経営情報学部 斎藤 紀男
前回の「その1」では、私たちも使っているテレワークについて説明しました。今回はそれ以外にも、この新型コロナウイルスとの闘いにICTが大活躍していることを紹介します。そこでは、ビッグデータがキーワードになります。ビッグデータってよく聞くけど何のことか分からない、と思われている方が多いのではないでしょうか。それが目に見えて成果を出している現場を覗いてみます。
感染拡大を抑えるため、3密(密閉、密集、密接)を避けるように政府、自治体からの要請があり、現在、本学も学生の登校が禁止されています。こうした中、ニュースでは、人の密集度がどの様な動向を示しているか、グラフを使ってビジュアルに示されるようになっています。ここで使われているのが人移動データです。民間企業でも早くから人移動データを使って社会課題の解決に生かそうという事業が行われ、人の混み具合が一目でわかるような情報が無償で公開されるようになっています1。
図1は東京駅周辺(図右側の青色の範囲)に向けて移動している人口数を示します。ビジネス街であるため、平日の移動人口が休日を大きく上回っています。注目したいのは、3月に入ってから移動量が次第に減り始め、政府の緊急事態宣言が出てから急激に減少していることです。東京駅については3密の取り組みが進んでいると言えるでしょう。同様のデータはYahooサイトでも日々更新されており2 、また、テレビニュースでは全国の各駅の情報が連日流されています。
このようなことが可能なのは、ICT、IoT(Internet of Things:物のインターネット)、そして、ビッグデータ(大量のデータを蓄積し、分析し、知見を得る技術)を融合した情報技術が活用できるようになったからです。
まるで呪文のように聞こえていたビッグデータという言葉ですが、今や我が国の危機を救う基盤的な技術であることが示されました。情報システムについて学ぶ皆さんは、今現在の危機を不安に感じるだけではなく、この先につながる技術の可能性を感じ取ってもらえたら嬉しいです。
この緊急事態の中にあって、ICTを担う業界が積極的に動き出していることをお伝えしましょう。保健所での作業量が増えすぎて対応できないパンク状態になっていることに対して、IT企業がクラウドや人工知能(Artificial Intelligence; AI)を活用した支援に乗り出している、と報じられています3。
国の危機的な状況にあって、報道機関をはじめ、ICTを基軸とする民間企業も動きを強め、国民への情報提供と啓蒙などの支援活動を始めています。そこには、今だからこそ活きる情報活用の価値とICTの重要性が見えてきました。
以上