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紀尾井町での2人の出会いがビジネスに発展 卒業生インタビュー

オスピタリテ株式会社
代表取締役 平石奈菜さん(右)
事業部長  金山直美さん(左)(ともに24期生・経営情報学部卒)

光沢が美しい丹後シルクに、金糸で施した松の刺繍──。「和」の要素をデザインに取り入れたランジェリーブランド「N bijoux(エヌ・ビジュー)」を立ち上げたのが、平石奈菜さんと金山直美さん(ともに2019年度経営情報学部卒)です。事業を始めて1年足らずで銀座松屋(東京都中央区)での長期展示販売を実現させるなど、大きな注目を集めています。「この仕事を始められたのも、城西国際大学での出会いと学びのおかげです」とお二人は声を揃えて、これまでを振り返ってくださいました。

入学後すぐに親しくなった二人は、他の学友たちとともにパワー全開のキャンパスライフを送ります。「苦手な英語をしっかり勉強する」という目標を掲げていた平石さんは、米国・カリフォルニアに留学したり、パリでのインターンシップに参加したりと、4年間を通してどんどん現場に飛び込み、力を蓄えました。経済協力開発機構(OECD)の大学生向け研修プログラムに参加した際には、メンバーの中で一番英語が得意だと認められて、まとめ役を務めるまでに成長。語学だけでなく、リーダーシップも身に着けました。

授業ではもともと興味のあったマーケティングだけでなく、簿記や税法なども積極的に選択したそうです。「数字に弱かったのですが、将来必ず必要になると分かっていたので、何とか頑張りました」と平石さん。この時の努力がいま、大きく実っています。ファッションや美容が好きだった金山さんは、それらの事業が例として多く取り上げられるマーケティングの授業を熱心に受講しました。ゼミの指導教員だった佐藤和代教授に見守られながらビジネスの基本を身につけるうちに、二人の中で起業への興味と意欲が芽生え始めました。

3年になった頃には「水着を作りたいね」などと話し合うようになり、「必ず一緒に会社を作ろう」と約束。「それぞれの性格や得意分野、苦手分野が見えてきて、彼女となら互いに補い合えると確信しました」と平石さん。就職活動も起業を見据えて動きました。平石さんはランボルギーニなどの高級輸入車を扱う会社に就職し、マーケティングを担当。医療機関やIT系企業で、営業などの経験を積んだ金山さんは「起業したいと思いながらやりたいことが定まっていなかったのですが、実務をこなすうちに企画したり新しいものを作ったりしたいのだと、気づかされました」と言います。

目の前の仕事に追われながらも、たびたび会っては起業の準備を着々と進め、社会人2年目の2020年12月には「オスピタリテ合同会社(現在は株式会社)」を登記。平石さんが代表取締役、金山さんは事業部長に就任しました。ランジェリーの製造販売を選んだのは、金山さんの持つ知識に加え、本学でのマーケティングの授業で得た学びがヒントになりました。「日本の繊維産業がどんどん衰退していることが、授業で何度も取り上げられたんです。何とかできないかという思いがずっと胸にありました」と平石さん。二人で話し合ううちに「レースやフリルで飾られた下着はたくさんあるけど、和風の柄のものは見たことがない」ということに気づき、「これだ、とひらめきました」。

スタートと同時に、コロナ禍に。「焦っても仕方がない」と人探し、工場探しを一から始めました。「独学の素人だったので、ネットで調べては電話での交渉をひたすら繰り返す日々でした」と金山さん。「素材から染織、縫製まですべて日本で行い、デザインも和にこだわりたい」という二人の熱い思いが伝わり、もの作りができる体制が徐々に整いました。デザインは金山さんが担当。腕のいいパタンナーも加わってくれ、金山さんが伝えたイメージが見事に形になっていきました。

コロナ禍とあって販路の開拓は厳しく、ECサイトをメインに据えての出発となりました。「PCやスマホの画面越しだと、シルクならではの質感やデザインの立体感を伝えきれません。日本製ゆえのコストについても、理解いただけるように説明するのが難しい。『手に取ってさえもらえたら』と、もどかしい思いでいっぱいでした」と、平石さんは率直な思いを語ってくれました。それでも、サイトやパンフレットで使うモデル着用写真は、撮影もメイクアップも一流のプロに引き受けてもらうことに成功。「知り合った人がその知人を紹介してくれて、という嬉しい連鎖が次々に起きて、気づけば最高のメンバーがそろっていました」。

「スタートアップだから」「まだ始めたばかりだから」などと臆することなく、それぞれの分野のトップクラスに体当たりで交渉したことで、道はさらに拓いていきました。都銀から融資を取り付けたのに続き、松屋銀座でのポップアップ販売が決定。「何回も連絡し、ダメもとで出店をお願いしたら、1か月後にバイヤーさんから『改装したばかりのランジェリー売り場にぜひ』と思いもかけない電話をいただきました」(平石さん)。ポップアップとしては異例の4か月間(2022年5~8月)という長期出店が決まり、消費者に直接商品を手に取ってもらえる機会が遂に訪れました。

「日本の美を海外へ」という「N bijoux」に託したもう一つの目標も、実現しつつあります。日本貿易振興機構(JETRO)を通じて4月から、インドのバイヤーとオンライン上の取引をスタートさせたのに続き、来年1月には各国を代表するランジェリーブランドがパリに集結する「パリ国際ランジェリー展」への出展が決まりました。「せっかく審査を通ったので、将来『逆輸入ブランド』と言われるくらいに海外で認知してもらいたい」と、金山さんの夢は広がります。

男性用のボクサーパンツをラインアップに加えたり、レンタルやリサイクルサービスをスタートさせたりと、事業の拡大にも余念がない二人。後輩たちに「将来やりたいこと、熱中できるものを見つけたうえで、遊び、学んでほしいですね。どんな仕事も国内で終結する時代ではないので、語学はぜひしっかり身につけてください」(平石さん)、「まずは何にでもアンテナを張ってみてください。一つのことを極めてもいいですし、興味をどんどん広げてもいいと思います」(金山さん)と、エールを送ってくれました。

銀座松屋のポップアップショップで、浴衣姿で店頭に立つ平石さん

店頭で商品をチェックする金山直美さん

 

※銀座松屋でのポップアップは6階で8月23日までです。

JIUでの思い出の一枚

カリフォルニア大学リバーサイド校に留学中、ホストファミリーやハウスメイトと一緒に。後列右端が平石奈菜さん(当時2年生)