This page does not support translation languages. ×

電動車椅子の観光利用促進のための普及啓発と利用課題について考える

ゼミ活動

2023.03.27

金子ゼミは、1月27日・28日と、次年度の活動に向け、自分達の研究活動(「健常者による電動車椅子の観光利用」促進のための普及啓発)を多くの人に知ってもらいたいと考え、横浜市が主催し、横浜未来機構(Yokohama Future Organization)が運営するYOXO FESTIVAL(よくぞ フェスティバル)(「(横浜市の)生活者や来街者たちのウェルビーイングが向上するサービスをいち早く受けられるみらい都市」を体験できる取り組み)に参加しました。
横浜未来機構は、「技術・アイデア」と「地域のニーズ・課題」のクロスオーバーを促進していることもあり、わたしたちの領域横断的な活動に興味を持ってくれた同イベントに参加している企業の方々に、わたしたちの実証実験の協力をしてもらうこともできました。
つきましては、その活動報告を学生の声を介して紹介したいと思います。

YOXO FESTIVAL に参加しました

○ 観光学部3年 坂入 桜花

私たち金子ゼミでは、横浜市内での電動車椅子の観光利用に関わる実証実験とともに、YOXOのイベントの一環として、横浜高速鉄道みなとみらい駅の構内スペースを利用し、電動車椅子の試乗体験会を実施しました。今回は、北海道上士幌町での実証実験では願いが叶わなかった子ども向けの試乗体験ワークショップも実施することができ、子どもが何に対して楽しんでくれるのかを知ることができました。
対象年齢を設けたわけではないのですが、4歳から16歳(高校1年生)の方々に多く利用してもらうことができました。ただ、皆さん、興味を持つ部分が異なっていたので、とても勉強になりました。
今回、利用した電動車椅子は、上士幌町での実証実験の際にも利用したWHILL Model Fと新しくdoog inc.が開発している追従機能付きのGo With。そのこともあり、機種ごとの特性にあわせて、「どういう人にはどういう機種の電動車椅子があっているのか?」ということを学ぶことができました。
例えば、小さな子どもは、自分で行きたい方向に進み、自分でスピードを調整できることに喜びを感じ、自走式の電動車椅子に乗ることを楽しんでいました。なかには「降りたくない!」と言う子どももいたことには驚きました。一方、年齢が上がるにつれて、追従機能に興味を持つ人が多くいました。「電動車椅子はどうやって追従させているのか?」とか、「どういう環境に適しているのか?」というように具体的な質問をくれる方が多くいました。すぐに、答えられた時にはやりがいを感じました。

イベント内で来場者の乗車サポートを実施しました!

ちなみに、こうした会場で、来場者に試乗体験をしてもらうことを通して、どの世代にも共通して練習してもらう必要があるなと感じたことがあります。それは、スピードを出しすぎると制御が難しくなるので、その塩梅を知ってもらうことでした。とくに、今回の会場は、夏休み中に実証実験をおこなった上士幌町とは異なり、人の往来が多かったので、周りの人に危害を加えないか不安だったから余計にそのことを実感できました。こうしたことは、今回初めて試乗した方より慣れた私が乗っていても感じたことなので、試乗した方は皆さん感じたことでしょう。そういう不安を持たせないためにも、コントローラーの操作を事前に十分に指導することがワークショップの指導者には求められるのだと感じました。コントローラーから手を離せば、すぐに電動車椅子は止まりますが、それを知らない人たちは、ブレーキ機能がないため、「わっ!」と思ったら足で止めようとしてしまいます。乗る前に、「手を離せば自動的にブレーキがかかるから、危なくなったら手を離しましょう」と声を掛けても、なかなか実行できていなかったので、実際に乗って体験してもらうときの課題だなと感じました。

以上となりますが、そのほかにも乗車上の課題は多くあるように思います。とくに初めて乗車する人にとっては課題も多くあると思うので、今回の課題を持ち帰り、次回のワークショップに活かせるよう指導マニュアルのようなものを制作したいと思いました。

ワークショップで配布したチラシ

○観光学部3年 倉林 優希

今回の神奈川県横浜市みなとみらい地区での電動車椅子の観光利用に関する実証実験に参加して、多くの発見がありました。本年度、夏季休暇中に行った北海道上士幌町での『健常者における電動車椅子の観光利用に関する実証実験』と比較しながら、スモールモビリティの一つとして電動車椅子を観光利用する際の課題を考えることができたからです。

例えば、北海道上士幌町では、町の中心市街地から少し外れたシェアオフィスに向かうために、住宅地を走行したこともありますが、道が狭い場所を走行することもありました。ただ、そうした道は住宅街にも関わらず、生活者の車の走行する交通路となっており、危ない箇所もいくつかありました。
それに比べ、みなとみらい地区では、歩道が幅広く整備されており、電動車椅子での走行はしやすく感じました。ただ、人通りが多く、「交差点を渡る際に人とぶつからないか?」など都会ならではの走行課題に直面しました。
こうした課題は、どちらもそうなのですが、走りやすいルートを探し、MAPなどに反映させることで、より利用者が安心して電動車椅子を利用することができるのではないかと感じています。ただ、今回の実証実験でも感じましたが、スマートフォンを操作しながらの走行は非常に難しい操作方法です。なので、MAP系のアプリに代わるルート案内のための代替案を開発していかないといけないと感じることができました。
とはいえ、こうしたデジタル社会で流通しているツールは高齢者には難しい課題かもしれません。なので、そうしたツール利用にあたってもワークショップが必要なのかもしれないなと感じた機会となりました。

人通りが多い中での走行の難しさを実感しました

○ 観光学部3年  久保田 駿汰­

今回の電動車椅子の観光利用に関する実証実験における横浜市みなとみらい地区での走行では、すれ違う人がとても人が多くて疲れました。
電動車椅子が走行していると、ほとんどの人はよけてくれるのですが、だからと言って電動車椅子に乗車しているこちら側が何も気にせず進めるかというとそういう問題でもなかったので、気疲れしたということです。
他にも、横断歩道を渡る際の信号機の切り替わりの速さには驚きました。青信号が点滅している際に、電動車椅子の走行速度を最高速度に切り替えても、信号の移行に対し対応できなかったので、危機感すら感じました。もちろん、信号待ちをしている車の運転手は、電動車椅子が走っていることに気づいているので、問題はないとわかってはいるのですが、いつ飛び出してくるのかわからないこともあり、怖く感じる機会でもありました。こうしたことは、決まった敷地内の中で行う走行とは異なり地域内だからこそわかる重要な課題だと思いました。
ちなみに、これは本年度の夏に実証実験を行った北海道上士幌町でも感じたことですが、車が走行している車道から歩道に入るときにあるちょっとした段差がとても危険だと感じました。というように、横浜市のみなとみらい地区は、比較的、電動車椅子が走行しやすいエリアだとは思いますが、スモールモビリティに乗車してみないとわからない課題も数多くあるのだと思います。他の電動キックボードなどのシェアサービス機器に乗車した際にも感じることではないでしょうか?
ただ、他のスモールモビリティと比べて地面に近いこともあり、冬の海辺のエリアでの走行は寒いのだと感じました。北海道上士幌町の実証実験は、夏季休暇中だったのでタウシュベツ湖周辺を走行しても何も感じなかったのですが、今回はいくら進んでも体は温まらないのでかなり寒かったです。とくに、自動運転EVバスに乗車するための待ち時間はかなり寒く感じました。

地面に近いほど海風が冷たいことを知りました

こうしたことを経験したみなとみらい地区での走行の最後に、今回、私たちが参加したYOXOの企画と連動して走行している株式会社マクニカの自動運転EVバスに乗車することとしました。ちなみに、乗車する際には、車高が高いバスに一人で乗り降りするための補助として電動車椅子用のスロープが自動でバスの底面から飛び出してくるのですごいと思った一方、スロープの角度が急すぎて、少しでもスピードを出してしまうと前輪が浮いてしまいかなり危ないなと感じました。
降りる際も、前向きで降りようとすると、電動車椅子の底に飛び出したバッテリー部分がスロープとバスの床の交差する点に当たってしまい降りることができなかったので、バックで降りることとなりました。これも斜めの床面を後ろ向きで走るので危なく感じた次第です。
もちろん、狭い車内で方向を転換するのも、初めての人には至難の業です。また、自動運転バスとはいえ、行き先を伝えたり、降りる場所を伝えるためにタッチパネルを触らないといけないのですが、そうした設備も高い位置に設置してあり電動車椅子利用者が一人で体験するにはまだ検討事項が多いのだと感じました。
今回の実証実験での課題の記録は以上となります。文面からもわかるように、電動車椅子に乗車している人々が安心して観光できるユニバーサルな環境整備はまだまだ必要なことが多いのだと感じた次第です。

少し不安もありましたが一人で自動運転バスに乗車してみました

※写真の自動運転バスについては車椅子の方が一人で乗車することを想定して設計されていないとのことでした。ただし、車椅子の利用者が一人でも乗車できる環境づくりは、今後、自動運転バスが公共交通の一つとして走行する上では、大きな課題かもしれません。

〇観光学部3年  首藤 奈保子­

今回の横浜市みなとみらい地区での電動車椅子の観光利用に関する実証実験では、横浜ランドマークタワー69階にある展望フロア「SKY GARDEN」(以下、SKY GARDEN)にも行ってきました。
横浜ランドマークタワーは、高さ296メートルの高層ビルで、横浜市のシンボル的な存在です。その69階にあるSKY GARDENについては、展望フロアを1周できるようになっており、横浜市を一望できるようになっています。晴れていれば、東京スカイツリーや房総半島、富士山など様々な景色を楽しむことが出来ます。私たちが赴いた日は、あいにくの曇り空だったため富士山を見ることはできませんでしたが、電動車椅子でも不自由なく景色が眺めることができることは確認できました。
また、このSKY GARDENでの走行は、溜まり空間の広さも通路幅も十分に確保されているため、電動車椅子などの走行もスムーズに行えました。そこに設置されているカフェやショップなどもゆっくり過ごせるスペースとなっています。係りの方の対応も、電動車椅子をスムーズに利用出来る環境になるようサポートしてくださいました。とくに、チケット購入からSKY GARDENに上ぼる際のサポートは非常に丁寧なものでした。
以上のように、横浜ランドマークタワー近傍において電動車椅子を用いていくこと自体は問題ありませんでしたが、初めて訪れた者には横浜ランドマークタワーの入口が分かりにくかったことは課題だと思いました。とくに、電動車椅子で走行している方々には、歩行している人向けに設置されたサインが、歩行者の行動により妨げられ、見えづらい環境にあるのだということがわかりました。実は、こうしたことは大都市であればあるほど、見えづらくなるのではないだろうかと感じた次第です。そうした場合には、今回のSKY GARDENのスタッフの方々の誘導などのサポートは非常に良い試みだと思っています。
私たちが関わっている北海道上士幌町は、横浜市に比べると人口が少ない地域なので、人による誘導サポートができない地域かもしれません。なので、そうした状況に対する代替案を私たちは考えていかないといけないと思いました。

SKY GARDENのスタッフの方々サポートには助かりました

※事前学習『まる行:SDGs未来都市として脱炭素化社会を目指す地域の観光インフラづくり (神奈川県横浜市の取り組み事例紹介)