を読み解ける地域資源が存在し、観光に利用できるものも多くあります。なので、「まち歩きやサイクルツーリズムを介して紹介していけるように地域環境を整備していけばいいのではないのか...」とも感じました。
また、この宿場町エリアには、交流の場やワークショップ、カフェなど地域と密着した市民の憩いの場であるコミュニティ施設が多くありました。しかも、サードプレイスになっている空間が多く、そこではイベンドも多く実施されているとのことでした。とくに、先に挙げた越ヶ谷宿の魅力的な資源である歴史的な建造物(蔵や庭など)を放置せずに改修し、イベントで利用することで「交流の場が増えるだけでなく、建造物自体の保存する動機付けにも繋がる」とのことでした。結果として、「越ヶ谷宿にしかない歴史、伝統、風情といった「変化しない良さ」の継承にも繋がるのだな」と思いました。

この後、レイクタウンに移動し講演を聴講したのですが、そこでは宿場町とレイクタウンのエリアで印象が分断されていることがわかりました。こうした現状は、多様な側面であるとも捉えることができる一方で、発展の差として悲観的に捉えることもできます。こうした「分断をどう捉えるか?」というところも、東金市の抱えている課題かもしれません。
とはいえ、まずは、こうした光景を視察して、東金市も地域住民や私たち大学生が、魅力ある資源を活用し保存に繋げていく必要があるのだと感じました。

地域のサードプレイスともなっているまちづくり相談所<油長内蔵>

地域のサードプレイスともなっているまちづくり相談所<油長内蔵>

地域のサードプレイスともなっているまちづくり相談所<油長内蔵>

観光案内所も兼務しているリノベーションされた施設<CAFE803>

観光学部2年 地主 南奈

今回の越谷市の視察は、大学の立地する東金市を観光地化する上で参考になることが多くあった。また、越谷市についてパソコンで写真や映像を調べるだけでなく、実際に歩くことで目にする風景や建物を通じてわかる魅力があることを再発見することができました。

まず、伝統的な建造物をそのまま放置するのではなく、新しい建物に再生させ使うことの素晴らしさを学びました。例えば、実際にお店の中に入ることができた<本のある蔵・糀屋>という文庫カフェは、外部から来た人であれば見過こしてしまう隠れ家のような印象を受けましたが、そのおかげでまちの雰囲気を崩さずに地元の方のサードプレイスとなる空間を提供できており、観光に寄与する地域のイメージを作っている素敵な取り組みだと感じました。同時に、このお店の方の「まだ使える建物が少なくなることは悲しい」との声を聞き、住民の憩いの場としても盛り上がっていってほしいとも思いました。
ただ、こうした取組みは点としてしか動いていないのが現状なのでまち歩きを推奨しているということでした。ただ、遠いところには行きづらいのが現状です。そう考えると、こうした地域ではサイクルツーリズムを推進しながら点を繋いでいけばいいのではないのかとも思いました。

ちなみに、観光学部では、<東金ちゃりんこ倶楽部>というものを実施しているプロジェクト型の授業もあるようですが、こうした取り組みにも見られるように、地域の価値を高めるネットワークを組んでいけるのであれば、点も面としてつながっていくのではないのかと思いました。

最後になりますが、私は観光学部の授業でまちおこしについて学んだことで興味が湧いてきたので、今後も積極的に学んでいきたいと思います。

味噌醸造用の蔵を改装した<本のある蔵・糀屋>

味噌醸造用の蔵を改装した<本のある蔵・糀屋>

郵便局だった建物を診療所として使い続けている<横田診療所>

郵便局だった建物を診療所として使い続けている<横田診療所>